1 | 問1 B 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 A |
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2 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 B 問5 A 問6 B |
A…渋谷教育学園渋谷合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2020年度の渋谷教育学園渋谷は、例年通り、基本的知識と問題文を読み解く力を問う問題が中心です。
30分、50点。全体に易化傾向で、取り込みやすい問題が多く、時間も十分でした。
本年度の受験者平均は34.0点(昨年度22.0点)、合格者平均は37.8点(昨年度27.5点)と、大幅に上昇しています。全体に易化傾向で、取り込みやすい問題が多く、時間も十分で、じっくり解くことができました。
昨年度は大問3題でしたが、本年度は2題。どちらも分野を超えた内容でした。
大問1は、月が同じ速さで追いかけてくるように見えることについての問題。
(天体、光の進み方、ものの運動)
大問2は、バルミューダ社のトースターでパンがおいしく焼けるしくみについての問題。
(熱の伝わり方、物質の三態、デンプンのらせん構造、植木算・場合の数(算数))
本年は、生物分野の問題がありませんでした。
どちらも、会話形式の長文を読み解き考える問題で、知識は少しでよく、主に思考力が問われるものでした。会話形式のリード文は、つい流して読んでしまいがちですが、必要な情報はその中にあります。アンダーラインを引きつつ、論理のつながりを整理しながら読み進めることが大切です。
問題構成は、3分野(物理・化学・地学)から大問2題、小問21問。
解答形式は、言語が11問、記号選択が4問、記述が4問、数字が2問。昨年あったグラフと作図がありませんでした。
言語は、すべて空欄補充問題で、空欄の前後の言葉に注意し、文章全体の意味を考えれば解答できます。
記号選択は、やや迷うものがあり、注意が必要です。
記述は、1行程度が3問と2行程度が1問で、文字数の指定はありません。
数字の2問は、特別な計算は必要なく、どちらかというと簡単な算数であつかうような問題でした。
(融合)月が同じ速さで追いかけてくるように見えることについての問題です。
全体に読みやすく、内容も平易です。国語の読み取りの問題と同じ感覚で、ポイントをおさえながら読み進めると良いでしょう。
イメージがすぐつかめた生徒はラッキーです。つかめなくても、あれこれ悩むより、先に問2〜4を解答してから取り組むとすんなりわかります。
問2〜4が、問1の結果の検証になっているからです。
実際、遠くにあるものは小さく見えますし、近くにあるものは大きく見えます。平面上で絵をかくときに、このことを意図的に利用する技法が遠近法です。
これは、容易に解答できたのではないでしょうか。
シンデレラ城を大きく見せるために、塔の先端が高く遠くに見えるように工夫されています。
つまり、高いところほど、小さめにつくってあるのです。
文中に、( ① )が3箇所、( ④ )が4箇所あります。
これだけ何回も出てくれば、さすがあてはまる語句は決まってきます。しかも、どちらも選択肢です。
問1で迷った生徒も、ここで一気に解決できたのではないでしょうか。
記述ですが、<実験3>のまとめの部分に当てはめるべき空欄があるので、実験3の目的がわかっていれば、すんなりまとめられるはずです。図4−1〜3から、一番遠くにある「山」が、最後まで視野の中に残ることがわかります。
地球から月までの距離をきく、知識問題です。選択肢なのでやや得点しやすいのではないでしょうか。
もし知らなかったとして、関連した知識があれば、そこからあたりをつけることができます。たとえば、地球の直径は約13000kmです。気象衛星ひまわりは、高さ約36000kmにあり、地球の周りを1日で1周しています。月の公転周期は27.3日ですから、これよりもずっと遠くにあると考えられます。
ほとんど国語の問題です。
実験2から、遠いものほど、場所や大きさが変わらないように見えることがわかります。
また、実験3から、場所や大きさが変わらないように見えるものは、自分についてくるように見えることがわかります。
