1 | 問1 A 問2 A 問3 B 問4 A |
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2 | 問1 B 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A |
3 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 B |
4 | 問1 A 問2 A 問3 B 問4 B 問5 C |
A…世田谷学園合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2018年度の世田谷学園は、例年通り、基本的知識が中心で、長い文章を読み取って論理的に考える問題が出されました。本年はやや難易度の高い滑車・輪軸の問題が出され、苦戦した生徒も多かったのではないでしょうか。昨年度と比べ、難易度は高く、点数のばらつきが大きかったといえます。
地学分野の問題は、日本の気象と風に吹き方に関する問題。
生物分野の問題は、沖縄のサンゴ礁に関する問題。
化学分野の問題は、食品の酸化に関する問題。
物理分野の問題は、輪軸と滑車のつり合いに関する問題。
対策としては、基礎知識をしっかり身につけるとともに、文章やデータから必要な情報をすばやく読み取り、論理的に考えて結論を出すための演習を重ねておきましょう。
普段の学習では、知識を丸覚えするのではなく、根本原理をしっかりおさえ、他の事柄との関連や整合性について考えるようにするとよいでしょう。
問題構成は、4分野から大問4題、小問30問。
解答形式は、記号選択が12問、数字が9問、言語が5問、記述が4問。作図・グラフはありませんでした。
選択肢は、かなり突っ込んだ知識も一部に見られました。
数字は、物理分野の計算問題が中心です。
言語は、基本の知識ばかりでした。
昨年なかった記述が4問も出され、いずれも15字指定で、字数で納める工夫が必要でした。
(地学)日本の気象と風に吹き方に関する問題です。
風の吹き方と、観測のしかたについて、くわしく問う問題です。
A:風向の方位は、ふつう、16の方位で表します。
B:台風の定義として、平均風速を聞いています。17.2m/秒と書きたいところですが、問題文に「整数で」とあるので17です。注意しましょう。
上昇気流が発生するところは、気圧が低くなっています。ある程度の規模の低気圧になると、低気圧の中心に向かって吹き込む風にコリオリの力がはたらき、右にずれていくため、結果的に、低気圧の中心に対して反時計回りに回転しているように見えます。
風向風速計は、平らな開けた場所に独立した塔や支柱を建て、地上10mの高さに設置することが標準となっています。高さの知識がなかったとしても、地面に設置することは考えにくいと気づくことが大切です。風向の見方は基本の知識です。
風の名称に対する、4対4の選択肢の問題です。どれも基本の知識ですから、迷うところはなかったのではないでしょうか。
(生物)沖縄のサンゴ礁に関する問題です。
サンゴを題材に、群体や共生について考える問題です。
なじみのない分野ですが、文章を読み取って理科的に考える力が試されます。
(1)「群体」とは、無性生殖によって増殖した多数の個体がくっついたままで、一つの個体のような状態になっているもののことです。
ボルボックスは、数千個もの体細胞からなる球状の細胞層があり、内部は中空になっています。
(2)サンゴのような群体は、同じような個体が集まっているだけで、役割分担がありません。
文章のえさの取り方や増え方の情報から、役割分担する必要がないことがわかります。
石灰岩は、水中動物の骨などが水底に積もって出来たものです。
文中に、「サンゴの殻は、主に炭酸カルシウムでできています。」とあることからも、わかります。
本文から、「褐虫藻」は藻類です。藻類には、ケイソウや海藻などがあり、光合成を行います。サンゴは、海中のプランクトンを取って食べるだけでなく、藻類がつくり出した炭水化物を利用していることがわかります。褐虫藻がサンゴのからだから出ると、サンゴ礁の動物のエサになってしまうと考えられます。
互いに利益がある関係を選びます。
アリは、アブラムシの尻から分泌される甘露と呼ばれる蜜をもらい、アブラムシを外敵から守っています。
地球温暖化によるサンゴの「白化」は、藻類が抜け出して、色がぬける現象です。サンゴは藻類から栄養をもらえず死んでしまうため、大きな問題になっています。
時事的内容で知っていた生徒も多く、正答率も高かったようです。
サンゴは、刺胞動物に分類されます。棘皮動物である、ヒトデ・ウニ・ナマコなどとはちがうなかまです。フジツボは群生するので、サンゴに似たイメージがあるかもしれませんが、甲殻類に分類されます。
