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国語の合否を分けた一題

豊島岡女子中入試対策・国語の合否を分けた一題(2021年度)

難易度分類

1 問1 すべてA  問2 A 問3 A 問4 A 問5 Ⅰ・ⅡともA 問6 A 問7 B 問8 B
2 問1 A 問2 A・BともA  問3 A  問4 B 問5 すべてA 
問6 B 問7 A 問8 B 問9 B

A…豊島岡女子合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

2021年の豊島岡女子は大問2題の構成となっており、例年通りの問題構成でした。
2020年には合格者平均82.51点と高得点勝負となりましたが、本年は受験者平均65.55/合格者平均72.37と例年並みに戻っています。
大問1は「人は何のために学ぶのか」をテーマとした論説文です。
大問2は、クラスメートを好きになった男の子の心中を描いた物語文です。
漢字の書き取りでは、この学校に特徴的な、小学生にはなじみの薄い語彙の出題がありましたが、こちらは対策を取っている生徒であれば正答できたと思われます。
論説文は本校の出題内容としては平易な部類に入ります。記述問題と、物語文の表現効果問題が合否の分かれ目になったといえます。

問題別寸評

1

内田樹『先生はえらい』より。
私たちが学ぶのは、万人向けの有用な知識や技術の習得のためでなく、「自分がこの世界でただひとりのかけがえのない存在であるという事実を確認するため」であるということが述べられています。
同じ内容が表現を変えて繰り返し述べられていますので、言い換え表現を探しながら読んでいくとスムーズに問題に着手することができました。

問1

漢字の書き取りです。全て正解したい問題です。

問2

傍線部の言い換えとなる内容を抜き出す問題です。傍線部①と同じ内容が、本文中に繰り返し出てきます。
傍線部①の直前の段落において、「この先生のこのすばらしさを知っているのは、あまたある弟子の中で私ひとりだ」という思いこみのことを、筆者は「誤解」と呼んでいます。同様に「この人のことばの本当の意味を理解し、このひとの本当の深みを知っているのは私だけではないか、という『幸福な誤解』が成り立つなら、~」とありますので、字数指定に合うこちらを答えにします。必ず正解したい問題です。

問3

「愛の告白」は、恩師への感謝の言葉と似たものの例として本文中で紹介されています。
「それは恋愛において、恋人たちのかけがえのなさを伝えることばが『あなたの真の価値を理解しているのは、世界で私しかいない』であるのと同じことです」という部分です。
ここから、二つの空所に入る「かけがえのなさ」を選びます。必ず正解したい問題です。

問4

空所補充問題です。空所③を含む一文を見ると、「そのようなロジックによって、私たちは~」とあります。
指示語「そのような」の内容を確認し、「『自分がいなければ、~次のことばです。だから私は生きなければならない。」を導きます。

問5Ⅰ

問5Ⅰのような人間と対照的に、先生は「私がこの世に生まれたのは、私にしかできない仕事、私以外の誰によっても代替できないような責務を果たすためではないか……」と思った人の前だけに表れます。これの言い換えを、指定の字数に合わせて探します。

問5Ⅱ

問5Ⅰのような人間と対照的に、先生は「私がこの世に生まれたのは、私にしかできない仕事、私以外の誰によっても代替できないような責務を果たすためではないか……」と思った人の前だけに表れます。これの言い換えを、指定の字数に合わせて探します。

問6

「日本の高校生」がどのようなものの例として出されているかを考えてみましょう。ここでは「学びの主体性」について、筆者は「学ぶことを欲望するものしか学ぶことができない」と述べています。直前の、「どんなにえらい先生が教壇に~成就しません」の例として傍線部⑤が挙げられています。よって、ここでの「日本の高校生」とは「居眠りをする生徒(学ぶことを欲望しない人)」、「ソクラテス」は「えらい先生」の例だということがわかります。

問7

本文中において、「先生」とは「このひとの真の価値を知っているのは私だけだ」と思う相手のことを指します。生徒が学ぼうとする、つまり「教え」を受信すれば成立する、ときに学びは成立するとありますから、以上の2点をまとめた選択肢を解答として選びます。
「あくび」「しゃっくり」の他、書物やTV画面を経由した師弟関係も同様の例として本文中に上げられています。

問8

全体をまとめる設問で、問2~問7までの内容が解答の手がかかりになっています。
前述の問題で見てきたように、本文前半で、私たちは自らの「唯一無二性」を獲得するために学びます。同じ先生から学びを得たとしても、生徒一人一人がそれぞれ違うことを学び取っていきます。
後半では「学びの主体性」、つまり、自分が「学びたい」と思うことで学びが成立すると述べられていますので、この2点をまとめて解答とします。

2

クラスメイトの中村さんを好きになった「ぼく」が、それまで思い描いていた「誰か好きになるってこと」と自分の感情とのギャップに戸惑う様子を描いた物語文です。

「ぼく」が中村さんを好きになる前後で感じた違いを整理してみましょう。
好きになる以前
・少しずつ、ああ、いいなと思っていく」のから始まり、「付きあってくださいって告白して、OKなら、休みの日に一緒に遊びに行ったりする」
・「誰かを好きになると、浮き浮きして、楽しくなって、幸せになって、飛び回りたくなる」と想像

