1 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 B 問5 B |
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2 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 B |
3 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 (a) A (b) A (c) A |
4 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 B 問5 C |
A…浦和明の星の星合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2020年度の浦和明の星は、例年通り、基本的な知識を手掛かりに、実験や観察の結果を処理し、考察する問題が中心となっています。受験者平均30.9点(昨年度30.7点),合格者平均35.0点(昨年度34.6点)と,難易度はここ数年,大きく変わっていません。
物理分野の問題は、斜面をころがる小球についての問題。
化学分野の問題は、水溶液と金属の反応に関する問題。
生物分野の問題は、植物のはたらきと環境問題に関する問題。
地学分野の問題は、日食に関する問題。
物・化・生・地の並びも例年通りです。
各分野で,出題範囲はまんべんなく出されていますが,問題の構成パターンは一定の傾向が見られます。
物理分野:実験結果から規則性を見つけ出し、条件を変えた場合の結果を予測する。
化学分野:典型的な題材でオーソドックスな計算問題に取り組む。
生物分野:実験やデータを通して考える問題。文章を読み取る力と論理的思考力が試される。
地学分野:基本的な内容をおさえてから、発展的内容へと考えを進める問題。高校地学の内容を含む。
対策としては、基本の知識と根本理解を身につけること。見慣れない問題であっても,身につけた知識と関連づけて考えると,理解に時間をかけることなく取り組むことができ,ライバルとの差をつけることができます。また、問題で問われていることをしっかり把握し,的確に処理ができるようにしておきましょう。さらに、ふだんから、表やグラフの読み取りに慣れておくことが、大きく結果に影響すると考えられます。
問題構成は、4分野から大問4題、小問21問。小問数は,昨年より3問減っています。
解答形式は、記号選択が16問、数字が4問、記述1問。昨年あったグラフ,言語はありませんでした。
選択肢は、やや長めの文で選択肢が多く、しかもすべて選ぶものが散見され、素早く読み取って論理的に判断しなければなりませんでした。
数字については,おもに典型的な化学反応に関するものでした。
記述は、例年通り10字の字数制限があり、問題文を読み取ることができれば,すんなり書けたのではないでしょうか。
グラフ作成や作図も、毎年ではないのですが出されることがあるので、対策しておく方がよいでしょう。
(物理)斜面をころがる小球についての問題です。
実験の条件と結果の表の値を突き合わせて整理して考えます。問題文が長く、データ量もやや多いので、手間取った生徒もいたかもしれません。選択肢を素早く吟味するためには、まずは必要な部分だけ手際よくピックアップして考えるとよいでしょう。この際、物質の運動についての根本理解があれば、よりスムースに対応できたのではないでしょうか。
表1からわかることを1つ選ぶ問題です。図1〜3の条件の違いは,斜面の長さがレール1本分〜3本分となっている点です。選択肢でポイントとなっているは、斜面と水平面の速さの変化のちがいなので、水平なレールで速さが一定であることに気づけば解答できます。
適当でないものを選ぶ問題なので注意します。表2は、小球を転がし始めてから各点を通るまでの時間ですから、ある区間を通る時間を比較するには数的処理が必要です。簡単な引き算なので、時間をかけずに対応できるのではないでしょうか。
問2と同様に、表3,4の数値を処理して、選択肢の正誤を確認します。聞いている内容がばらばらなので、ひとつひとつ的確に処理するよう心がけます。
「すべて」選ぶ問題ですから、注意が必要です。すべての選択肢について、表1〜4の結果の数的処理を行って確認するのもよいのですが、時間的がかかりすぎてしまいます。