(融合)バルミューダ社のトースターでパンがおいしく焼けるしくみについての問題です。
図1は、バルミューダ株式会社のホームページから引用したものです。トースターにしては、かなり高価な商品ですが、リカ子さんのパパの説明を聞くと、とても美味しくパンが焼けるらしいことがわかります。
大問1に比べると、やや骨のある内容で、熱の伝わり方や物質の三態の根本原理をあてはめて考えること、デンプンのらせん構造についての文章を的確に読み取ること、植木算・場合の数といった算数の考え方をつかえること、が求められます。
図1のグラフを見ると、トースターでパンを焼き終わった直後は、庫内温度は220℃を超える高温になっています。このあとすぐに次のパンを入れると、「パンの中のやわらかさと風味がよみがえる」とされる60℃のプロセスがなくなります。これが、上手く焼き上がらない理由と考えられます。つまり、庫内の温度が下がってから、次のパンを焼けばよいことになります。
リード文の内容をまとめた文章の空欄補充です。バルミューダ社のトースターが美味しくパンを焼くしくみは、次のプロセスです。
・焼き始めると最初にスチーム(水蒸気)を出す。→パンの表面に水のまくをつくる。
・ヒーターで、表面を軽く焼き上げる。→遠赤外線によって、表面の水が直接あたためられ(放射)、その熱がパン内部に伝わる(伝導)ため、水分と熱を中に閉じ込めることができる。→内部がもちもちになる。
・焦げ目をつける。→表面をサクサクに焼き上げる。
ヒーターからは、四方八方に遠赤外線が出ています。これを庫内で反射させることができれば、遠赤外線の熱が外に逃げるのを防ぐことができます。さらに、庫内の天井を丸い形にすることで、反射した遠赤外線を集めて、より効率よくパンに当てることができます。
遠赤外線は、パンの表面につくった水の層をまずあたためます。これが熱の伝導によって内側に伝わることで、パンの内部があたためられます。
パンはデンプンでできていて、このトースターを使うと美味しく食べられるのは、デンプンのすき間に水が入り込んでほぐれた状態になるから。という流れで、デンプンのらせん構造についての考察になります。
デンプンのらせん構造は、ブドウ糖6個で1回転とあります。3つのブドウ糖がつくる角度は、両端にブドウ糖があることを考えると、あいだが2つなので、360×2/6=120(度)となります。
算数の植木算の考え方です。
→合否を分けた一題参照。
本年のように、特に難問といえるものがない場合、ひとつひとつの問題について、丁寧に取り組むことで、より確実に点数を重ねることが重要となってきます。
難関校の理科は、その難易度に関わらず、文章の読解と論理的思考に重点をおく問題が少なくありません。見たことのない題材を取り上げるだけでなく、算数の考え方を使わなければならない問題とすることで、さらに難易度を上げようとする傾向もあります。だからといって、慌てることはありません。新しいゲームだと思って、ルールをしっかり把握し、落ち着いて取り組めばよいのです。この問題では、「カバー付きブドウ糖」の種類を数えますが、重複のないように数える方法は、算数の場合の数の手法と同じです。目先の難解さに惑わされず、落ち着いて対応できたかどうかが合否を分けたと考え、この問題を選びました。
ブドウ糖には結合のための5個の手があり、1番と4番でつなぐとらせん構造をつくり、1番と5番でつなぐと枝分かれをつくります。ここでは、結合していなかった手にカバーをつけて、カバー付きブドウ糖をつくっています。そして、その種類がいくつあるかが聞かれています。
カバー付きブドウ糖の種類は、カバーのついていない手の番号の組み合わせの種類でもあります。図6のように、らせんと枝分かれが組み合わさった形の場合、5個の手のうち、少なくとも1個は結合していたはずです。そして、結合の手は、1番目、4番目、5番目の組み合わせになります。
まず、らせん構造の両端に着目すると、1番だけでつないでいるものと、4番だけでつないでいるものがあります。これで、まず2種類。次に、その間にはさまれたらせん部分のブドウ糖を見ると、すべて1番目と4番目を使ってつながっています。さらに、枝分かれ部分のブドウ糖に着目すると、らせん構造の一部でありながら、枝分かれのために5番の手を使っていることがわかります。以上、2+1+1=4で、合計4種類。これ以外のパターンは見られませんので、4種類と答えます。