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理科の合否を分けた一題

渋谷中入試対策・理科の合否を分けた一題(2021年度)

難易度分類

大問1 問1 A 問2 A 問3 B 問4 A
大問2 問1 (1)A (2)B 問2 (1)A (2)B 問3 B 問4 B 問5 (1)A (2)B

A…渋谷教育学園渋谷中合格のためには、必ず正解しておきたい問題
B…合格者と不合格者の間で、得点率に差がついたと思われる問題
C…合格レベルの受験生にも難しく、あまり差がつかなかったと思われる問題

出題総評

2020年、2018年に続いて大問2題の構成でした。以前は大問3題の構成が中心でしたが、近年2題構成が定着しつつあります。リード文に基づいた科学思考を求めようという学校の姿勢の表れでしょう。
解答箇所は15と多くありませんが、計算が5題、短文記述が2題含まれています。30分の試験時間で長いリード文を読み解く必要もあり、しっかりとした科学的思考を行いながらもテンポ良く解答することが求められる厳しい試験で、充分な過去問対策が必須です。

問題別寸評

大問1

ジャムの製造を題材にした複数分野の融合問題です。会話文形式のリード文が1ページ分ありますが、本問に関してはリード文の読み取り要素はあまり多くなく、基本知識・計算・科学的な常識に基づいた思考問題がバランス良く出題されています。

問1

フルーツを腐らせる微生物が繁殖するためには、養分の他に水分も必要です。糖度が高いと糖分に水が奪われ、微生物が利用できる水分が充分にはない状態となり、フルーツが腐るのを防ぐことが出来ます。
糖分のほかに、塩も同じような用途に使われます。肉や魚を塩漬けにして塩分を奪い、長期保存に耐えるようにすることも古くから行われています。
ア・イ・ウの選択肢は、いずれも科学的に妥当な内容ではありません。

問2

「真空釜」という言葉を聞いたことがある受験生はあまりいないでしょう。ただ、「内部を真空に近い状態にすることができる釜」なのではないかという想像はつけやすいと思われます。
標高が高いところでは低いところと比べて空気が薄くなっています。水の表面を押す大気圧が小さいので水は蒸発しやすく、100℃よりも低い温度で沸騰します。
高い山の山頂では水の沸点が低くなるため、「飯ごう」で普通にご飯を炊こうとしてもうまく炊けないということを聞いたことがある受験生もいたのではないでしょうか。

問3

リード文の5行目に「糖度とはジャム全体の重さに対して、糖分がどのくらい含まれているかの割合」との記述があります。要は、水溶液の濃度と同じ概念であることを捉え、これに基づいて解答します。
砂糖250gに加え、イチゴから500g×10/100=50gの糖分が生じるので、ジャムに含まれる糖分は、250g+50g=300gになります。
これがジャム全体の55%にあたるので、ジャム全体の重さは300×100/55=545.4…g→545gとなります。煮詰めて蒸発させるべき水の重さは、500g+250g-545g=205gと求められます。

問4

音の分野の学習で似たような実験を学習した受験生は多いはずです。
小さな鈴を取り付けた丸底フラスコの中に少量の水を入れ、加熱して沸騰させた後に丸底フラスコを密閉してから冷却することで、丸底フラスコの内部に真空状態を作ることができます。
本問の作業もこの実験と類似しています。この実験と真空が出来る原理を思い起こすことが出来れば、解答はそれほど難しくありません。

大問2

さまざまな災害を題材とした総合問題です。解答のためには、長い会話文や与えられた図表の中からヒントになる情報を拾い出して考える必要がある設問がほとんどです。たいへん渋渋らしい出題でした。

問1

(1)
地震計は震源から12㎞の地点に設置されていて、P波の速さは秒速6㎞と与えられています。したがって、最初にP波が観測されるのは地震発生から12㎞÷6㎞/秒=2秒後、緊急地震速報が発表されたのはその1秒後、すなわち地震発生から3秒後と求められます。
一方、震源から63㎞離れた地点でS波による大きな揺れが始まるのは、S波の速さが秒速3㎞であることから、地震発生から63km÷3㎞/秒=21秒後です。
よって、求める時間は21-3=18秒後です。
リード文中に簡潔な説明がありますが、緊急地震速報の仕組みを理解できないと、与えられた数値からどのような計算を行えば良いのかをイメージしにくく、意外と差がついたかもしれません。
(2)
リード文中、表2と3の間あたりの父の発言の中に、土地の揺れやすさが記載された「ハザードマップ」が各自治体によって作成されていることが読み取れます。
緊急地震速報が発表されたにもかかわらずあまり揺れなかった理由の1つとして、その地点の地盤が強く、揺れにくい土地であったことが考えられます。
試験では自信を持って解答するのがやや難しい設問であったと思われます。

問2

(1)
これは単純な速さの計算問題です。単位に注意して解答しましょう。
(2)
(1)で問われた「融雪型火山泥流」と本問で問われている「火砕流」は別のものであることに注意が必要です。表1の中に、火砕流の速さは時速100kmであることが記されているので、これを用いて解答します。
図1の右下の縮尺を参考にすると、火砕流到達範囲は、富士山頂を中心として半径約10kmの円形をしていることが分かります。10km÷100km/時=0.1時間→6分より、イが適切です。

問3

1気圧は1013hPaと表され、これは1㎡の上に10130kgの重さの空気がある状態に相当するとの記述があります。すなわち、1hPaは1㎡の上に10kgの重さの空気がある状態と考えられます。
普段は1気圧=1013hPaであった気圧が、台風が上陸したときには950hPaに低下したことが分かっています。したがって1013hPa-950hPa=63hPa、すなわち1㎡あたり630kgだけ空気の重さが軽くなったことになります。
台風が発生したときの気圧である992hPaは解答に関係ないことに注意が必要です。

問4

合否を分けた一題として後述します。

問5

(1)
「洪水警報」は表4の「警戒レベル3」に記載されていて、その「状況」には「高齢者や要介護者等は避難」とあります。よって、高齢者を含むイとウの家庭は避難を開始すべきです。
(2)
エの人は25才という若い年齢の男性で一人暮らしです。男性自身の避難は直ちには必要でなく、身軽に動くことが出来る状況と言えます。
高齢者のみの二人暮らしであるウの家庭や、高齢者に加えて幼い子を抱えるイの家庭が、避難を開始できているかどうかを確認し、場合によっては避難の手伝いをすることが可能なはずです。

合否を分けた一題

大問2から問4を取り上げます。
リード文の読み取り要素はない単独の計算問題ですが、単位の変換に加えて、効率よく正答するためには計算の工夫も必須です。解法によって解答時間や正答率に大きく差がつく設問と言えます。

問4

水について、1㎤の重さが1gで、1gの凝結熱が2000Jという数値が与えられています。まずは水の体積を㎤の単位で求める必要があります。
「ある台風が、半径500㎞の円形の範囲に100㎜の降雨をもたらしました」とあります。500㎞=50000000㎝、100㎜=10㎝より、この雨で降った水の体積は、50000000㎝×50000000㎝×3.14×10㎝です。これを計算したくなる受験生が多そうですが、この時点では計算して値を求めておく必要はなく、後で約分して処理する方がはるかに簡単です。
水1㎤あたり1gで、水1gの凝結熱は2000Jなので、この台風で発生する凝結熱は、50000000×50000000×3.14×10×1×2000(J)。これをマグニチュード7の地震1回分のエネルギーとして与えられている2000000000000000Jで割ることで答えが得られます。0を15個ずつ約分した後に、残った数値の部分だけを計算して、78500回となります。

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