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算数の合否を分けた一題

桜蔭中入試対策・算数の合否を分けた一題(2015年度)

難易度分類

(1)①A ②A (2)①A ②B
(1)B (2)B~C
(1)A (2)B
(1)A (2)B (3)B~C
(1)A (2)B (3)B

A:桜蔭合格を目指すなら必ず得点したい問題
B:着眼点や解法ツールにより正答率・かかる時間に差がつく問題
C:難易度や処理量から判断して、部分点狙いで答案を作成すべき、もしくはとばすべき問題

出題総評

2014年度までは確実に易化傾向にあった桜蔭の算数。特に2014年度のように、ⅠからⅣまで平易な問題が並び、最後のⅤだけが超難問のようなセットだと、算数では差がつきにくくなり、「桜蔭は算数で突き抜けることが難しい」という結果になっていました。
しかし2015年度は、従来の桜蔭算数の特徴である「処理量が多く解きにくい問題」「ミスを誘発する問題」がそろい、全体として得点しにくいという意味で難度が上がっています。算数の力がある生徒とそうでない生徒とで大きな差がつきやすいセットでした。

問題別寸評

Ⅰ(1)

従来通りの順算・逆算の計算問題が1つずつ。計算過程で出てくる数値の煩雑さは例年に比べると穏やかです。

Ⅰ(2)

数の性質。①②ともに、与えられた例にならって約数が9個の整数を挙げて試すことで、和と積の規則性に気づけたかがポイントです。

①は約数が9個の整数は平方数(素数×素数の平方数は除外)であることから、小さい順に調べていっても36から100、225とすぐに答えにたどりつくことができます。また、与えられた36の例から、アは必ず1であり、オ=Nとすると、ケ+オ=N×N+N=N×(N+1)となることに気づけば、N×(N+1)=240=15×16より、N=15で、15×15=225と求められます。

②も与えられた36の例と①で求めた225の場合からウ×キ=ケとなることに気づけば、38416を素因数分解して2×2×2×2×7×7×7×7より、ケ=2×2×7×7=196と求められます。

図形の規則性。どのような規則性を読み取ったかによって所要時間に差がつく大問です。ただ、いずれにしても処理量が多く、ミスを誘発する点に注意が必要です。

設問(1)では、以下の2つの規則性に気づけたかがポイントです。
■正三角形の1辺の長さ⇒⑥以降は「1つ前の正三角形の1辺+5つ前の正三角形の1辺」
■図形の周の長さ⇒⑧を置いたときは⑤~⑨の1辺の和⇒⑰を置いたときは⑭~⑱の1辺の和

設問(2)では解答方針が分かれるところでしょう。①から⑮まで面積をたしていく、平行四辺形から正三角形をひく、正三角形から2つの正三角形をひく、あたりが考えられますが、どの解答方針をとっても処理が煩雑で時間がかかります。いったんとばすというのも選択肢のひとつです。

不定方程式。桜蔭志望者であれば演習を積んできているはずであり、他の大問と比べて難易度は抑えめなので、ここは確実に得点したいところ。
ただし、設問(2)においては、チーズケーキの値段が5%引きになるのは10個をこえた分だけ、つまりチーズケーキ全体の代金が5%引きになるわけではないことに注意が必要です。

大問Ⅲまでが問題用紙1枚目。
大問Ⅳから問題用紙2枚目に入ります。

立体図形。大きさの異なる円柱を積み重ねた立体の表面積が題材です。

設問(1)はとても易しく、落としてはいけない問題。

設問(2)は易しいけれども処理が面倒。差の部分だけに注目しても、それなりの処理量が伴います。

設問(3)は場合の数との融合問題。後ほど詳しく解説します。

速さで、4人の旅人算。[1]進行の様子を図示する、[2]比を駆使する、[3]要求されているのがすべて距離なので、かかった時間を求めることなく、比でダイレクトに距離を求める、という3点を守れば、実は短時間で完答できます。ただ、この最終の大問に手をつけるときに、落ち着いて取り組めるだけの残り時間があったかがカギでしょう。

設問(1)はB君がA君からボールを受け取るまでに2人が進んだ距離の比が15:8であることから、比の7が60mにあたるので、比の8の距離が求められます。

設問(2)は、まず「BC間の距離=B君がボールを受け取ったときのC君との距離」という当たり前のことに気づけたかどうか。あとは設問(1)と同様に、B君が走った距離とB君がボールを受け取ってからC君が歩いた距離の比が15:8であることから、比の8が891_7mにあたるので、比の7の距離が求められます。

設問(3)は、A君とD君の2人だけで考えるのがわかりやすく、処理しやすいでしょう。実際はA君⇒B君⇒C君⇒D君とボールが手わたされていますが、A君がずっと走り続けてD君にボールをわたしたと考えるわけです。A君が走った距離とD君が歩いた距離の比は15:8であることから、比の7がAD間の距離240mにあたるので、比の8の距離が求められます。それをDE間300mからひけばD君の走った距離となります。

合否を分けた一題

冒頭で述べたように、今年度は従来の桜蔭算数の特徴である「処理量が多く解きにくい問題」「ミスを誘発する問題」が並び、受験生にとっては制限時間内に全問答えまでたどりつくのは困難です。設問数14のうち、桜蔭算数の特徴に合致するⅠ(2)②、Ⅱ(1)(2)、Ⅳ(3)、Ⅴ(2)(3)の6問の正答率が合否の分かれ目でしょう。このうち2~3問拾えれば合格圏内です。もちろん、その他の設問を全て得点できていることが前提ですよ。

その桜蔭算数の特徴に合致する6問のうち、2015年度の合否を分けた一題として、Ⅳ(3)を取り上げます。

Ⅳ(3)

上下ひっくり返すと同じ立体になるものがあることに注意しながら、5の円柱の位置に注目し、場合分けして調べ上げるのが最短距離でしょう。

が上から1番目のとき
0通り

が上から2番目のとき
1番目は。 それぞれ3番目~5番目の置き方が1通りずつあるので、以下の4通り。

    
    
    
    

が上から3番目のとき
1番目・2番目は1・2、1・3、1・4、2・3、2・4、3・4。 それぞれ4番目・5番目の置き方が1通りずつある。しかし、上下ひっくり返すと同じ立体になるものがあるので、以下の3通り。

    
    
    
      ←      と同じ
      ←      と同じ
      ←      と同じ

が上から4番目のとき
が上から2番目のときにできた立体の上下ひっくり返したものしかできないので、0通り。

が上から5番目のとき
が上から1番目のときにできた立体の上下ひっくり返したものしかできないので、0通り。

よって、全部で7通りになります。
ただし、解答らんに記入する際に、問題文中の指示(アはオより大きい)にしたがう必要があるので、解答は

    
    
    
    
    
    
    

H15武蔵中の「大きさの異なる5枚の円板を重ねる問題」、H16西武学園文理中の「背の高さが異なる5人が1列に並ぶ問題」のような類似問題を解いた経験の有無が正答率に影響したと思われます。

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