1 | (1)(a) B (b) A (c) A (d) B (e) A(2)(a) A (b) A (3)(a) A (b) A (c) A |
---|---|
2 | (1) A (2) A (3) A (4) B (5) B (6) A (7) A |
3 | (1) A (2) A (3) A (4) B (5) A |
4 | (1) A (2) A (3) A (4) A (5) A (6) B(7) A (8) A (9) B |
A…聖光学院合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2019年度の聖光学院は、例年通り、幅広い知識を問う問題と、少々長めの文章を読み取って、設問に答える問題が中心です。本年は、計算問題以外は、論理的思考よりも知識問題にやや偏っている印象でした。100点満点で、合格者平均79.8点(昨年度72.9点)、受験者平均70.5点(昨年度65.9点)と、昨年度より上がっているものの、合格者平均と受験者平均の差は広がっています。
生物分野の問題は、動物とヒトの消化器官についての問題。
地学分野の問題は、日本の火山活動と高原の農作物についての問題。
化学分野の問題は、状態変化と気体のとけ方についての問題。
物理分野の問題は、棒のつり合いの問題。
生物→地学→化学→物理 の流れは、ここ数年定着しています。
また、聖光学院特有の、大問内で分野をまたぐ設問があり、聞かれ方が変わっても対応できるように、使える知識として定着しているかどうかが問われます。
出題される題材は、生物は、昨年の呼吸から本年の消化の流れが見られ、また、地学は昨年に引き続き、火山活動が取り上げられています。物理も、昨年と本年で、力のつり合いに関する問題が出されています。
本年は、最後の物理分野の計算問題のボリュームが大きくなっていることから、時間配分をうまくできたかが、合否を分けるポイントであったと考えられます。前半の知識問題で思うように解答できないと感じても、ミスを恐れずテキパキと処理し、余裕をもって計算問題取り組むことができれば、高得点も狙えたのではないでしょうか。
対策としては、知的好奇心をもち、普段から積極的に調べ学習に取り組み、広く知識を吸収しておくこと。理科という科目にしばられることなく、いわゆる大人の常識的な知識も知っておくこと。科学読み物などを利用して、文章を読み取る力をつけること。また、ことばの知識を使えるレベルにするとともに、論理的に説明する力をつけておきましょう。
問題構成は、4分野から大問4題、小問36問。
解答形式は、記号選択が16問、数字が10問、言語が9問、記述が1問。昨年あった、作図とグラフはありませんでした。
昨年と比べ、記号選択が5問増加しています。「すべて選び」「なかまではない野菜を」といった指示に注意が必要です。言語は、小学生にはなじみのないものもあり、解答しづらかったかもしれません。記述は、10~20字程度。計算が必要な問題は、倍増しています。
(生物)動物とヒトの消化器官についての問題です。
1問目から、聖光学院特有の、知っている生徒は知っているが、知らない生徒は知らない知識の問題となっています。最近は、東京でもホルモン焼きの店が増えているので、ミノ・ハチノス・センマイ・ギアラを食べ比べながら、牛の4つの胃を観察してみてはどうでしょうか。
草食動物は、植物の細胞壁(セルロース)を消化しなければならないため、肉食動物よりも、消化のプロセスが複雑です。草食動物のウシ・ウマ・ゾウのうち、胃が4つあるのは、ウシだけです。
「食物の消化を助ける微生物」とあります。この微生物は、主にウシの第一胃にいて、セルロースを分解する酵素を持っていて、分解された栄養素を、ウシが吸収します。一方、死んだ微生物は、ウシの消化酵素でアミノ酸に分解され、やはりウシに吸収されます。
これは、私たちヒトと共通した方法です。消化管は口から肛門まで一本道です。気体が口から出れば「げっぷ」、肛門から出れば「おなら」となります。
ウシ・ヒツジ・ヤギなどは、はんすう(消化しやすくするために、一度胃に入れた食べ物を□にもどして、さらにかむこと)を行う、はんすう動物です。ウシやヒツジなどを観察すると、いつも口をモグモグさせている姿を見ることができます。複数の胃をもつことは、はんすう動物の特徴のひとつです。
「ユーカリの葉を食べる」とあるので、ピンときた生徒が多かったのではないでしょうか。
「ヒトの腸と違って大きく発達しており」とあるので、ヒトにもあるけれども、コアラよりもずっと小さくなっている部分と考えます。腸の一部なので、盲腸とわかります。
ヒトの消化管は順に、食道・胃・小腸・大腸です。十二指腸は、小腸の一部です。
消化酵素をふくむ消化液には、胃で生産する胃液、すい臓で生産するすい液、小腸で生産する腸液があります。かん臓で生産する胆液は、消化酵素をふくみません。
胃液には、胃酸やたんぱく質を分解するペプシンがふくまれています。胃酸は塩酸を含んでいて、強い酸性で細菌を殺すはたらきがあります。
(地学)日本の火山活動と高原の農作物についての問題です。
昨年度に引き続き、火山活動に関する問題となっています。「噴火警戒レベル」にくわしくふれるなど、時事的内容をふくんでおり、準備をしていた生徒にとっては、有利だったのではないでしょうか。
鬼押し出しの溶岩は、浅間山の噴火によるものです。これは、基本の知識です。
マグマが、火山活動によって地上に出てきたものを溶岩といいます。ドロドロしている状態でも、冷やされて固まったものであっても、どちらも溶岩です。
