Ⅰ | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 B 問6 A |
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Ⅱ | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A |
Ⅲ | 問1 B 問2 (1) A (2) A 問3 (1) A (2) B (3) A |
Ⅳ | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A |
Ⅴ | 問1 B 問2 B |
A…桜蔭合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2020年度の桜蔭中の理科は、例年通り基本的知識と原理原則に則って考察する力、そして的確な処理能力を問う問題が中心でした。また、全体的に難易度は昨年度よりやや高い印象でした。
例年、4分野から1題ずつの出題であることが多いのですが、本年度は大問5題で、環境問題1題、生物分野1題、化学分野2題、物理分野1題で、地学分野は環境問題に含まれる形での出題でした。
環境問題は、大気中の二酸化炭素濃度に関する問題。
化学分野の問題は、金属の性質と密度に関する問題と、氷の融解に関する問題。
生物分野の問題は、植物の植生に関する問題。
物理分野の問題は、てんびんばかりについての問題。
環境問題は、2017年にも大問1題として出されており、第5の分野としてしっかり取り組んでおく必要があります。その際、環境と生物の関係、時事的話題、各国の取り組みなど社会科的知識に関連づけて理解を深めておくことが大切です。また、ふだんから表やグラフの統計資料にふれ、そこからどのようなことが読み取れるかを家族で議論するなど、ものごとを掘り下げて考える機会を持つように心がけると良いのではないでしょうか。
もう一つのポイントは生物分野で、調査や実験結果のデータをグラフや表から読み取り、適切に処理し、考察する力をためすものが毎年出題されています。やや詳しい知識を問われることもあるので、力を入れて学習しておくことをお勧めします。
化学・物理分野は、リード文にある条件にしたがって処理すればよい問題が中心ですが、根本原理の理解を確認する設問も含んでいます。
問題構成は、大問5題、小問40問。
解答形式は、記号選択が21問、言語が10問、記述が1問、数字が8問。
言語は、ごく基本の知識ですが、時事的内容で社会科の分野にまたぐものもありました。
記述は、1行程度の形式でしたので、桜蔭受験生ならすんなり書けたのではないでしょうか。
記号選択が減って、数字を答える問題が増えています。どれも計算が必要な問題で、昨年度に続いて増加傾向にあり、ミスのないよう落ちついて素早く処理する必要がありました。
(環境)大気中の二酸化炭素濃度に関する問題です。
地球温暖化は、生態系をはじめ、農業、漁業、経済活動に及ぼす影響が懸念され、自然災害のリスクも大きくなってきていると言われています。二酸化炭素濃度の変化のグラフは、ほとんどの生徒が目にしたことがあるはずですが、ここでは、細かい読み込みができているかどうかを問う問題が中心となっています。
二酸化炭素の放出源は、生物全般の呼吸と、化石燃料の消費と考えられます。どちらも、陸地の多い北半球でさかんなため、全体に、北半球の方が南半球よりも二酸化炭素濃度が高くなります。その上で、植物の光合成による二酸化炭素濃度の減少を加味して考えると、その影響も北半球の方が大きく、北半球が夏の時期に、最も二酸化炭素濃度が減少するであろうことがわかります。
図3は、炭素の移動のようすです。ここで、実際に移動しているのは、炭素を含む、二酸化炭素や有機物です。二酸化炭素は、呼吸によって排出され、光合成によって吸収されます。Aは、この両方を行っているので、植物とわかります。Bは、植物から有機物(でんぷんやたんぱく質など)を取り込むので動物とわかります。Cは、AやBから得た有機物(排出物や遺骸)を分解するので、菌類・細菌類とわかります。
(1)植物の光合成を示す矢印は、大気から二酸化炭素を得ている③です。
(2)Cの菌類・細菌類の分解活動によっても、二酸化炭素が放出されます。
(3)北半球の低緯度は赤道に近いので、一年中気温が高く日光も十分当たる環境といえます。したがって、生物活動の変化も小さいと考えられます。
(4)南半球は北半球に比べて陸地が少ないので、季節による生物活動への影響も少なくなります。
Xは、1年のうちの変化が最も大きいので、北半球中緯度の綾里です。Yは、Xより小さいものの、二酸化炭素濃度が増える時期と減少する時期がほぼ一致することから、北半球低緯度のマウナロアとわかります。Zは、季節による変化が最も少なく、XやYと比べると、二酸化炭素が多い時期と少ない時期が逆転しているので、南半球のグリム岬です。
北半球が夏の時期、二酸化炭素濃度は減少します。これは、春分~夏至~秋分の日にあたるので、cが3月、dが6月、aが9月です。
全体に増加傾向にあるグラフにおいては、減少している時期に着目すると、分かりやすくなります。
「京都議定書」や「パリ協定」は、地球温暖化問題では、必ずチェックしておくべき基本の知識といえます。
(化学)金属の性質と密度に関する問題です。
時事的内容を含んだ問題になっています。金属に関する基本の知識と、密度の考え方にそって数的処理を的確に行えるかが問われています。
「都市鉱山」は、どちらかというと社会科で学んだ言葉かもしれません。リサイクル金属でメダルを作ることは、大きな話題になりました。
1円玉は、100%アルミニウムです。よく使われる金属の中では、軽いといえます。
磁石につく金属ですから、鉄です。これも、基本の知識です。
金メダル1つに必要な金は6gですから、6÷0.05=120より、120台の携帯電話が必要です。