実際の「ぼく」
・クラスの一員であり見慣れた存在の中村さんに「ちょっとほほえまれた」だけで突然好きになってしまう
・「授業中、中村のツインテールも、首も、肩も、みんな見たいし、でも見たくないし、見るのが怖い」
 「いつも、落ち着きがなくて、友だちとの会話にも乗れなくて、息苦しい」「好きって、きつい」

自分の思い描いていた「本当に好きになる」とのあまりの違いから、「ぼく」は自分の「好き」がおかしいのではないかと不安になってしまいます。

問1

登場人物の名前を問われる問題では、他の人物からの呼びかけに着目します。友人からは「イオリ」、中村さんからは「西山」と呼ばれています。

問2

語彙力を問う問題です。あくまで辞書に載っている意味をベースにしますが、本文中での使われ方を参照した上で解答を選びます。
B「ぼそっと」には、ア.小声でつぶやくように言うさま。ウ.何もしないでぼんやりしているさま。の2つの意味があります。ここではクラスメイトが笑顔でポーズをとる中無表情で立っている中村さんの様子から、後者を選びます。

問3

「ぼく」は、中村さんについて思い悩んだ結果、とうとう本人に声をかけます。その際にとっさに口から出た言葉が、傍線部①の内容でした。これに対して中村さんは「だって、学校、嫌いだから。嫌いな場所で心から笑うなんてできないよ」と答えます。同内容を述べた選択肢オを選びます。

問4

「ぼく」の頭の中は中村さんでいっぱいになっており、中村さんを見て「ドキドキ」「ホッとする」「泣きたくなる」「そんな自分に腹が立つ」と、様々な感情を抱いています。これらの感情に一貫性がないことから、ぼくが自分の気持ちをコントロールできていないことがわかります。

問5

空所補充形式の抜き出し問題です。まず、傍線部の「こんな気持ち」の内容を明らかにします。「クラスのメンバーとして、見慣れた女子の一人」である中村のことを、アイドルをテレビやネットで見て、可愛いなと思ってすぐに好きになるように「ちょっとほほえまれただけで、突然好きになってしま」ったのです。
空所補充形式で説明する問題の場合、与えられた文は傍線部周辺をまとめたものです。ここでは傍線部③の前2つの形式段落のまとめになっています。
空所A・Bは字数指定に適う語がないため、同じような内容が書かれている箇所を本文中から探して「やっぱり、本当に好きになるって、~」の部分を使い解答とします。

問6

表現効果の問題です。本文中の「ぼく」と友人のやりとりに見られる共通点を探してみましょう。
「ぼく」と友人のやりとりは3カ所出てきます。どれも「ぼく」は会話の途中で中村さんのことを考えてしまいます。自分でも、「今まで通り、話をしているつもりだけど、すぐに会話から離れてしまう」と自覚している通り、友人へは生返事です。このことから、中村さんのことが気になるあまり落ち着かない「ぼく」の様子が強調されていることが読み取れます。

問7

「このままの状態が続いていくこと」に耐えかねた「ぼく」は、決心し、中村さんに声をかけます。このことから、「現状を打開すべく」とあるエが候補となります。

問8

指示語の内容を問う問題では、まず本文中から指示語の指す範囲を厳密に決めましょう。ここでは、「だって、学校~西山」という中村さんのせりふです。
選択肢を見比べると、中村さんに声をかけた際の「ぼく」の様子も問われています。「ぼく」は中村さんに質問した後に、「最低だ、ぼく。失礼だ、ぼく。」と自責の念をいだいています。

このことから、
➀現状に耐えかねて、「決心をして」話しかけたが失礼な質問をしてしまった「ぼく」に対し、
②中村さんがほほえみを浮かべて本心を話す
ということになります。

問9

合否を分けた一題で扱います。

合否を分けた1題

2021年度第1回の問題では、説明的文章が平易な出題であった分、物語文の得点が合否を分けたと考えられます。その中でも、考え方の型を押さえられていれば満点を狙うことのできた大問2問9を合否を分けた一題として扱います。

問9

同じ表現の繰り返しによる表現効果を問う問題です。問題を次のように整理してみましょう。

ステップ➀同じ言葉の繰り返し(反復)の効果
同じ言葉の繰り返し(反復)には、伝えたいことを強調する効果があります。
二重線部X・Yでは「好きって、きつい」という表現が繰り返されています。そのため、中村さんへの恋心を抱いた「ぼく」の辛さが、耐えがたいほどに募ってきたことがわかります。

ステップ②心情変化
「心情変化に触れながら」とありますので、心情変化の型も用いて考えます。

心情変化の型
〈気持ち➀〉だったが、〈きっかけとなるできごと〉によって、〈気持ち②〉になった

二重線部Xでの「ぼく」は、中村さんを好きになったことで「いつも、落ち着きがなくて、友だちとの会話にも乗れなくて、息苦しい」気持ちになっています。
二重傍線部Yでの「ぼく」は、昼休みに友人と遊んでいる間にも中村さんのことが頭から離れない上、眼鏡を外した状態で遠くから見ても中村さんだけは判別できることに対して「理屈に合わない」「一体ぼくはどうなってしまったんだ」と悩みます。その後、五・六時間目の授業はなんとかクリアしますが、
「このままの状態が続いていくのはなんだか耐えられなくなって」います。
これらをまとめても、➀で見たように「ぼく」の辛さ、苦しみが耐えがたいほどに強まっていることがわかります。
四十五字の指定がありますので、上記を簡潔にまとめて解答とします。

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