問1〜3でわかったことを整理すると、
・斜面で加速し、通ってきた斜面が長いほど速くなる。
・水平面での速さは変わらない。
となるので、これらを手がかりにして判断することをお勧めします。
これも、問4と同様に考えます。どの選択肢も、斜面3本、水平3本ですから、始めに一気に加速し、速度を上げた状態で水平面を転がすことができるアを選びます。
またこれは、図3に水平なレールを後ろに2本追加したものなので、点Eに達するまでにかかる時間は、2.8+(0.4×2)=3.6(秒)とわかります。
(化学)水溶液と金属の反応に関する問題です。
例年、化学分野で計算問題が出されます。典型的な内容なので、定石に従って的確に処理すればよい問題です。落ち着いてミスのないように取り組むとよいでしょう。
うすい塩酸に鉄片を入れると、水素が発生します。
水素が発生する組み合わせは、基本の知識です。「すべて」選ぶ問題ですが、しっかり解答できたのではないでしょうか。
表1から、塩酸A36㎤と鉄片0.6gが過不足なく反応して、水素が240mL発生することがわかります。したがって、塩酸A54㎤と反応する鉄片の重さは、0.6×54/36=0.9(g)です。
水素が180㎤発生しているので、反応した塩酸は、塩酸Aに換算すると、36×180/240=27(㎤)です。塩酸Aの2倍の濃さの塩酸を使っているので、加えた塩酸の体積は、27×1/2=13.5(㎤)とわかります。
塩酸A24㎤と反応する鉄片の重さは、0.6×24/36=0.4(g)ですから、この反応では、鉄片が0.5-0.4=0.1(g)残ります。表2の結果から、塩酸A36㎤と鉄片0.6gが過不足なく反応したとき、塩化鉄が1.38gできることがわかるので、この反応では、1.38×24/36=0.92(g)の塩化鉄ができることになります。したがって、残る固体の合計は、0.1+0.92=1.02(g)です。
(生物)植物のはたらきと環境問題に関する問題です。
実験に関する問題では、対照実験の考え方は頻出です。ここでは、説明できるだけでなく、実験方法を具体的に提案できるレベルを求められています。
後半は、二酸化炭素濃度の変化のグラフに、植物のはたらきを関連づけて考える問題です。
どちらも、根本理解に根ざした論理的思考力が必要とされます。
Aさんの実験では「二酸化炭素と植物の葉を入れた試験管に日光をあてると,二酸化炭素がなくなった。」ことがわかります。この結果からAさんは「植物の葉は日光があたると二酸化炭素を取り入れて酸素を出した。」と考えています。しかし、これに対しBさんは「二酸化炭素がなくなったのは,植物のはたらきによるものではなく,日光にあたって分解されたからではないか。」と言っています。この質問に答えるために、二酸化炭素は日光によって分解されないことを確かめます。方法としては、試験管に二酸化炭素だけを入れて日光をあてて、二酸化炭素がなくなっていなければよいのです。
Aさんの実験に対し、Cさんは「二酸化炭素がなくなっていることはわかるが、酸素が発生したとは言えないのではないか。」といっています。この質問に対しては、日光をあてたあとの試験管に酸素があることを確認できればよいのですから、アを選びます。
Aさんの実験に対し、Dさんは「植物は,日光があたらなくても二酸化炭素を取り入れるかもしれないのでは?」といっています。これに対しては、日光をあてない条件で実験すればよいことになります。ただし、ほかの条件はすべて同じにしなければなりませんので注意して選びます。
植物が光合成によって二酸化炭素を取り入れ、酸素を出すことで、多くの動物の命を支えています。ここから、地球全体の問題として考えを広げていきます。
(a) 森林減少が直接的な原因とはいえないものをすべて選びます。酸性雨は,窒素酸化物や硫黄酸化物が原因です。また、オゾン層破壊はフロンンガスの排出が原因です。
(b) 図2のように、年平均の二酸化炭素濃度の変化に、月ごとの二酸化炭素濃度の変化のグラフを重ねると、のこぎりの葉のような細かい増減が見られます。この細かい増減は、1年のうちの変化のあらわれであることに注意します。植物のはたらきに関連付けて考えると、日本では夏季に光の強さが強く、気温が高いので、光合成がさかんに行われて二酸化炭素が減少し、冬季ではその逆になります。
