一 | すべてA |
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二 | 問一 A 問二 B 問三 A 問四 A 問五 B問六 A 問七 B 問八 A 問九 A |
三 | 問一 A 問二 A 問三 B 問四 B 問五 B問六 A 問七 B 問八 B 問九 A |
A…慶應湘南藤沢中等部合格を目指すなら、確実に得点したい問題。標準的な知識問題なども含む。
B…やや難度が高く、論理的思考力で文脈をとらえることが求められる問題。
C…かなり難度が高く、失点しても致命的ではないが、正解すると得点差がつく問題。
漢字を用いた表現
慶應湘南藤沢では毎年ユニークな大問1が出題されます。今回は「植物に関する漢字を当てはめて慣用表現を完成させる」という出題でした。あまり植物にこだわって考えてしまわず、通常の慣用句問題として処理してしまって構いません。
鷲田清一「悲鳴をあげる身体」より。
特に難しいものはありません。全問正解を狙いましょう。
本文中の空所に当てはまる語を答える、記号選択問題です。空所を含む一文を見ると、「その点で」と始まっていますので、まずはその内容を確かめます。すると、その前の二文にわたって、「じぶんの身体でさえ…コントロールできず…」と述べられていますので、ここでは「身体」を選ぶのが適切であることがわかります。
これも解法としては同じ順序で考えていくことになります。空所を含んだ一文→指示語の内容と確認していくと、「誕生や病いや死」「排泄」が、戦後どのように変わったかを抜き出せばよいことがわかります。それらについては「見えない場所に移動させられ」=「見えない過程になった」=「外部化」されたと繰り返し述べられていますので、条件にあてはまる「外部化」が正解となります。
四箇所の空欄に対し、それぞれふさわしい接続語を選ぶ記号選択問題です。
標準的な難易度ですので、前後の関係を正しくとらえて正解していきたいところです。
文中の空所にふさわしい語を答える記号選択問題です。
Ⅰ…農牧業で生き物を飼育する目的は「食べる」こと
現代では「売る」「増やす」ために育てている人も確かに存在はしていますが、ここでは「いのちを潰さないことには、わたしたちが生きていけない」という事実について、つつじの祭を例に挙げながら述べているところですので、文脈と合いません。「殺す」ために飼育する、は、結果的にはそうしているとしても、目的ではないため不適合です。
Ⅱ…農牧業で植物を栽培する目的は「摘む(収穫する)」こと
Ⅲ…ⅠとⅡをまとめた表現。「ていねいに作りあげたものを」「こわす」こと
本文の流れから、空所にふさわしい語句を自分で考えて書く問題です。
同じ段落の中で、阿波踊りの練習会について、「みんな同じように踊りながら、みんなどことなく違う。勝手に踊っている」と述べられています。これが「同じような動作をすることは楽しい」の具体例に該当すると考えられます。
それに対して、音楽や体育の時間は、「音と動作をきっちり揃えることが要求される。それがつまらない」とあり、対比の形になっていると読み取れますので、こちらは「同じ“ような”」ではなくぴったり「同じ動作」を要求されており、筆者はそれをつまらないと考えていることになります。
傍線部「他人の身体に…生き生きと感じる練習だ」について、「作者は何を育てる練習だと考えているか」という問題です。まずは傍線部がどのようなことを指しているのかを確かめましょう。
直前内容より「いっしょに歌い、いっしょにお遊戯をする」「いっしょにおやつやお弁当も食べる」ことが練習の内容であることがわかります。最終段落で再度、「幼稚園でのお歌とお遊戯、学校での給食。…はぐくんできたのである」と同じ内容を繰り返している箇所があります。「はぐくむ」は漢字で「育む」と書き、育てることを意味しますので、ここで育つのは「他人を思いやる気持ち」であると読み取ることができます。
小嶋陽太郎「ぼくのとなりにきみ」より
基礎的なものが多いので全問正解を狙いましょう。
文中の空所にあてはまる語を選ぶ記号選択問題です。
空所を含む一文で「水泳を始めてから…一度も」とありますので、これまでの水泳への取り組みを振り返ってみましょう。
・一年生になって初めてスクールに行った日は一番速かった
・一か月くらいでほかの子たちに追い越された
・二か月経ったらほかの子たちはクロールの練習まで進んでしまった
つまり「最初だけ良くできて、そこからは上手く先へ進めていない」ことがわかります。→「上達」を感じたことがない。が正解です。
妹が水泳でどんどん上達することを話すお父さんの声が、僕には B 。
<僕>は、妹の部屋にいると「圧迫されるような息苦しさ」を感じ、メダルを見ては「水泳を一年でやめた僕を刺すみたいに」と感じていることがわかります。〈僕〉が深い劣等感を抱き、攻撃を受けているかのような感覚を覚えていることがヒントとなります。
