昨年度に引き続き、高い語彙力、文学知識の素養、言葉の意味内容を記号として文脈に沿って的確にとらえられているか、といった力を量る出題内容です。言い換えるなら、創造的思考力の前提となる知識および基本的論理性を高い精度で求めているのが特徴です。
本文の内容に関しても、各分野を独立させたり融合したりの形式の違いはあれど、例年、「文学史的知識」「韻文総合的知識」「文学論・言語論といった国語研究に関する素材」をとりあげている点、この学校の大きな特色の一つと言えるでしょう。
量、質ともに大きな変化はありませんが、今年度は例年出題されていた物語文に関する出題がなく、論説文の取り扱いとなっています。
表現方法から心情の背景となる事情を類推する、といった「物語」のとらえ幅のある論理性とは異なり、筆者の見解に応じた的確な具体例を選択できるか、という、大学入試ではおなじみの筆者のロジックそのものの理解を意識した作問が目立ちます。(【一】問五・九、【二】問五)。
その点、設問の難度は、論理性という側面から見ると、昨年度よりやや上がったといえるかもしれません。
しかし、偏差値レベルから見ると、決して国語の難しい学校ではありません。
いわゆる大人社会の常識的語彙に通じたお子さんが有利に働く面はあるにせよ、丁寧に文脈を追っていけば、設問の意図は明確なものが多く、勘違い・読み間違い等による誤答の可能性も低いため、70%の正答率は確保しやすく、合格者と不合格との間の差はそれほど大きなものでは無いと推測されます。
今年度の入試で、合否を分けた一題を選択すると、【四】の問ということになるでしょうか。
もちろん、【一】の問十一の正誤問題は、文章の正確な読みとりを問うもので、非常に基本的な問いであり、それだけに細部をいい加減に流した読み方であると、解答のひっかけに簡単につかまってしまう点、意外と差がつく問ではあります。
しかし、確実にとらなければならず、それでいて数点の差は出てしまう、という側面で見るなら、例年類似問題が形を変えて出現している【四】の問は、対策準備の差によっても、当落に最も一役買っている、みるべきでしょう。
唯一の記述式でもあります。
(近年の類似問題として、2011年度に「卒業」という題目で俳句を作る問題が出題されています。)
では、解法と採点のポイントをご説明いたしましょう。