1 | (1) A (2) A (3) A (4) A (5) A |
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2 | (1) A (2) A (3) C (4) A (5) B |
3 | (1) A (2) A (3) A (4) A (5) B (6) |
4 | (1) B (2) B (3) A (4) A (5) A |
A…合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2021年度の慶應湘南藤沢は、物理・化学・生物・地学の4分野からなる大問4つで構成されていました。難易度は年度によって幅がありますが、今年はかなり易しめだと感じました。特別難しい知識も必要無く、理科が苦手な生徒にとってネックとなる記述問題も典型的なものだったので、かなりの高得点勝負になったと思われます。試験時間が25分と短いので、典型題を短時間で解答できるよう、苦手をつくらず幅広く学習することが重要です。地学分野では豪雨や熱中症警戒アラートなどの時事問題と関連した出題となっていたので、ある程度の事前準備しておくと安心です。
出題構成は、小問集合および4分野から1題ずつで、変わっていません。
物理分野の問題は、磁石に関する問題。
地学分野の問題は、熱中症と暑さ指数に関する問題。
生物分野の問題は、人体のつくりに関する問題。
化学分野の問題は、ものの燃え方に関する問題。
慶應普通部や中等部と違いマニアックな知識は必要ないので、塾で学んだ知識で補えるものばかりです。ただ、大問2で出題された「暑さ指数」の計算式に関しては知らない人がほとんどだと思いますので、算数で言うところの不定方程式の要領で解いていくことになります。25分間という時間の中でその時間を捻出するのはおそらく不可能で、どの数値が重要なのかという「感覚」で処理することも必要でした。それ以外は計算問題も無く、毎年2題出される記述問題も平易なものでした。
問題構成は、大問4題、小問21問。
解答形式は、記号選択が18問、言語が1問、記述が2問。
1問1分程度で解かなければいけないので、知識問題に時間をかけすぎないように練習しましょう。
(物理)磁石に関する問題
今年度の大問1は記号選択のみ、簡単な知識のみの出題だったので、テストの最初の問題としてはかなり取り組みやすかったと思います。選択肢を読み間違えなければほぼ満点をとれる大問となっています。(1)で間違えると(4)まですべて失点するので慎重に取り組みましょう。目標時間は2分以内です。
磁石につくのは鉄、ニッケル、コバルトの3種類の金属だけです。ステンレスは鉄に様々な金属を混ぜた合金で、種類によっては磁石につくものもあるのですが、「合金はもとの金属(鉄)とは性質が異なる」はずなので、一般的には磁石につきません。
N極と引き合うのはS極ですよね。必ず正解しましょう。
アルミニウム自体は磁石につきませんが、磁石と磁石のあいだにアルミ箔や紙のような薄いものをはさんでも磁石どうしはくっつきます。電気のような回路が切れると流れないものと違い、磁力は離れた物体にもはたらく力です。
磁石には必ずNとSの2種類の極が存在するので、アとウは異なる極になります。
常識として知っている人が多いと思いますが、方位磁針のN極は北の方角に引き寄せられるので、北極はS極です。
(地学)熱中症と暑さ指数に関する問題。
2020年は浜松で歴代最高気温と同じ41.1℃、東京の猛暑日の日数も過去最多と同数でした。また、熊本の豪雨で「線状降水帯」なども時事問題のキーワードとしてあげられていました。
大問2は時事問題ではあるのですが、毎年のように記録的猛暑がつづいているので、もはや定番問題と言ってもいいのかもしれません。
暑さ指数の計算で時間を使いすぎて、後半が時間不足にならないよう注意しましょう。
「誤っているもの」を選ぶので注意してください。
積乱雲は激しい雷雨をともなう「かみなり雲」ですね。激しい雨の原因はすべてこの雲だと考えて良いです。縦長の雲なので下から見上げると厚みがあって灰色に見えます。
上昇するのは温かい空気ですから、4が明らかに間違っています。
黒球温度は太陽光の熱を観測するために黒く塗られており、かなり高温になります。乾球温度と湿球温度の違いは記述もできるようにしましょう。「湿球のまわりの水が蒸発するときに熱を奪うので、乾球よりも示度が低くなる」です。だいたいの値で考えると、晴れの日は黒球>乾球>湿球、くもりの日は黒球=乾球>湿球、雨の日は黒球=乾球=湿球となります。必ず黒球が一番高温になります。
計算式に表1のどれか1日の数値を当てはめて推測します。Yの値だけ0.1と確定しているので、まずはY×乾球を計算し、残りを当てはめて探します。ただしすべての選択肢を端から計算しているのでは時間を浪費してしまいます。(問4)にも出題されていますが、熱中症の危険度が増すのはどんな日なのかを考えれば、湿度の影響が大きくなるような計算式5か6に絞り込むことができます。
