A…聖光学院合格を目指すなら、確実に得点したい問題。標準的な知識問題なども含む。
B…やや難度が高く、論理的思考力で文脈をとらえることが求められる問題。
C…かなり難度が高く、失点しても致命的ではないが、正解すると得点差がつく問題。
一 | A |
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二 | B |
三 |
問一 A 問二 B 問三 C 問四 B 問五 B 問六 B 問七 C 問八 B |
四 |
問一 A 問二 A 問三 B 問四 A 問五 A 問六 B 問七 A 問八 B |
漢字の書き取りのみで、読みはありません。「拝観」「礼節」「誤植」など、すべて小学校で習う漢字からの出題で、かつ、差がつきそうなものが並んでいます。ここでの失点は避けたいところです。
聖光ではおなじみの「言葉に関する知識問題」です。こういったタイプの問題はその場のひらめきも大切ですが、時間をかけずに思いつくためには普段から語彙(ごい)に対する意識を高めていく必要があります。文章読解問題を解くときや読書の際に分からない言葉があったら、こまめに辞典で調べる習慣をつけましょう。
今回は、慣用句や語彙問題を中心とした出題でした。「あおすじを立てて怒る」「ぐうのねも出ない」「しんけつを注ぐ」「仲むつまじい」など、語彙力の高い小学生ならば、5問中4問は正解できるのではないでしょうか。
物語文で、出典は原田マハの「生きるぼくら」でした。主人公の「人生」と「つぼみ」が祖母を訪ねて将来に希望を見出す場面です。「人生」と「つぼみ」の亡くなった父親の回想場面が少し分かりづらいものの、本文内容をつかむのはさほど難しくありません。
ただし、記号選択問題ではひっかけが多く含まれていますので、選択肢をパーツに分けて、注意深く正誤を判断する必要があります。
言葉の問題です。「日がな一日」は正確な意味を知らなくても、前後の文脈(この場面で、「人生」は布団に横たわったまま、庭の風景や八ヶ岳の峰を眺めています)から類推できます。Bの「猫の手も借りたいほど」は有名な慣用句なので、問題なく選べるでしょう。
傍線部①の「つぼみ」の心情を問う問題です。ここでは「人生」に病気の父親の介護に来なかったのかと聞かれています。傍線部の後に「少し言い澱んで」とあり、さらに「つぼみは、病気ですっかり生気を失った父を見るのが怖かった」とあることに着目しましょう。
傍線部②で、「人生」と「つぼみ」の父が母(二人からすると祖母)を誇りに思うと言った理由を考えましょう。「何となくの内容」をとらえるのは難しくありませんが、選択肢にはひっかけが含まれていますので注意が必要です。解答のポイントは「母の稲刈りの姿を見て一生懸命さに心を打たれた」→「母が刈り取った新米を自分はずっと食べていた」→「そのおかげで自分も輝いて生きることができた」という3点です。
やや分かりにくい表現ですが、内容はつかめたでしょうか。傍線部の直後を精読しましょう。「布団に正座して、…ばあちゃんに語りかける父に。」とありますが、実際には父は亡くなっているためにその場にはいません。ばあちゃんの話を真剣に聞き入る「人生」はあたかも亡き父がいるかのように感じられたのです。
問三と同様、大まかな内容はつかめると思いますが、選択肢をていねいに読む必要があります。傍線部④の前で、「ばあちゃん」は息子と夫(「人生」と「つぼみ」にとっては「父」と「祖父」にあたります)が亡くなる直前に嬉しい言葉をかけてくれたということを、「人生」と「つぼみ」に話しています。それを聞いた「つぼみ」がどのように感じたのかを考えましょう。
問題自体はそれほど難しくはないのですが、選択肢の一つひとつが長文なので(一つの選択肢が三行にわたっています)、必ずパーツに分けて、部分的に正誤をチェックしましょう。傍線部⑤に「目を丸くして人生をみつめていた」とあります。「目を丸くする」という表現は「驚く」という意味ですが、「つぼみ」は何に驚いたのかを考えましょう。傍線部直前の「人生」の言葉を聞いたからです(「おれたち、もう決めたから…手伝うよ」)
また、傍線部中の「居住まいを正した」とは改まった態度をとることですが、「つぼみ」が改まって「ばあちゃん」に言った、傍線部直後のセリフも確認しましょう。
本文の内容や表現の特徴を問う問題です。問四でも触れたように、本文の引用箇所では、すでに亡くなっている父の回想をすることで、「父の存在感」を表しています。そして、最後の場面では、「人生」と「つぼみ」が大切な田んぼで米作りを手伝う決心をしていることから、前向きな形で終わっていることも踏まえましょう。
八十字の記述問題です。後ほど「合否を分けた一題」で解説します。