お父さんの「まあ、がんばれよ」という発言に込められた気持ちを答える、記号選択問題です。〈僕〉の目線では「それ以来、父は、僕に興味を失ったように見えた」とあり、アやウを選びたくなってしまった受験生もいるかもしれません。しかし今回の設問ではあくまでお父さん側の気持ちを尋ねています。物語の終盤で明らかにされる本当の気持ちを読み取り、選びましょう。
合否を分けた一題
傍線部「素直に応援でき」る、について、具体的な内容を探して答える書き抜き問題です。まず傍線部の一文から、「正太郎が、真琴のことを、素直に応援」するという意味であることを確認します。正太郎は、水泳に関して真琴への劣等感を抱いていることを踏まえ、「素直に=ひねくれたりせずに」真琴の水泳を応援する内容が描かれている箇所を探しましょう。
傍線部の正太郎の発言を聞いたお母さんの心情を選ぶ、記号選択問題です。
ここまでの文章から、お母さんが今日は正太郎と話をしようと思って彼を連れ出したことが読み取れます。そして、正太郎の「メダルを盗んだこと、気づいてる?」という問いかけには明確な返事をせず、そのまま正太郎の話を聞き、肯定も否定もせずに自分の考えを話すだけにとどめています。ここから、今日のお母さんは正太郎の言葉をまずは「そのまま受け止めようと思っている」と判断することができます。
空欄Cにあてはまる語を答える記号選択問題です。問二、三、六でも見てきたように、正太郎は妹の「父みたいな」泳ぎに対しては強いコンプレックスを抱いています。それを目の当たりにしたことで、問三と同じような種類のつらさを覚えていると考えることができます。
傍線部「お父さんだって、お母さんと同じこと、正太郎に対して思ってるんだよ」の、具体的な内容を選ぶ記号選択問題です。ヒントとなる箇所は二箇所あります。まず、同じ会話文の中で、お父さんが「正太郎がやることに関して、口を出すのはやめよう」と考えていることが分かります。また、喫茶店での場面で、お母さん自身が「お母さんは、正太郎が、好きなことやってくれたら、それでいいと思う」と話しています。
お母さんの口調にあてはまる語を文中から書き抜いて答える問題です。空欄を含む一文を見ると「今日の母は、まるで D 口調で話す」とありますので、「今日」の場面からお母さんの様子を表している箇所を探していきます。また、直前の会話文の内容は、親から子へという上下関係を匂わせず、対等な個人同士として素直に意見を伝えているものと読み取ることができます。
お母さんが発言した言葉を推測して選ぶ、記号選択問題です。
空欄の直後で<僕>が「母は、僕の心が読めるみたいだ」と述べていることから、その前の内容をまとめたものが入ると考えることができます。ここでは、母親を通して父親の考えを知った<僕>が、「僕のほうが、父親と距離を…」と自身のこれまでの振る舞いを反省しています。そして「いまからでも、……だろうか」と、ここから関係を改善したいと考えていますので、空欄にふさわしい言葉は、「親子・家族」に関するものであると考えることができるでしょう。
条件指定 短作文
「新しく作る小学校の教室の設計」というテーマで、百二十字以内の短作文が出題されています。ここ数年ではやや短めの指定ではありますが、他者に伝わるように的確な表現を求められるという形式自体は例年と同じであるということができます。
条件作文対策にはとにかく「書き慣れること、添削を受けより良い書き方を身につけていくこと」が大切です。
動作の様子をあらわす言葉を記号選択するという、いわば「よくある」問題なのですが、この設問については選択肢に紛らわしさがあり、迷った受験生も少なくなかったのではないかと思い、今回はこちらを「合否を分けた一題」にチョイスしました。
解き方の手順
Ⅰ…ラジオの曲を聞きながら口ずさんでいた母が、曲が終わったところで「手の傷、大丈夫?」と話しかけてくる場面です。タイミングを見計らっていることから、「落ち着いて、ゆっくりと事を始める」という意味をもつ「おもむろに」が相応しいと判断できます。
ⅡとⅢ…このふたつは使われている状況が似ているので要注意です。
いずれも「急」で「唐突」な話題の切り替わりであるといえるので、それぞれにどちらを当てはめるのが相応しいか、判断に困るかもしれません。
ただ、Ⅱはカギかっこ内の会話文であり、Ⅲは地の文です。より口語的な雰囲気をもつ「急に」をⅡに、地の文であるⅢに、堅い印象をもつ「唐突に」を入れた方が、より自然な文となります。
例えばⅢに「急に」を入れようとしてみると、そこだけ他の地の文よりも砕けた文体になってしまい、おかしくなってしまうのです。
文章全体との整合性、というと大げさかもしれませんが、「ここにこの表現はおかしくないかな?」と気がつくためには、普段から文章を細部にまでこだわって読み込み、言葉の使い方についての感覚を養っておくことが必要です。