1 | 問1 A 問2 B 問3 B 問4 B 問5 A |
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2 | 問1 A 問2 A 問3 B 問4 B 問5 B |
3 | 問1 A 問2 A 問3 B 問4 A |
A…渋谷教育学園渋谷合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2019年度の渋谷教育学園渋谷は、例年通り基本的知識と問題文を読み解く力を問う問題が中心でした。
生物分野は、害虫とその駆除に関する問題。
化学分野は、水の三態と湿度、表面張力に関する問題。
地学分野は、火山活動と噴火による被害に関する問題。
本年は物理分野の問題がありませんでした。
どの問題も、それぞれの題材について「自分たちは生活の中でどう対処すればよいのか?」という視点をもち、思考力と問題解決能力を問う問題となっています。特に大問3では、「富士山が噴火したら、渋谷にいる自分たちはどうすればよいか?」という具体的な設定になっています。現在も口永良部島や桜島では、断続的に火山灰が噴出され、周辺住民に被害が出ています。火山だけでなく、毎年のように大きな天災に見舞われる日本では、社会的にも防災の意識が高まっています。これは、中学入試でも例外ではありません。
対策としては、ふだんから自然や環境に関する問題(汚染、エネルギー、森林保護、海洋および大気に関する研究、土壌侵食、天然資源保護、砂漠化、温室効果、持続可能な開発など)について、特に興味を持って調べたり、考えたりしておくことをお薦めします。
また、見慣れない題材であっても戸惑うことなく、問題文から必要な情報を読み取り、求められている答えをしっかり書き切る強い気持ちが必要です。
問題構成は3分野(生物・化学・地学)から大問3題、小問17問。
解答形式は、記号選択が5問、記述が5問、数字が4問。言語が1問。昨年なかったグラフと作図がそれぞれ1問ずつ出題されました。
選択肢は1つを選ぶものばかりでしたが、高度な判断が必要でした。
記述は、1行程度が3問と2行程度が2問で、文字数の指定はありませんでした。
数字の4問は、どれも計算が必要な問題でした。
言語は基本の知識でした。
グラフは軸の名前と単位、目盛りも記入しなければならないものでした。
作図は、問題文を手がかりにしてしっかり考えて書かなくてはなりませんでした。
(生物)害虫とその駆除についての問題です。
殺虫剤の問題点について考えさせる問題。
環境と生物に関する問題を毎年取り上げてきた渋渋においては、環境ホルモンについての知識は必須です。
「生態系に影響を与えない形で」とあります。ベイト剤や殺虫剤は、ヒアリ以外の生物の生存をも脅かす可能性があります。また、ノミバエはヒアリ以外の昆虫も襲うため、やはり生態系に影響を与えることになります。
DDTは環境ホルモンの一つで、体内でホルモンに似たふるまいをするため、少量でも蓄積した生物のからだに影響があるとされています。
プランクトンが取り込んだDDTは、そのまま魚や鳥の体内へ受け継がれます。
DTTの濃度は、プランクトンで0.0001(10÷10000000÷0.01)、魚は0.002(10÷10÷500)、鳥は0.01(10÷1000)です。
DDTのように、他の生物の体内に蓄積されることで、さらに問題が深刻化する可能性があります。同じ方法をくりかえしても、根本的な解決にはならないことは明らかです。
国語力が問われる読み取りの問題です。「銀行」には、余ったお金を蓄えたり、必要なときにそれを引き出したりすることができる機能があります。
バンカー法では、トマトの害虫を食べてくれるタバコカスミカメを、バーベナを食べさせて育て、必要なときに備えて準備しておきます。
基本の知識です。
アブラムシは作物の師管の液を吸って枯らせてしまいます。このアブラムシを食べるのがテントウムシです。
(化学)水の三態と湿度、表面張力に関する問題です。
水は、私たちの身の回りにいろいろなすがたで存在し、生活に利用されています。同時に、しもやガラスのくもりなどのように、やっかいな存在になることもあります。
デフロスターは、車の窓のくもりをとる装置です。スイッチを入れると、エアコン送風によって、除湿された温度の高い空気がフロントガラスに吹きつけられます。ふつうは外気を取り込むように設定されていて、湿気がこもりがちな車内の空気と入れ替え、早くくもりがとれるしくみになっています。
水滴は、暖かい空気が冷たいものにふれて冷やされたときに生じます。夏の空気の温度は車外の方が高く、冷房で冷やされたフロントガラスにふれると冷やされて、ガラスの外側に水滴がつきます。
実験結果のデータをグラフにおとし、そのグラフから数値を読み取り、室内の空気の露点をもとめます。
解答用紙には方眼だけがあり、縦軸と横軸の記入が必要となります。データの点をなめらかな曲線で結んだうえでグラフを読み取ると、空気1㎥が含むことができる水蒸気の最大値が13.8g(23.0×60/100)になるのは、約16℃とわかります。
→合否を分けた一題参照。
「水とガラスは仲がいいので丸まらないで広がるの。だから、メスシリンダーで水の端が上がる」とあります。水銀はガラスにはじかれて丸まるので、ガラスにふれる水銀の端は水とは逆に下がります。
(地学)火山活動と噴火による被害に関する問題。
富士山が噴火したときに、学校のある渋谷でどのような対策が必要かが、対話形式で書かれています。
単なる知識ではなく、文章から読み取れることがらを手がかりに考察し、解答していきます。
火山が噴火することで火山に積もっていた雪や氷がとかされてできた水が、火山噴出物と混じり合って地表を流れる現象を、融雪型火山泥流といいます。流速は時速数十kmに達することがあり、火口から遠く離れたところまで流れ下ることから、事前に避難するなど注意が必要です。
3時間で80㎞移動するので、風の速さは(80×1000)/(3×60×60)≒7.4(m/秒)と考えられます。
本文を読んで、適当な方法を考えます。火山灰の粒子は角張っているため、水に流されにくくかたまりになりやすい性質があります。排水溝をつまらせないために洗い流すことはせず、再び舞い上がらないように湿らせた状態で集め、ゴミ袋などに入れて捨てます。
マグマが冷やされてだんだん温度が下がるとき、融点が高い物質ほどはやく固体になります。表3から、花こう岩に含まれる鉱物のうち最も融点が高いのは斜長石です。
一見、渋渋定番の文章読み取り問題という印象ですか、実は理科的な根本原理をベースにして考えを進めないと答えられない問題となっています。
問題では、鏡がくもらなくなる理由を聞いています。文中には、「水滴がつくと乱反射して白くくもる」とありますが、ここでは、鏡に水がついているにも関わらずくもらない理由を考えます。
このような問題解決能力を問う問題に対応できたかどうかが合否を分けたと考え、取り上げました。
ガラスの表面に小さな水滴がついて凹凸ができ、光が乱反射するようになると、鏡の表面が白くくもって見えます。鏡がくもらないようにするには、ガラスに水がつかないようにするか、ついた水を広げて凹凸をなくすかのどちらかになります。文章から、シャンプーには水をはじく性質はありませんが、水を広げる性質があると読み取ることができます。水を広げるためには、水滴が丸くなる「表面張力」を少なくすればよいと考えます。