以上3点がきちんと出来れば、スピードと正確さは自ずと付いてきます。
…と、ここまで進めてきて、お気づきの方も多いかもしれません。桜蔭中学の理科対策は、非常に基本的なことばかりなのです!書いているこちらも、低位生向けのアドバイスだったかしらと勘違いしそうになりました。しかし、これらを6年生に進級するまでにほぼ仕上げてくるのが、桜蔭中受験生です。6年生以降は問題演習を繰り返し、処理スピードを一層上げて行くことがメインになります。
SAPIX以外の塾は、6年の夏休み前まで新しい単元の学習が続きますから、基礎知識の完全マスターに関してはそこまで掛かります。けれど、少なくとも5年生までの範囲に関しては、6年に上がるまでに完璧にしておきましょう!
では、実際に受験ドクターで行っている方法についてお話してまいります。
他塾と掛け持ちをしているドクター生の場合、まず塾でやっている単元とは違う範囲(既習範囲)の問題演習をあえて行います。上記「基礎知識の完全マスター」で述べた、「暗記モノは常に回す」の部分です。ここで本質の理解に不備が見つかることも少なくありませんので、理解しきれていない部分の解説を行い、必要な単元では作図の訓練をさせながら、知識の定着を図ります。一方で、「計算力の強化」「比や逆比の関係をイメージや感覚(センス)で掴む」という部分は、算数の範囲になってきますので、算数の担当講師と連携し、計算量を増やすなり、比の先取りをするなりの対策をして行きます。これが5年生の話です。この際、全単元終了が6年生の夏前になる四谷大塚生や日能研生は、生徒の状況に応じて、単元を先取りしていくこともあり得ます。SAPIX生の進度に合わせる(もしくは近づける)という事です。実際には、SAPIXの授業スピードはかなりハードですので、無理に全員がそのスピードにする必要もありません。あくまで、それまでに塾で終えている範囲の完全マスターが最優先事項です。これで基本的な処理力を身に付けた上で、6年生の2月を迎えます。
6年生前半は、まだ残っている単元・埋め切れていない穴をフォローしながら、処理力の向上を図ります。具体的には、SAPIXの『コアプラス』や四谷大塚の『四科のまとめ』、シグマベスト『最高水準ノート』のポイントやチェックテストのページなどを利用して基本事項の総ざらいを行います。この時点ではあくまで“処理力向上”が狙いです。ひと通りの“暗記”は既に出来ていることが前提ですので、テキストは数冊併用して、切り口や問われ方が変わっても迷いなく答えられるようにしていきます。進度の早い生徒は、この辺りから少し高度な問題演習に入って行けるでしょう。前述の『最高水準ノート』や姉妹テキストの『最高水準問題集』、四谷大塚の『実力完成問題集』などを使用することが多いです。
掛け持ちをせずにドクターに通っている生徒も基本的には同様の手順で授業を進めますが、最初の単元学習でより効率的な進め方をすることが可能です。例えば、予習シリーズでは5年上の第9回で「てんびんとばね」という単元がありますが、その後1年以上経って6年上の第12回から「ばね」「浮力」「てこ」「輪軸と滑車」といった力学分野の単元が続きます。ですが実際は、てんびんとてこは(もっというと輪軸と滑車も)同じものですので、モーメントの考え方を使って、一緒に学習してしまった方が理解を深められます。同様に、5年下の第4回で学ぶ「豆電球の回路」では、電圧や電力の考え方を抜きに、電池や豆電球の並び方から明るさを判断させていますが、上位生にとっては、6年上の第8回に学ぶ電圧×電流=電力の考え方や電熱線の回路を一緒に学んでしまった方が分かりやすい筈です。こういった部分で、細かく先取りをしながら進めていきます。
6年生の夏期講習以降は、過去問演習と過去問の類題演習を繰り返します。ここで、計算問題や記述問題も処理スピードを上げて行きます。
実は以上に述べた事だけで、もう桜蔭理科の対策に不足はありません!…とはいっても、最後に出てきた「計算問題」と「記述問題」について、不安を感じている人も少なくないと思います。という訳で、以下ではその2つについて述べてまいります。
繰り返しになりますが、難問・奇問の類は出題されません。本質的な考え方をきちんと理解していて、標準的な問題が解ければ何も怖いことはないのです。上記「スピードと正確さを身につけるために」の「計算力の強化」「比や逆比の関係をイメージや感覚(センス)で掴む」で述べた計算力とセンスが身に付いていれば自信を持って立ち向かえるでしょう。
確かに、力学分野は少々取っ付きにくい所かもしれませんが、「分からない」と感じている時は、大抵基本の考え方を良く理解出来ていないままテクニックだけで解こうとしている時です。ところが、大抵の生徒はこのことに気付かないであれこれと迷走してしまいます。
これについては、講師が生徒の理解度を見極め、必要であれば本質の解説を繰り返さなければなりません。集団授業ではなかなか目の届き難い所ですが、受験ドクターでは個別指導の利点を活かし、こういったフォローに細かく配慮しています。
きちんとした論理関係を追えれば問題ありません。つまり、桜蔭レベルの国語の問題に取り組めるのであればこの程度の問題になんら不安を覚える必要はないということです。
え?国語に不安がある?…それは国語の先生に相談した方がいいかもしれませんね。桜蔭中学では理社よりも算国の方が負担は大きいです。理科に関しては、基本的な知識問題と計算さえ出来れば、記述対策は算国の後に回して貰って構いません。
また、不安を鎮めるために問題演習をしておきたいのであれば、駒場東邦の理科の問題を、記述の部分だけピックアップしてやってみるのが良いでしょう。
あまりに基本的すぎる内容に驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。けれど、これが女子の最高峰、桜蔭中の理科です。何度も繰り返しますが、このような内容ですから、理科で受験生の間に合否の分かれ目になるような差は生じ得ません。社会も同じ状況です。平均点は発表されていませんが、受験者平均と合格者平均の間に大きな差はないのではないでしょうか。しかも、8割~9割を取る生徒も多いと思われます。「理社はほぼ完璧にして」「その上で算国で差をつける」ことが合格のパターンです。