25分間で56の解答をすることが求められました。2012年度は63でした。時間的には昨年よりも少しゆとりをもって取り組めたことでしょう。20字以上50字以内の記述も、2012年はTPPの日本の農業への影響を説明する、というもので手ごわいと感じた受験生が多かったのですが、今年は「理科的」地理の問題でした。その他、記号で答える問題以外に、1語で答える記述が3問、数字で答える記述(国民の祝日)が8問出題されました。
大問は7に分けられ、【1】は、地理知識の記号選択問題、【2】は、地理の少し掘り下げた出題に文化史をからめた出題、【3】【4】は歴史知識の問題で多少操作が必要な問題が含まれ、【5】裁判員制度に関する知識問題、【6】は国民の祝日に関し、国民の祝日に関する法律第2条にある説明から、何月何日か、また何月の第何月曜日かを答えさせる問題、【7】は、2020年夏季オリンピック・パラリンピック競技大会の招致都市がある国の名前を答えさせる問題でした。
2013年度入試で、合否を分けた問題として1題を挙げるとすれば、
【2】の問4の記述問題です。
記号・知識問題でも正答率が低そうな問題はありましたが、今回、この記述問題が合否を分けたと判断した理由は、説明や図がこみいっており、「難しそう」とお子さんに感じさせる要素があったこと、また、中等部社会唯一の長い記述問題であり、「記述が苦手だから中等部」という選択をしたお子さんには敷居が高いものであること、が挙げられます。ただ、それだけでは、合否を分けることには必ずしもつながりません。「常識」と「知識」をつなげれば、答えの中心となる内容はすぐに推測できることから、少しがんばれば正答できた受験生が多かった、という点で、合否を分ける事になったと思われます。
さて、この問題は、富士山の噴火と富士周囲の変わった構造の井戸(まいまいず井戸)との関係を考えさせる問題です。砂・れきの地層の上に、火山灰が積もってできた関東ローム層が重なった結果、井戸を深く掘る必要があった理由を答える記述問題です。
まず、二つの地層の性質を考えます。砂・れきの地層と水の関係を考えれば、水をとおしやすい地層であることは推測できます。次に、火山灰の積もった地層について考えます。火山灰の積もった地域として、シラス台地が思い浮かべばだいじょうぶです。シラス台地は、水をとおしやすいため、開発がなかなか進まなかったこと、灌漑などでようやく開発ができたことを思い浮かべつつ、水をとおしやすい、という一点で答えを整えていきます。水をとおしやすい地層が2つ重なっているわけですから、「深く」掘らなければなりません。
くずれやすい層があるため、その部分はすり鉢状に掘り下げ、次の地層は垂直に掘ったということです。
関東ローム層の火山灰は、富士山に限らず、関東周辺の火山が一万年以上前に噴火した際に積もったものですが、富士山の北東部が一番厚く、20mもの厚さになることもあります。千葉市くらいまで離れると、3~5mほどのようです。関東ローム層の「厚さ」にも触れておきたいところでしょうか。
答案例
いずれも水をとおしやすい地層であり、この一帯は特に富士山の火山灰が厚く積もっている地域であったため。50字。
まず、すでに学んでいる知識を、設問の求めるところと結び付けられるように、「結び付けやすい」知識にしておくことがあげられます。ただ、事実として知識を学び覚えるだけでなく、知識から知識へ、どうだからどうなる、といった原因と結果の関係を考えたり、地形や地質の特徴を学んだら、似たような場所はないか、探して拾い出してみたり、学んできたことから関連する事はないか、常に、広げ、つなげ、深めるような意識を持って、知識を単なる量の集積でなく、つながって使える知識体系にしていくような学習をしていきたいところです。
また、科目の垣根にこだわらず、「総合的に」考えられるか、「常識的に」考えられるか、という力も求められているようです。広い常識・知識があり、その場で柔軟に考える力がある受験生を合格させたい、ということでしょう。
知識をしっかり固めて増やしながら、知識どうしを「結び付けていく」作業を通じて、中等部対策を進めていってください。