鬼押し出しの溶岩は、急に冷やされて固まった火山岩ですから、安山岩を選びます。
「噴火警戒レベル」は、対象となる火山について気象庁が発表するもので、火山活動に変化がみられると、そのつど変更・周知されます。レベル1は「活火山であることに留意」で、試験日の時点では、磐梯山と富士山があてはまります。レベル2は火口周辺の立ち入りが規制される「火口周辺規制」で、草津白根山と阿蘇山です。レベル3は、登山禁止や入山規制が行われる「入山規制」で、霧島山と桜島です。
もちろん、流れる水のはたらきとしての浸食作用に着目するのもよいでしょう。しかし、「砕く」ということばのニュアンスから、一気に砕くイメージの方が、作問者の意図に近いかもしれません。ここで、水がこおると体積が1.1倍になることを思い出してみましょう。岩の割れ目にしみこんだ水がこおると、割れ目をおし広げ、巨大な岩であっても砕くことができます。
キャベツはアブラナ科の植物です。選択肢のうち、アブラナ科でないのは、レタスだけです。モンシロチョウの食草としておぼえた知識を使います。
「夏に涼しいところで、栽培するのに適した農作物」とあるので、特に南の土地でよく育つものを消去していけば、2つ残ります。
(化学)状態変化と気体のとけ方についての問題。
図1・2は、状態図といわれるもので、固体と液体、液体と気体、固体と気体を分ける3本の線が、三重点といわれる1点でつながっています。高校化学であつかうものですが、ここでは、圧力が1013hPaの場合だけについての問題となっているので、問題文を読みとくことで、解答できるようになっています。
状態変化を表すことばを書きます。二酸化炭素は、私たちの身のまわりでは、固体から直接気体に変化します。図2で、点Dと点Eの間の線は、固体と気体を分ける線です。
気体は、一般的な固体と違って、温度が高いほど溶解度が小さくなります。また、圧力をかけると、解ける量が多くなります。二酸化炭素の水溶液は炭酸水で、弱い酸性を示します。これも、基本の知識です。
図1の1013hPaの点線は、2本の線と交わっています。点Aと点Bの間を温度0℃で交わる線は、固体と液体を分ける線で、0℃より低い点Aは固体だけ、0℃から100℃の間の点Bは液体だけです。また、点Bと点Cの間を温度100℃で交わる線は、液体と気体を分ける線で、100℃より高い点Cは気体だけです。たとえば、固体と液体がともに存在している状態なら、固体と液体を分ける線上の点になります。
塩素は、黄緑色の有毒な気体で、消毒のためにプールや水道水に、溶かして利用しています。他の選択肢の物質と比べると、水に溶けやすい気体といえます。少々突っ込んだ知識の問題です。
20℃の水5Lには、1.7×5=8.5(g)の二酸化炭素を溶かすことができます。1℃のとき、13gの二酸化炭素を溶かしたので、13-8.5=4.5より、4.5gの二酸化炭素が気体となって出てきます。
(物理)棒のつり合いの問題。
棒やおもりを、台はかりにのせた2点で支える問題です。台はかりの中には、ばねが入っています。皿を上からおすと、皿が下がるのは、このばねの長さが変化するからです。図1で、半球形のゴムを固定してから、はかりの目盛りを0gに合わせているので、ゴムの重さは考えなくてよいことになります。
→合否を分けた問題参照。
金属棒Cの真ん中に150g、金属棒Dの真ん中に120gの重さがかかっていると考えます。どちらもはかりの位置と一致するので、左のはかりは150g、右のはかりは120gで支えます。
棒が水平になるとき、左右のはかりにかかる重さは、どちらも135g((150+120)÷2)で同じになるはずです。左のゴムと接している位置を支点として、回すはたらきのつり合いを考えると、右回り=120×60、左回り=135×□です。(□は左右のゴムの間の距離です。)計算すると、□≒53.3(cm)なので、棒の右端から右のはかりの位置までの距離は、90-53.3=36.7(cm)です。
いわゆる難問はなく、知識問題で迷ったすえ、最後の物理分野に突入し、残りの時間でどう攻めるかが、ここでは重要です。
聖光学院受験生なら、てこの問題には慣れているとはいうものの、条件の変化に注意しながら、ミスなく確実に解き進めていかなければなりません。
この問題は、後に続く問題のいわば前振りで、これを正答することができれば、最後の3問に取り組みやすくなります。
高得点を狙うなら、得点しておかなければならない、重要な問題と考え、合否を分けた一題としました。
(5)まではなかった、新しい条件「この金属棒を水平にしました。」とあります。
はかりにのった棒が水平になるとき、左右のはかりの皿の高さが同じでなければなりません。このとき、左右のはかりにかかる重さも同じになります。棒とおもりの重さの合計は、200g(150+50)なので、はかりにかかる重さは、どちらも同じ100g(200÷2)です。
左右のはかりがそれぞれ100gになるように、右のはかりだけを動かします。わからない値である(左右のゴムの間の距離)を、□として、つり合いの式を立てます。このとき、動かさない左のはかりの位置を支点として、回すはたらきのつり合いを考えるとうまくいきます。
右回り=50×30+150×45
左回り=100×□
「右回り=左回り」が成り立つので、これを計算すると、□=82.5(cm)となります。
したがって、右のはかりの位置を、82.5-(30+45)=7.5(cm)だけ右へ動かせばよいことになります。