「慶應中等部の傾向分析」で述べた出題傾向を踏まえて、これまで中等部の合格者と共に私自身が実践してきたそれぞれの攻略法をお伝えします。
多岐にわたる出題分野において、極端に苦手な分野を作らないように、典型的な標準問題全般をカバーしておく必要があります。どこの塾であっても、6年生夏休み前までの学習内容(日能研生は9月に学習するニュートン算も含める)の定着具合がポイント。目安としては、サピックス生は比較合判のA問題、日能研生は6年カリテの共通問題、四谷大塚生は『予習シリーズ5年上下・6年上』の例題、が適正レベルです。このレベルの問題を確実に得点できるように、各塾の使用テキストで解法を定着させます。典型的な標準問題への対応力をより強固にするために、東京出版『ステップアップ演習』を仕上げても良いでしょう。
年度によっては複数出題される「平面図形」「割合と比」「数の性質」は多めに演習量を確保したいところです。中等部で出題されるレベルに見合った問題を、他校の過去問や市販の問題集から引っ張ってきても良いでしょう。算数を得点源にしたいのであれば、月刊誌『中学への算数』の「レベルアップ演習」に載っている数・図形・文章題に毎月取り組むのが効果的です。
また、同一テーマの連続出題を想定して、直近3年間の出題テーマは徹底的に問題演習を行い、つぶしこみを図ります。なお、中等部入試の問題分析は毎年継続して行い、同一テーマの連続出題について10~20年間の大局的な流れも押さえておくことで、どのテーマが狙われるか予測しやすくなります。
合格に向けての必要条件である“典型問題の処理速度と精度の高さ”を身につけるための対策は、(1)で述べた多分野からの出題への対策とリンクします。
さらに、処理速度を上げるためには、筆記・計算・思考の各場面でスピードを追求する
練習が必要です。①筆記については心掛け次第で、②計算については、制限時間遵守で日々の計算練習を行うことに加えて、「安易に筆算に頼らず暗算力を鍛える」「軸となる数値を暗記する(円周率計算、三角数、平方数etc.)」「計算の工夫を常に意識する」ことにより、
③思考については、1問ごとに制限時間を設けて、わかる問題・解ける問題を徹底反復するトレーニングにより、処理速度を上げることが可能です。
ただし、合格のためにはこれだけでは不十分。「知識がないと解けない問題」「工夫すれば短時間で処理できる問題」などの少しひねった典型問題を、単なる典型問題と同様のテンポで解き進める必要があります。この類いの問題についての演習量・経験値が、一次試験の合否のカギを握ります。どのような問題が“少しひねった典型問題”にあたるのか、どのような問題の演習量を増やすべきなのか、判断する講師の力量が問われるところでしょう。
中等部独特の解答形式は、大学入試でのマークシート方式と同様に、1つの解答欄に数字1個が原則です。中学入試における一般的な解答欄への記入スタイルに馴染んでいる受験生は、ついつい1つの解答欄に答えの数値をすべて書き込んでしまい、解答欄がズレて余ってしまうことがあります。
とにかく記入スタイルに慣れること。中等部の算数はいかにテンポ良く乗り切るかがカギですから、解答欄への記入に手間取って無駄に時間を取られるようでは困ります。過去問演習を通じて、この中等部独特の解答形式に戸惑うことのないように準備しておきましょう。