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国語の合否を分けた一題

早実中等部入試対策・国語の合否を分けた一題(2016年度)

難易度分類

A…早稲田実業中合格を目指すなら、確実に得点したい問題。標準的な知識問題など
B…やや難度が高く、論理的思考力で文脈をとらえることが求められる問題
C…かなり難度が高く、失点しても致命的ではないが、正解すると得点差がつく問題

問一 a)A  b)A  問二 A)A  B)A
問三 B  問四 B  問五 B  問六 C  問七 C  問八 B
問九 B  問十 C 問十一 B  問十二 A  問十三 A
問一 A  問二 A  問三 A  問四 A  問五 A  問六 A 
問七 B  問八 B  問九 B  問十(1)A  (2)B
問十一 B  問十二 C  問十三 B  問十四 B

問題別寸評

物語文で出典は中村文則の「何もかも憂鬱な夜に」でした。孤児院にいる「僕」は飛び降り自殺しようとしますが、施設長に止められます。その後、「僕」は施設長から多くのことを教わり影響を受け、やがて刑務官になる道を選ぶという内容です。設定が特殊で分かりづらい受験生もいたでしょう。「僕」の心情の読み取りを中心とした問題構成でした。

問一

平易な語彙の問題です。いずれも、前後の文脈からも類推できる問題です。

問二

Aの「鼻につく」という慣用句は難しくはないでしょう。また、Bは「保護者席の中央で」というところから解答が導けます。

問三

「僕」は、この場面の少し前まで飛び降り自殺を図ろうとしていたのに、今は施設長が僕のために注文したホットケーキを食べてみたいという欲望に負けそうになっています。しかし、「僕」としては、ホットケーキを素直に食べるわけにはいかず、葛藤しているのだと考えられます。

問四

傍線部の前に「それを悟られないように」とあります。「それ」とは、「施設長がバターを塗ったホットケーキを食べるとおいしく感じたこと」を指しています。その前の場面では、施設長がホットケーキを食べている「僕」を見て笑ったことに腹を立てていたため、すぐに心を開くわけにはいかなかったのです。

問五

向かい合う相手に対して「恐怖」を感じたときにとる動作を考えましょう。「五字の抜き出し」という条件も大きなヒントです。

問六

それぞれの選択肢の文字数も多く、紛らわしい問題です。選択肢をパーツに分けて、ていねいに正誤判断をしていきましょう。施設長は「僕」に対して、今、「僕」が存在しているのは生命誕生以来、脈々と繋がっている「奇跡」なのだと諭します。ここから、「自分の命を無駄にしてはいけない」という施設長のメッセージが読みとれます。

問七

施設長から「生命の連鎖」の話をされたとき、「僕」は幼いながらも、施設長が伝えたかったことを強く感じ取り、そのことについて「僕」は考えていたので、周りの音が耳に入らなかったのです。

問八

傍線部の前に「お前は、本当にわかってない」と否定的な言葉を投げかけつつも、嬉しそうにしている施設長の心情を読み取りましょう。自分の意見を言うようになった「僕」を、好意的に見ていることが分かります。

問九

施設長が留守にすることが多くなると、恵子は学校に行かなくなったことに関して、「彼女の気持ちはわかるような気がした」とあります。傍線部の次の段落の記述からも、「僕」と恵子がまだ精神的に施設長を必要としていることが読み取れます。

問十

空欄は2か所あり、その前後がヒントとなります。「思春期に入り」現れる、「『僕』が忘れかけていた」マイナスの感情とは何かを考えて、抜き出しましょう。

問十一

傍線部の前後を精読しましょう。「刑務官になると言った時、あの人は喜んだ」、「励ますには不自然で、まるで僕に少しでも触れていたいかのように」とあります。「僕」が刑務官になることは嬉しかったけれども、「僕」が独り立ちしていくことに一抹の寂しさも感じているのです。

問十二

早稲田実業中ではおなじみの、本文の内容をまとめた要約文の穴うめ問題です。こういったタイプの問題は、基本的には「空欄の前後の語句と似た表現を本文中に探す」という手順で攻めましょう。⑦以外は時系列で並んでいるので、比較的探しやすいと思います。

問十三

文学史の問題です。文学史は「作品名-作者名」だけでなく、内容も簡単に説明できることが望ましいです。

論説文で出典は内田樹の「最終講義 生き延びるための七講」です。教育の重要性と教育プログラムについて、著者が大学の講義で述べたものを文章化したものです。哲学者である内田樹の文章は難関校で出題されることが多く、小学生にとっては難解ですが、文章のテーマが似通っている場合も少なくありません。したがって、ある程度、テーマを理解しておくと読みやすくなります。

問一

空欄の前に「学校教育の受益者は本人ではなく」とあります。「AではなくB」という形は、AとBが対比の関係にあるということを意識して選べば、さほど難しくはないでしょう。空欄の後の「われわれの共同体を維持するため」という箇所もヒントになります。

