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国語の合否を分けた一題

浦和明の星中入試対策・国語の合否を分けた一題(2021年度)

難易度分類

問一 A 問二 A 問三 A 問四 ア A イ A ウ A エ B 問五 全てC 問六 全てB 問七 C 問八 C
問一 A 問二 A 問三 A 問四 両方A 問五 B 問六 B 問七 A 問八 B 問九 B 問十 全てB

A…浦和明の星女子中を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題

問題総評

今年度の浦和明の星女子中の入試問題は、大問一に説明文、大問二に物語文と例年通りの構成でしたが、漢字をはじめ記号選択問題が大幅に増加し、書き抜きも論理構造に合う2字の熟語を抜き出す問題が数問あるのみで、唯一の長文記述も字数が二十字以内であり、明らかに易化したと言えます。ただし素材文の長さは例年と変わらず、物語が例年通り非常に長いため時間を取られます。問題文の記述が本文中のどの部分を言いかえているのかを正確に判断する力が例年以上に求められた試験となりました。
今年度の素材文は、大問一が文化や民族などの「境界」をめぐる二項対立、大問二が失明した兄の自分が失明した遠因を作った弟に対する心情をテーマにしたもので、それぞれの立場の考え方や思いを整理できたかが大きなポイントとなりました。

問題別寸評

問五 本文内容にあてはまる例の識別 記号選択

選択肢に挙げられた例が2つの考え方のうちどちらに当てはまるのか、それともどちらにも当てはまらないかという出題形式であり、戸惑った受験生が多くいたと思います。各選択肢を抽象化して、「境界」を強めるのか、弱めるのか、変更しないかを考えることが必要です。

問六(2) 内容理解 当てはまらないもの 記号選択

「『直線』的な生き方」と「『曲線』的な生き方」のデメリットとして当てはまらないものをそれぞれ選ぶ問題ですが、実は「『曲線』的な生き方」のデメリットは本文中に直接書かれていません。二項対立の場合「片方の否定がもう片方の要素になる」ことが多いため、「『直線』的な生き方」のメリットを否定したものが「『曲線』的な生き方」のデメリットと考えます。

問六(5) 言い換え 書き抜き

「他者からほめられる」こと、「他者と交わる」ことが書かれている場所を本文中から探し、それらが何に言い換えられているかを特定することで正解が導けます。

問七 慣用句 記述

答は「道すがら」ですが、小学生には聞き慣れない言葉かもしれません。

問八 本文の特徴 ふさわしくないもの 記号選択

本文全体の特徴を問うという例年にない出題形式で、さらに「ふさわしくないもの」を選ぶので、二重に混乱させる問題と言えます。通常、本文の特徴問題は本文に見られるものを求めますが、今回は「ふさわしくない」なので、その特徴が本文にないか、本文と矛盾しているかのどちらかです。この観点で考えると正解が導けます。

問五 言い換え 記号選択

表向きは言い換え問題ですが、実際には心情の問題です。加子が新の頬を打ったときの心情のきっかけは新の発言で、これのどの部分が加子を怒らせたのかを考えます。

問六 心情 記号選択

きっかけは直前の「そういう理由でもなかったら、朝からお汁粉なんて作らないわよ」という加子の発言です。「そういう理由」の中身を探ることで正解が導けます。

問八 心情 記号選択(複数可)

「合否を分けた一題」で解説します。

問十(1) 四字熟語 記述

アは「あれこれ考えをめぐらし、(ア)を繰り返す」なので、自分の中で何をするか、イは「醜い自分の内面に向き合い」なので、醜い姿にどう思っているか、これらがそれぞれ分かれば答えられます。

問十(2) 情景 書き抜き

一見難しそうですが、直後に「光が差し込んでくるような」とあるので、本文中からそれと似た表現を探すと「一筋光がこぼれる」が見つかり、この直前「薄曇りの空」をヒントにすることで見つけられます。

問十(3) 空所補充 記述

唯一の長文記述です。直前に「つまり」があるため、新の発言「見えなくなってたものを、朔が見せてくれた」を言い換える問題と言えます。「見えなくなってたもの」の中身は本文から「自分は走ることが好きだという気持ち」と導けるので、ここに「朔が思い出させた」などを加えてまとめます。ただし字数が二十字以内なので、「走ることが好きだという気持ち」は「走る喜び」などに縮める必要があります。

合否を分けた一題

問八

傍線部のときの朔の心情として当てはまる記号を全て選ぶ問題です。記号選択問題ですが、「全て」であるため過不足なく選ぶ必要があります。また、直前や直後には心情のヒントとなる語が「ゴール」や「間違った方向」といった比喩的・間接的な表現で示されており、これらの理解が必要となります。以上2点において合否を分けたと言ってよいでしょう。

【解法手順】
①心情を整理する
「唇を嚙んだ(嚙む)」という動作は「悔しい」「つらい」「やりきれない」などの心情を表します。きっかけは新の「ゴールを目指してる」という発言ですが、これを朔は「オレは、どのゴールを目指しているんだろう」「ゴールが見えない。いや、見えるわけがないのだ」と受け止めます(朔の意味づけ)。さらに心情を探ると、傍線部の後ろに「間違った方向へ向かって駆け出していた」「そのことに気づきながら、気づかないふりをしてきた」「このまま気づかないふりをして、新を縛って、その先になにがあるんだろう。あるのは、たぶん、きっと、後悔だ」とあり、間違った方向に進んでゴールが見えず、このままでは後悔することになると思い、苦しんだことが分かります。

②表現を理解する
先の「ゴールが見えない」および「間違った方向」は、朔の心の中にある思いが関係します。少し後の朔が新に白状する場面で、朔が失明を新のせいにするのを止められなかったこと、新を走らせることで新を傷つけたかったこと、さらにそれを分かっていた上で弟思いのふりをして新を誘ったことが述べられています。つまり、朔は「新を欺いて伴走者にすることで彼を傷つけて(「間違った方向」)失明の恨みを晴らそうとしても、心は晴れない上に後悔しか残らない(「ゴールが見えない」)」と思い、苦しんだのです。

③答を導く
以上から、「新に弟思いのふりをした自分への苦しみ」であるウと、「新を傷つけることの無意味さ」であるオの2つが正解です。
他の選択肢を見てみると、アは「目標」の中身が見当外れのため、誤りです。
イは「新に軽蔑されてしまうのではないかと恐れる」が誤りです。朔は既に軽蔑されても仕方がないと覚悟しています。
エは「もう二度と新と走ることはできないかもしれないという不安」が誤りです。朔はむしろそれを望んでいて、新に進言もしています。

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