あまり記憶に無いかもしれませんが、翌日の暑さ指数が33以上と予想されるときに発令されるものが熱中症警戒アラート(熱中症アラート)と呼ばれるものです。緊急地震速報や大雨特別警報などと同じように、正確に覚えましょう。ただし、2022年入試のときには名前が変わっている可能性が高いので、夏の気象ニュースをよくチェックしましょう。
(生物)人体のつくりに関する問題
ヒトのからだ、骨格などの問題です。生物単元としては覚えるべき内容も多くないので、苦手な人は少ないのではないかと思われます。記述が1問含まれていますが、回答形式が指定されているので悩まなくて済みます。大問1と同様に短時間で全問正解を狙いたい大問です。
「骨はカルシウム」、常識どおりに答えて大丈夫です。骨以外に人体の部品が何でできているのかを問われる問題では「たんぱく質」を選べば間違いありません。骨にもたんぱく質は少量含まれています。
「ちからこぶ」を出すときをイメージしましょう。うでを曲げるときは筋肉A,伸ばすときには筋肉Bが縮んでいます。使っていないほうの筋肉はのびていると答えるだけです。
グラフから読み取るだけです。「①時間以下」という表現に惑わされないように注意しましょう。
筋肉がとなりの骨を引き寄せることによって体を動かしています。すぐそばの骨にはつながっていないので注意です。
有名な骨なので形で分かった人もいると思います。肩から背中にかけての大きな骨はけんこう骨です。漢字だと肩甲骨なので、位置が予想できますね。
腱は筋肉と骨をつなぐ役割をしているので、筋肉よりも細いかわりに、固い素材でできています。その部分がかみ切れない「すじ」にあたるので、腱でできている「牛すじ」は煮込んで柔らかくしてから食べます。小学生が牛すじを食べる機会はあまり無いので、ある意味では難問と言えます。
(化学)ものの燃え方に関する問題
ろうそく、木炭、金属の燃え方の違いを問われる問題です。木炭は炎を出さない、金属は二酸化炭素を出さないなど、断片的な知識だけでは点数につながりません。「なぜ炎を出さないのか?」根本的な原理の部分まで意識して学習するようにしましょう。また最後の記述問題にあるように、実験手順や観察からわかることなどが良く出題されます。これらもただおぼえるのではなく「なぜその手順になるのか」「何を目的にした実験なのか」を考え、説明できるようにしておきましょう。
ろうそくは炎心の部分で気体のろうを出し、内炎でろうが炭素になって輝き、外炎で完全燃焼するという3段階でしたね。つまり気体のろうが燃えています。「炎」とは気体が燃えるときに光や熱を出す現象です。木炭が炎を出さないのは、気体を出していないからです。木炭の中の炭素(固体)が直接酸素と反応して二酸化炭素になるので、炎は出ません。
⇒合否を分けた一題へ
物質中の炭素が空気中の酸素と結びつくと二酸化炭素が、物質中の水素が酸素と結びつくと水蒸気が発生します。木炭には炭素しか含まれないので水蒸気は発生しません。同様に金属は水素も炭素も含まないので、気体が発生しません。
木の蒸し焼きは試験管に入れた状態で実験します。試験管の口はわずかに空いていますが、木ガスが発生するため外の空気(酸素)が入ってくることはできません。料理の蒸し焼きも、鍋の中が水蒸気でいっぱいになるので外の空気が入ってきません。根本的には同じものです。
ものが燃え続けるための工夫の問題、典型的な出題です。「空気の流れ」と書いてあるので、温められた空気が上にいくので、新しい空気を取り入れるために下のほうに穴を開けます。50字以内とありますが、理科の記述はポイントさえ書いてあれば短くても大丈夫です。短時間で書き上げましょう。
2021年入試では記述問題が比較的簡単なものであったため、差がつくポイントは暑さ指数の計算と「すべて選びなさい」という複数選択タイプの問題だと思われます。どちらも制限時間つきの焦りのある状態では正答率が下がる問題ですが、複数選択タイプの問題に関しては原理をしっかり把握するような学習をしていると短時間で正答することができます。
合否を分けた一題としては大問5(2)の燃焼の問題を選びました。パッと見で答えを書いてしまうと間違えやすく、正答率は低いでしょう。高得点・短時間の勝負の中でも、原理原則や実体験にのっとって慎重に考えられると合格へ近づくはずです。
炎を出さないものを選ぶ問題。実は詳しく考えると難しい問題です。
まずスチールウールですが、金属の燃焼は炎を出しません。(1)の解説のように炎は気体が燃えるときに見られるものです。マグネシウムなど、激しい光を出して燃焼する金属はありますが、明るいだけで実は炎は出ていません。
次に線香、ほとんどの人は実体験で炎を出さずにじわじわと燃える様子を知っていると思います。線香は植物からつくられているので、普通に考えると木や紙と同じように炎を上げて燃えるはずです。しかし下図にあるように、高熱部分に当たっている真下の線香は燃える前に炭に変化してしまいます。なので、木炭との燃焼と同様に炎を出さずに燃えることになります。線香が炭とけむりに分離するので、木の蒸し焼き(乾留)とほぼ同じ状態です。