問二

「未熟な子ども」とは、まだ共同体を支える存在ではない人を指しています。「未熟な」、「子ども」と分けて、対になる言葉を含む語句を探しましょう。

問三

語彙の問題です。bの「自負」は辞書的な意味を選べば良いのですが、cの「はかばかしい」は本来「物事が良い方向へ進むこと」ですから、選択肢群に合致するものがなく、文脈上近いものを選ぶ必要があります。

問四

空欄の前に「子どもたちの成熟プロセスには大きなばらつきがある」と説明されています。したがって、どういうきっかけで潜在的な資質が開花するかは分からないのです。

問五

平易な接続語の問題です。接続語は空欄の前後の文をよく読み、どういった関係になっているのかを確認しましょう。Ⅰは逆接、Ⅱは因果関係であることを読み取りましょう。

問六

段落分けの問題は小見出しをつけて「話題のかたまり」を考えるのがポイントです。本文の前半は「教育の重要性について」、後半は「教育プログラムについて」述べられています。

問七

傍線部の後に、傍線部の「驚くべきこと」の内容が述べられています。「教師と生徒の間の年齢差が五歳しかなく、知識内容にさほど差がなくても、『学校』という形は機能する」というのが驚くべきことだと筆者は説明しています。

問八

まずは傍線部前の指示語を確認しましょう。「そういう話」とは、その前に書かれている「学校教育の本質を分かっていない人の議論」を指しています。そのような議論をする人たちに対して、筆者が「十五少年漂流記」を読んだことがあるかと問うているので、皮肉が込められていると考えられます。

問九

傍線部の前に「だから」という接続語があります。「だから」は前に原因・理由、後ろに結果を導く接続語です。したがって、「だから」の前に正解の内容が書かれているということです。「教育とは『集団の存続』のために行われるものだ」と述べられています。

問十

(1)
本文内容を要約した文章の穴うめ問題です。いずれの空欄の前にも、「…という…」があることに着目しましょう。「AというB」は「A=B」の関係であることをおさえ、「アウシュビッツ強制収容所」、「ユダヤ民族」を指定の字数で言い換えた語句を探しましょう。

(2)
「ある意味正しい」の「ある意味」とは、ここでは非人道的なナチスの行為は決して正当化できるものではないが、教育の重要性を見抜いていたナチスの行為は的を射ていたと言いたいのです。

問十一

「万能プログラム」とは、傍線部の前に書かれているように「どんな子どもも成熟させることができる教育プログラム」のことを指しています。そういったものが存在しないのは、「成熟のきっかけは、ひとそれぞれ異なる」からだと、後の段落で述べられています。

問十二

「合否を分けた一題」として、後ほど解説します。

問十三

本文のキーワードがつかめているかを問うていますが、同時に語彙力も求められます。空欄の後の「~性」「備える」にうまくつながる「良い学校の条件」を探しましょう。筆者は画一的な教育に対して異を唱えていることを踏まえれば、正解は見つけやすいでしょう。

問十四

問十一や問十三とも連動する問題です。本文のテーマがつかめていれば難しくはありません。一見すると「もっともらしい」文章でも、本文に書かれていない内容は選ばないように注意しましょう。

「委ねる」「会心」「形相(ぎょうそう)」「武者(むしゃ)」など、いずれも小学校で習う基本的な漢字の読み書きです。ここでの失点は避けたいところです。

合否を分けた一題

早稲田実業中の国語というと「記号選択問題や抜き出し問題が中心」という印象があります。もちろんそれは間違っていませんし、今後もその傾向が大きく変化することはないと考えられます。したがって、早稲田実業中の国語攻略のカギは、まず記号選択問題のパターンを熟知することだと言えるでしょう。
「合否を分けた一題」では、選択肢が長めの記号選択問題を取り上げたいと思います。選択肢が長い場合は、必ずパーツに分けて部分的に正誤チェックを行いましょう。

では、「合否を分けた一題」として、の問十二を解説します。
「そういうもの」が指し示す内容を選ぶ問題ですので、まずは指示語の前の内容を確認しましょう。「教育の主体は身体を形成する臓器や骨格(=人間主体)と同じである」と述べられています。両者(下線部)を図式化すると以下のようになります。

◆単一の臓器だけでは人間主体であるとは呼べない。
→教育も個別の教師だけでは教育の主体にはならない。

◆さまざまな機能を分担する部分が寄り集まって、はじめて一個の人間主体が成立する。
→専門や教育理念、教育方法、理想などが異なる、さまざまなタイプの教師たちが集まり形成することで、教育主体となる。

ここでポイントなるのは、一般論なら「教師団(組織)としての目標は同一であるべきだ」となるところですが、「個々の講師の教育理念などは違っていても構わないし、全体としての統一を図る必要もない」と著者が主張している点です。

以上の内容を踏まえた選択肢はオであり、逆にア・イ・エが消去できます。また、ウは「劣ったものも存在する」「周りがカバーする」という内容は一切書かれていないため、×となります。

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