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社会の合否を分けた一題

慶應中等部入試対策・社会の合否を分けた一題(2020年度)

難易度表

【1】 問1 A  問2 B
【2】 問1 B  問2 B
【3】 問1(1)A (2)A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 B問7(1)A (2)C
【4】 問1 B 問2 A 問3 A 問4 (1)A (2)A

A…慶應中等部合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

難易度・問題数ともに例年通りの構成といえます。典型問題である福沢諭吉に関連するものが出題されている点についても、若干問題数が少ない印象は受けますが変化はありません。

問題別寸評

【1】

オリンピックに関連するカレンダーの問題です。2020年以降、以前の「体育の日」が「スポーツの日」に改称されます。さらに、2020年はオリンピックイヤーであることから、オリンピック開会式がスポーツの日とされています。

問1

祝日は、「国民の祝日に関する法律」によりその設定まで詳細に定められています。例年ですと、元日1月1日、成人の日1月の第2月曜日、建国記念の日政令で定める日=2月11日ころ、天皇誕生日2月23日、春分の日春分日(例年3月20日ごろ)、昭和の日4月29日、憲法記念日5月3日、みどりの日5月4日、こどもの日5月5日、海の日7月の第3月曜日、山の日8月11日、敬老の日9月の第3月曜日、秋分の日秋分日(例年、9月23日ごろ)、スポーツの日10月の第2月曜日、文化の日11月3日、勤労感謝の日11月23日となっています。この中で、2020年については、海の日=7月23日、スポーツの日=7月24日、山の日=8月10日となっています。

問2

以前の国民の祝日は、そのすべてが固定日でした。その中で、現在のスポーツの日は、体育の日とされており、10月10日に決まっていました。同日は、1964年の東京オリンピックの開会式であったことから、この日を祝日としたものです。

【2】

政治(公民)分野からの出題です。とくに、憲法に限定された出題となっています。

問1

改憲が国会においても取りざたされているためか、各私立中学校でも最近よく見かける「憲法改正」についての条文知識問題です。憲法改正は、①「各議院総議員三分の二以上賛成➜国会による発議」②「国民投票過半数」という2段階設定がなされていることに気をつければ大丈夫でしょう。

問2

憲法の章構成に関する出題です。そもそも憲法がなんのため、だれのために定められた法律かを考えてみると、章の並びがイメージしやすくなるかもしれません。日本国憲法第97条ならびに99条を読んでみましょう。まず第97条は、基本的人権が「侵すことのできない永久の権利として」憲法により保障されていることが明記されています。この点は、憲法には人権擁護の側面が明記されていることがわかります。さらに、「憲法尊重擁護義務」(99条)が課されている対象者がだれとなっているでしょうか。第99条によると、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」とされています。よくみると、国民は含まれていません。つまり、義務を守るのはここに書かれた者のみであり、国民はいわゆる国民の三大義務以外に課される義務は憲法には存在しません。以上のことから、また、国民主権という観点からもその重要度は、(天皇制)➜国民の権利=人権➜国会➜内閣➜裁判所➜財政➜地方自治➜改正➜最高法規性、という順序をイメージできるといいと思われます。

【3】

(歴史)分野からの出題です。古代から近代までの幅広い知識が要求されています。

問1

古代の史書〔魏志倭人伝・漢書地理志・後漢書東夷伝〕の内容から、いずれの史書であるかを選ばせる問題です。各塾のテキストには必ず掲載されている基本的事項ですから、一度は目にされたことがあるでしょう。

問2

阿倍仲麻呂は、遣唐使として中国に渡り、のちに帰国を試みたものの何度か難破し、最終的には帰国がかなわず中国王朝にその生涯をささげました。「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも」という和歌を残しています。

問3

「中国の王朝との交流を中断するよう」という問題文が、いわゆる遣唐使の廃止につながれば、容易に解答できる問題かと思われます。

問4

歴史に登場する貿易船や国内の運搬船は、その名称をしっかりとおさえておく必要があります。「遣明船」とは、日明貿易で使用された貿易船です。「北前船」とは、蝦夷地や東北・北陸地方から西回り航路で就航していた廻船をさします。「朱印船」とは、豊臣秀吉により始められたとされ、江戸時代において鎖国が完成する直前まで活躍した、朱印状を所持した貿易船をさします。「南蛮船」は、朱印船と時代が重なるためか混同されがちですが、あくまでも外国船です。ポルトガルやスペインといった戦国時代から来航するようになった外国船を、南蛮船と呼びました。