(c) 図2は日本におけるグラフでしたが、図3では緯度による違いもわかるグラフになっています。3つの気付きが示されていて、1つ目と2つ目の理由があげられているので、これを参考に3つ目の気付きの理由を10字で書く記述の問題です。3つ目の気付きは「のこぎりの歯のような増減が,南半球と北半球では逆になっている。」ことです。(b)の答えをふまえて考えると、北半球の「夏季」が、南半球の「冬季」にあたることに関係があるとわかります。字数に収めると「夏季と冬季が逆になる」でちょうど10文字です。
(地学)日食に関する問題です。
日食のメカニズムを理解するには、太陽・地球・月の動き方と位置関係を把握していることが必要です。基本の知識からはじまって、高校地学で学習する変光星のしくみについての発展的内容を含みます。
日食が観測されるとき、月は新月です。新月は太陽と同じ方向にあるので、図4ではキを選びます。
これは基本の知識です。
地球は太陽のまわりを、月は地球のまわりを、北極側から見て反時計回りに公転しています。図4で考えると、日食のときは、月がク→キ→カの向きに動いて、太陽の前を西側から東側へ横切ることになります。
地球から太陽までの距離は,地球から月までの距離の約400倍ですが、太陽の直径は月の約400倍なので、地球から見た大きさはほぼ同じです。皆既月食は、月と太陽がほぼ同じ大きさに見えるとき、金環日食はわずかですが、月が太陽より小さく見えるときに起こります。これは地球からの距離が変化して大きく見えたり小さく見えたりするからであって、月や太陽そのものの大きさが変化するわけではありません。金環日食の輪の幅が大きくなるときは、地球から見える太陽がより大きいか、月がより小さいときです。選択肢に「太陽と月の距離」という表現がありますが、これは「太陽と地球の距離」と置き換えて考えるとよいでしょう。
→合否を分けた一題参照。
高校地学で学習する内容ですが、問題文をしっかり読み取ることができれば解答できます。変光星には、恒星自身の明るさが変化するものと、図7のような連星が離れたり重なったりすることで、明るさが変化するものがあります。図7の位置のとき、星Aと星Bの両方の光がとどきますが、星Bが星Aの後ろの位置にくると、星Bの光の一部がさえぎられて少し暗くなります。この後、星Bが星Aの後ろから出てくると再び明るさがもどりますが、星Aの前にくると星Bよりも明るい星Aをすっぽりかくしてしまうので、より長い期間より暗く見えます。
それほど複雑な条件ではないので、まっとうに考えれば正答できるはずですが、選択肢の内容が似通っている上に「すべて」選ぶために、細かいポイントを見逃さないようにしなければなりません。気を抜かずにしっかり確認できたかどうかが合否を分けたと考え、この問題を取り上げました。
今一度、選択肢を選ぶポイントについて確認します。
以下は、あくまでも問題で示された条件で起きると考えられることがらですから,現実とはことなりますので注意してください。
なお、このように現実にはない前提で起きることがらを想像することを、思考実験をいいます。
・毎月観測できるか?…月の公転軌道面が地球の公転軌道面と一致するので、新月が必ず太陽の前を通り、日食が起こります。月の満ち欠けの周期は約29.5日なので日にちはずれますが、月に最低一度はどこかの地域で日食が観測できます。
・部分日食・皆既日食・金環日食のどれか?…公転軌道が一致することから、月は太陽のど真ん中を通ります。したがって、太陽が天頂を通る地域では皆既日食か金環日食のどちらか、その周辺の地域では部分日食が観察できます。
・月食が見える地域では,1日中見えるのか?…皆既日食や金環日食が観察できるのは、地球上に月の影が落ちている地域です。月の影は地球の大きさより小さいので、日食は限られた地域でしか見えません。また月の影は、地球が自転するのにしたがって地球上を移動するので、日食が見える地域は1回の日食の間で移動します。
・毎回見える地域は同じなのか?…太陽・月・地球のそれぞれの中心が完璧に一直線にならぶので、日食が観察できるのは太陽が天頂を通る地域とその周辺だけです。条件としては、地球が地軸を傾けたまま公転していることには変わりはありませんので、季節によって太陽が天頂を通る地域が移り変わるように、日食が見える地域も移り変わります。