基本的な知識と考え方を完璧にマスターした上で、処理力を極限まで上げて行くことが命題となります。
これは出題内容が平易な分、「ミスしたら負け」というサドンデスの様相を呈するためです。
では、具体的にどういった対策を立てることが可能か、実際に受験ドクターで行っている対策も合わせて、説明していきます。
女子の最高峰、桜蔭中でのスピード勝負という事で、ハイレベルの問題を短時間で解く訓練をしようとしてしまいがちですが、まずは基本的な処理力を備えていることが大前提です。そしてこれは、6年生になる前にある程度完成させておくことが望ましいです。
処理力というとやや漠然としていますが、具体的には以下の3点に留意することでクリアできます。
傾向分析の項でも述べましたが、知識問題で悩んでいる暇はありません。「あれ、どっちだったかな…?」なんて思っている内に時間は無情に過ぎて行っていまいます。勿論、緊張ゆえの度忘れということもあるでしょうが、そういう場合は一旦飛ばして、全て解き終わってから戻った方が効率的でしょう。とはいえ、そういった問題がいくつもあるようでは困りますし、受験生本人も心理的に焦ってしまったり追いつめられたりして、他のミスを誘発しかねません。やはり、基本的な知識は条件反射的に答えられる位身に染み着かせておくべきです。
これは塾のテキストをカリキュラム通りにやっているだけでは不十分です。順々に単元をこなしている内に、前の事を忘れてしまうからです。忘れること自体は仕方のないことです。しかし、忘れっぱなしにしてしまうのはいけません。塾で今やっている範囲以外も、暗記モノは常に回しておくようにして下さい。覚える→忘れる→覚えなおす…を繰り返すことで、知識は定着しますし、暗記力自体も向上します。やり方はいろいろあります。紙に書いてトイレに貼っておく・フラッシュカードを利用して通塾時間に見る・テキストを音読する…等々。人によっては、音読したものをテープに吹き込んで聞いたりもします。そして、この時大事なことは、きちんと覚えているかどうかチェックする、という事です。フラッシュカードを使っている人は、覚える作業とチェック作業を同時にしていることになりますが、ほかにもオレンジペン+赤シートを使う方法もありますし、あるいは塾の宿題等でなかなか手間が掛けられないということであれば、文庫サイズの暗記用テキストが市販されているので、それらを利用しても良いでしょう。時間が取れるのであれば、基本的な問題~標準的な問題に取り組むに越したことはありません。
因みに、この“知識”の中には、“基本的な考え方(本質)”というのも含まれています。当然分かっていることとは思いますが、ただ単に単語や数字を丸覚えする行為は全く無意味です。後にも述べますが、図を自分で書きながら本質の理解を深めて行って下さい。
次にすべきなのは、圧倒的な計算力の習得でしょう。桜蔭中学では、理科に限らず算数においても、相当の馬力を必要とする面倒な値の計算がしばしば出題されます。こういった計算に怯まず、かつ正確に進められるだけの力が桜蔭中合格の必須条件となるわけです。「ややこしい計算ほど燃える」なんて余裕を持てる位の計算力を6年生になる頃には付けておいて下さい。(具体的に言うと、小学校のテストの残り時間に余興として2の100乗を正確に計算できる位です!←経験談)
本来、これは低学年からの着実な積み重ねで身に付けるべきものであり、あとは各塾で配布・販売される計算練習用のテキストや普段の問題演習で自然と強化されてくる筈ですが、力不足に思い当たるのであれば、市販のテキストを併用する等の対策も必要でしょう。
計算練習は量をこなすことも勿論ですが、“計算の工夫”や“良く出てくる数字の倍数を記憶すること”を意識するかしないかが分かれ目になります。
“サドンデス”の桜蔭中学理科においては、一問の計算ミスも許されないことを肝に銘じましょう!
これも計算力と繋がっている話になりますが、前項が左脳の働きに関係しているのに対し、本項は右脳の働きに関係しており、異質な話になるため項目を分けました。
狙われやすい力学や化学の計算問題は、基本的に比例式で処理できます。しかし、一々比例式を立てて“内項の積=外項の積”で計算していては、いつまでたっても時間の短縮は図れません。直接分数の式に変換する力は必ず身に付けておくべきでしょう。また、簡単な値であれば、態々式を立てなくても数字が出てくるようにするべきです。
この時、正比例なのか反比例(逆比の関係)なのかという判断は、一瞬で付けられるようにしておくのが必須です。そしてその際に“理屈”は不要です。勿論、理屈の全く分かっていない人にこの一瞬での判断は無理だとは思います。理屈は一旦消化した上で、イメージ力と感覚を使って下さいという意味です。これは知識と技術を兼ね備えたレーサーが、猛スピードで疾走する中、一瞬でコースを選択し、ハンドリング、アクセルワーク等を判断するのに似ています。低学年のころから、リボン図や円グラフなどで分数や割合・比をビジュアル的に捉えている生徒はこの辺りが非常にスムーズです。つまり、図を描ける生徒は処理力が高いという事です。4・5年の内はしつこい位に図を描いて下さい。(実は比や割合に限りません。桜蔭中学の特徴である天体の動きの問題も、図を何度も描いて理解を深めて行くべきです。)それをしていれば、6年になる頃には図を描かなくても脳内で処理が出来るようになります。
通常、カリキュラム上で比を習うのは5年後半ですが、先取り学習をして早めに慣らしておくのも一つの方法でしょう。