銀メダルは銀100%なので、550÷10.5≒52.4より、体積は約52.4㎤です。
金メダルには、銀メダルと同じ量の銀が使われているので、銀だけの体積は52.4㎤です。これを金にかえると、19.3×52.4≒1011(g)なので、はりつけられている金とあわせて、1011+6=1017(g)になります。設問の流れに沿って、無駄なく処理します。
(生物)植物の植生に関する問題。
メインディッシュの生物です。桜さんの住む地域には、森林だけでなく、湿地や水辺もあるようです。都市部に住んでいると、めったに触れることのない自然にあふれています。ぜひ、家族旅行や林間学校で自然にふれる機会があれば、植生に興味をもち、積極的に調べ学習に取り組んでおくとよいでしょう。
3種類の樹木の組み合わせである6通りから選ぶ問題です。落葉樹と常緑樹の区別だけでなく、さらに人工林(植林された樹木:スギ・ヒノキ・カラマツ・アカマツなど針葉樹が多い)と自然林(古くからある樹木:スダジイ・アラカシなど広葉樹が多い)の区別もしなければなりませんでした。
外来種についてはよく出されるので、しっかり覚えておくとよいでしょう。
スギナはシダ類で、日本に古くからある植物です。春には地下茎からツクシが出て、胞子を放出します。
(1)落ち着いて①の文を最後まで読んで考えます。「土ほりや草刈りによって土地が開ける場所」には、生存競争に強い外来種が増えやすいと考えられます。そのような場所では、在来種のうち、生存競争に弱い絶滅危惧種が数を減らします。
(2)落葉樹と常緑樹のちがいに着目します。落葉樹は、冬に葉を落とすので、その期間だけ森の内部まで太陽の光が届きます。ここに、冬の太陽の光を得て育つ植物が育つなど、多様性が増します。
(3)コンブやワカメなどの海藻は、水中で生活するためじょうぶな茎が必要ありません。水の吸収や排出はからだ全体で行い、根・くき・葉の区別がありません。おぼえておくとよいでしょう。
(物理)てんびんばかりについての問題。
標準的なてんびんばかりの問題です。計算が中心なので、すばやく確実に処理することが大切です。
皿とおもりがつり合います。棒をつるすひもの位置を支点としたとき、皿の重さによる左回りのはたらきと、棒とおもりの重さによる右回りのはたらきが同じになるので、45×15=15×15+100×aより、a=4.5(cm)とわかります。
10gごとの印の間隔を□とすると、左回りのはたらきが、10×15=150増えるとき、右回りのはたらきも100×□ だけ増やすことになるので、□=150÷100=1.5(cm)
支点からの距離は、はじめのa=4.5cmから、10gごとに1.5cm増えます。したがって、重さ180gのものを皿にのせると、4.5+1.5×180/10=31.5(cm)と計算できます。
最大の重さを△gとすると、問3と同様に考えて、4.5+1.5×△/10=45 が成り立つので、△=270(g)とわかります。
最大の重さを〇とすると、支点を中心としたつり合いから、(〇+45)×15=15×15+150×45 が成り立つので、〇=420(g)となります。
問4と問5の結果を比べると、おもりの重さが50g(150-100)増えると、量れる重さの最大値が150g(420-270)増えていることがわかります。さらにおもりの重さを50g増やして100gにすると、量れる重さの最大値もさらに150g増えて300gになると考えられます。
(化学)氷の融解に関する問題。
何とも楽しい実験です。空のコップよりも、「水の入ったコップに入れた氷のほうが早くとけます。」とあり、このことを手がかりに考えを進めます。
Cは、始めから最後まで氷が水につかっているので、最も早くとけます。AとBでは、とけた水が穴から出て行きますが、水が残る穴から下の部分は、Bの方が大きいので、AよりBの方が早くとけます。
これは、空気より水の方が部屋の温度を伝えやすいことによるものです。たとえば、90℃のふろにつかることはできませんが、90℃のサウナには入ることができるのも、そのせいです。知っている知識に結びつけて考えるとよいでしょう。
→合否を分けた一題参照。
エネルギー変換の問題は、中学校の理科や高校の物理基礎で学ぶ範囲です。変換できるということは、同じ次元の値であり、力学的エネルギー・熱エネルギー・電気エネルギーを、共通の単位で表すことができます。
ここで取り上げられているモーターを発電機として利用する原理は、手回し発電機と同じものです。手回し発電機は小学校の教科書で扱われているため、中学入試でしばしば取り上げられます。しかし、根本原理を理解しようとすると、「電磁誘導」の法則を持ち出さなければならないので、小学校では、実験の体験を出発点とします。
この問題では、実験をしっかり行ってきたかということが、ひとつのポイントとなっています。経験と知識を重ね合わせて、はじめて解答できるという点で、最も難易度が高い問題といえます。
氷が半分ほどとけたときの水の高さは、穴の位置で決まります。次に、水の高さから、とけ残った氷のようすを考えます。
「穴の高さまで、水が残る」
「水につかった部分は、つかっていない部分より氷が早くとける」
どの条件においても、この2つの手がかりに照らして考えぬくことができたかどうかが、合否を分けたのではないかと思い、この一題を選びました。
A:とけた水はペットボトルから出て、穴の高さ(下から1cm)より下の部分にだけ残ります。水につかっている下から1cmの部分は、それより上の部分より氷がとけるのが早く、細くなっています。
B:とけた水はペットボトルから出ますが、穴の高さ(下から10cm)より下の部分に残ります。水につかっている下から10cmの部分は、それより上の部分より氷がとけるのが早く、細くなっています。
C:水の高さは、水がとけはじめてから最後まで、下から15cmで一定です。このとき氷は、一部を水位の上に出して浮きます。