サンゴのなかまはイソギンチャクで、触手の毒でエサを麻痺させて、口に運びます。実は、サンゴの触手にも毒があるのです。
(化学)食品の酸化に関する問題。
食品が酸化することについて考える問題です。
食品添加物による酸化防止については、文章からの情報をもとに考えます。
こちらも、読み取る力が求められる問題となっています。
「酸化」は、物質と酸素が結びつく化学反応のことですから、「さび」と「燃焼」を挙げることができます。
問題に「激しい酸化」とあるので、「燃焼」があてはまります。
(ア)湿度が高いと、金属の表面にうすく水滴ができ、さびやすくなります。
(イ)表面に油の膜ができるので、酸素と触れ合わず、酸化しにくくなります。
(ウ)表面積が大きいと、酸素と触れ合う面積が大きくなり、さびやすくなります。
食品が酸素に触れなければ、酸化しません。
缶詰やレトルト食品は、密閉されているので、酸素に触れることがありません。
酸化の速度は、温度が低いほどゆっくりになります。
また、冷凍食品の表面に氷の層が保たれていれば、酸素に触れることもありません。
→合否を分けた一題参照。
(物理)輪軸と滑車のつり合いに関する問題。
輪軸や滑車は、エレベーターやクレーン、自転車のクランクなどに利用されています。
滑車や輪軸の重さが設定されているため、難易度がやや高くなっています。
(1)輪軸はてこに置き換えて考えます。
輪軸の半径の比が、小輪:大輪=12:(12+24)=1:3 なので、(Aにかかる力):(Bにかかる力)=3:1 です。
(2)小輪と大輪の回転は同じなので、Aにつるしたおもりを0.36m持ち上げるには、Bのひもを3倍の1.08m(0.36×3)引けばよいことになります。
(1)図2のひもにかかる力は32㎏です。動滑車とおもりアを、2か所で支えているので、つり合いの式は、(おもりアの重さ)+6=32×2 となります。
したがって、(おもりアの重さ)=58(㎏)
(2)動滑車とおもりアを、2か所で支えているので、持ち上がる距離は1/2になります。
1.5÷2=0.75(m)
(1)まず、おもりイと3つの動滑車を支えるひもにかかる力を考えます。ひもは1本ですが、6か所で支えているので、378+6×3=(ひもにかかる力)×6 より、(ひもにかかる力)=66(㎏)
輪軸のつり合いから、66:(Dにかかる力)=3:1 なので、(Dにかかる力)=22(㎏)
(2)おもりイと3つの動滑車の重さを、1/6×1/3=1/18(倍)の力で支えているので、引いた長さは逆数の18倍になります。
まず、輪軸に着目します。おもりウを支えるEにかかる力は、63:(Eにかかる力)=3:1 より、(Eにかかる力)=21(㎏)
天井に固定した定滑車に着目すると、かかっているひもにかかる力は、
(輪軸の重さ)+(おもりウの重さ)+(Eにかかる力)=15+63+21=99(㎏)
Eを引く力を□とすると、
(Fにかかる力)=□×3
(Gにかかる力)=15+□+□×3=15+□×4
(Fにかかる力)+(Gにかかる力)=232 なので、
(□×3)+(15+□×4)=232
15+□×7=232
□×7=232-15=217
□=31(㎏)
本年は物理分野で難易度の高い問題が出され、もともと苦手とする生徒は大変苦戦したのではないでしょうか。しかしながら、正答率が受験者・合格者ともに低いことから、合否を分けたとは言えません。
むしろ、世田谷学園の神髄といえる文章の読み取り問題から、昨年なかった記述問題につづく流れに着目し、合否を分けた一題としました。
問1・2は、一般的な酸化についてですが、問3~5は、食品の酸化についてきく問題でした。
以下、本文の流れです。
〇「酸化」とは酸素と結びつくこと
〇酸化しやすい食品があれば、酸化しやすい保存状態もある
〇酸化しやすい食品には、酸化防止の工夫が必要
〇食品よりも酸化しやすい物質を使用し、優先して酸素と結びつかせるのが、酸化防止剤
〇酸化防止剤として使われるビタミンCとビタミンEは、非常に酸素と結びつきやすい物質である
本文から、酸化防止剤は「他の物質よりも優先して酸素と結びつく」のですから、レモン汁に含まれているビタミンCも同じようなはたらきをすると考えます。
リンゴの変色は、リンゴの表面の酸化によるものです。これにレモン汁をかけるのですから、「酸化しやすい食品」=リンゴ。「酸化防止剤」=レモン汁。という関係を当てはめてみます。
レモン汁にはビタミンCが入っていて、これは、非常に酸素と結びつきやすい物質です。
リンゴよりもレモン汁の方が酸素に結びつきやすいのなら、いったん酸化したりんごから、酸素がレモン汁に移動することが考えられます。酸素がレモン汁に移ることで、リンゴが元の色にもどるのです。
長い文章を読んで必要な情報を取り出して利用する必要があります。
限られた時間で処理できるようになるのには、やはり、演習を積んでおく必要があるといえるでしょう。