説明的文章で、出典は加藤博子の「五感の哲学 人生を豊かに生き切るために」です。言語が私たちの感覚に与える影響について論じています。言語論のテーマとしてはよくあるものですが、選択肢がかなり紛らわしいものになっています。物語文のところでもふれたとおり、一文で正誤を判断せず、パーツに分けて、本文内容と合っているかを確認しましょう。
平易な語彙問題です。波線部前後からも類推可能です。「挙げ句」は「行きついた結果」で、「えもいわれぬ」は「言葉で言い表せない」という意味です。
傍線部①の直前に「文字ができたことで記憶が衰退した」と述べています。このことがなぜ「予想できること」だったのかを考えましょう。
傍線部の前と傍線部をつなげて考えましょう。文字の印刷されている紙が人間にとって「特別なもの」だったため、「供養塔と意味づけられた焼却炉で燃やされる」と述べられています。さらに前の段落では「文字とは、人間の精神的な営みを、固定して保存する発明です」と書かれている点にも着目しましょう。
これは平易な問題です。空欄の前に「日本で新聞などを資源ゴミとして分別し再生紙として利用する」とあります。空欄の後にはそれとは違う内容(前に述べられた「供養」の意味合いについて)が続きます。
傍線部③の前の「聖なる空間の神々しさや清冽さ、敷居を跨ぐときの慄きや不安」という箇所がヒントになります。このような反応を「具体的に」言い換えている箇所を探しましょう。
傍線部④の内容を具体化した例を選ぶ問題です。ポイントは傍線部を3つのパーツに分けるということです。「①言葉などで表現される」→「②ある感覚が共有される」→「③流通する客観性をもち得る」という3点を意識しましょう。特に③が入っているかどうかが解答の決め手になります。
傍線部⑤の前後を精読しましょう。「特殊用語で…分かる人にだけ分かればいいとされている言葉」と述べられていて、「忌み言葉や禁句もまた、ズバリ言い切ることが躊躇われる現象に際して使われる表現」とあります。
「ヴェールとしての言葉」の利点を2点挙げる問題です。本文の最後に「感覚器官はセンサーであるだけではなく、フィルターでもあるかもしれないのです」と述べられています。言葉も「センサー」としての役割(=見えないものに名前を付けると具体的に存在する対象として考えられるということ)や「フィルター」としての役割(=膨大な刺激の流入を縮減することで情報を知覚できるということ)があると言い換えていけば分かりやすいでしょう。
聖光学院の国語というと「記号選択問題が中心」という印象があります。もちろんそれは間違っていませんし、今後もその傾向が大きく変化することはないと考えられます。したがって、聖光学院の国語攻略のカギは、まず記号選択問題のパターンを熟知することだと言えるでしょう。
一方、記述問題はどうでしょうか? 記号選択問題がある程度以上得点できたら、最終的な合否を決めるのは記述問題ではないかと私は思います。
「合否を分けた一題」では記号選択問題ではなく、あえて記述問題を取り上げたいと思います。
では、「合否を分けた一題」として、三の問八を解説しましょう。
記述問題を解くうえで大切なことの一つは「文中で解答作成に使えそうな語句は優先して使う」ということです(これは論説文はもちろんのこと、物語文でも当てはまります)。むやみに自分の言葉で置き換えてしまうと、言葉のニュアンス(意味合い)が変わってきてしまうことがあるからです。
三の問八も、できるだけ文中の言葉をつなぎ合わせて解答作成します。
ここでは二重線部のときの「ばあちゃん」はどういうことを思っていると「人生」が感じたかを問うています。設問文には「このとき」「人生が(どのように)感じたか」と限定していることから、二重線部の前後にヒントがあると考えられます。
解答要素として使えそうな本文中の言葉を拾っていきましょう。
なお、物語文の記述は「原因・理由+心情語(気持ち言葉)」の流れを意識することも大切です。
[原因・理由→心情語]
・若い衆が田植えや刈り入れ(=米作り)を手伝ってくれる→ありがたい
・手伝ってくれる人を誰一人覚えられない→心苦しい、自分に呆れる(情けない)
・覚えている人はこの世にいない人ばかり→孤独感
これらをつなぎあわせて、解答を作ってみましょう。
(解答例)若い衆が米作りを手伝ってくれるのはありがたいが、彼らを誰一人覚えていないことを心苦しくて、情けなく思い、覚えている人は亡くなった人ばかりで孤独を感じている。
以上のように、まずは文中の言葉を優先させて解答作成し、「7割以上の部分点」をとれば、十分合格点に達します。聖光のホームページにも、受験生にとってためになる問題解説がアップされていますので参考にしてください。