問5

日本町に関する問題です。東南アジアにおいて、日本からの貿易商やキリシタンら移民により造られた街をこう呼んでいました。マニラやアユタヤ(現在のタイ)において数千人規模の街を形成していたといわれています。中でも、山田長政は、1600年ごろにアユタヤにわたり、高官に任じられたとされています。

問6

鎖国完成までの流れは、頻出問題です。まずキリスト教の禁教令を出します。つぎに、キリスト教布教に熱心であったスペイン船の来航を禁止します。この後、日本人の海外渡航と帰国を禁止します。のちに、島原・天草一揆が生じ鎖国への道を一層加速するきっかけとなりました。最終段階として、ポルトガル船の来航を禁止し、また、オランダ商館を平戸から長崎へと移設することで、鎖国が完成します。

問7

江戸時代末期の開国に際して締結した不平等条約についての問題です。(1)は、修好通商条約を締結した相手国についての問題ですが、「安政五か国条約」と呼ばれるように、諸外国五か国と修好通商条約が締結されました。その内訳は、アメリカ・ロシア・イギリス・オランダ・フランスです。(2)は、合否を分けた一題にて解説いたします。

日本の伝統的農業と世界規模での環境問題に関する出題です。

問1

日本の伝統的農業という出題になっていますが、ここに出題されている各地は、世界農業遺産に認定されている地域です。世界農業遺産は、(国連)食糧農業機関において登録されている制度で、古来からの伝統的農法を後世に伝えていこう、というのがその目的です。なお、本問では、出題趣旨がわからなくても、各地の代表的な名産をある程度知っていれば、1~6の地方と照らし合わせていくことで容易に解答できるものとも思えます。

問2

世界規模での環境問題について原因と合わせて記すと、フロンガス➜オゾン層の破壊、温暖化➜海水面の上昇、化石燃料の大量使用➜酸性雨、森林伐採・過剰な焼き畑➜熱帯林の減少・砂漠化といったことが具体的に生じています。本問について、それぞれの環境問題がどこで生じているのか、影響を及ぼす相手を考えれば容易に解答できると思われます。

問3

世界的な環境問題につき、その原因と結果については、細かいところまで抑えておきたいところです。まず、酸性雨の原因は、二酸化硫黄であったり窒素酸化物です。つぎに、温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスが原因です。似たような名称のものが出てきますので、しっかりと区分しましょう。

問4

「パークアンドライド」は温暖化防止・抑止の有効策として考えられており、問題の掲載写真でお分かりのように、駅や停留所付近の駐車場まで自家用車で出向き(パーク)、その後、バスや電車に乗り換えて(ライド)出勤や登校する方法をいいます。これにより、自家用車での移動距離が少なくなる分、乗客全員のことを考えれば、二酸化炭素などの温室効果ガスの大幅な減少が期待できるというわけです。

合否を分けた一題

慶應中等部では、ほぼ毎年、社会科で福沢諭吉に関する出題がされます。出題事項は様々ですが、福沢諭吉の半生を追うことがとても多いです。そこで、今年の合否を分けた一題は、本問の出題趣旨に沿って、福沢諭吉の半生を追ってみましょう。

〔3〕
問7

福沢諭吉は、10代に長崎で蘭学を学び、その後、大阪の適塾(緒方洪庵主宰)で学びます。江戸に移り自分で蘭学塾を開いたのち(1858年)、遣欧使節に志願し咸臨丸で渡米します(1860年)。帰国後、慶應義塾を芝に建てました(1868年)。1872年、ついに『学問のすすめ』を刊行します。慶應義塾は、授業料を支払って通う日本で初めての学校であり、学問のすすめは、できる限り多くの人に読んでほしいという願いから、17分冊にし、その結果、ミリオンセラー(400万部超)となりました。

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