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理科の合否を分けた一題

桜蔭中入試対策・理科の合否を分けた一題(2017年度)

難易度分類

問1 A  問2 A  問3 A  問4 A
問1 A  問2 A  問3 A  問4 A  問5 B
問1 A  問2 A  問3 A  問4 A  問5 A  問6 A
問1 A  問2 A  問3 A  問4 A  問5 A
問1 A  問2 A  問3 A  問4 A  問5 B

A…桜蔭中学合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

2017年の問題は、昨年度に引き続き、さらに易しくなっています。桜蔭合格を目指す受験生にとっては、あまりにもあっさりと解けてしまうので、これでよかったのか気になるくらいだったのではないでしょうか。つまりは、高得点をとってあたりまえ。理科の得点をしっかり確保し、他の教科を実力通りに重ねられるようしておかなければなりません。①確かな基本知識、②処理スピード、③計算力、の3つの力が必須です。
問題構成は、4分野から大問5題、小問43問。
解答形式は、言語が5問、作図が1問、数字が5問、記述が0問。記号選択が32問と大部分をしめています。記述がなく、作図も、数値データをグラフにポイントするだけの平易なものでした。
全体に、実験や観察を重視し、与えられた情報の処理と論理的な考察を求める問題を中心とした、桜蔭らしい内容といえます。

問題別寸評

問1

実験データの読み取りと、対照実験の考え方を問う問題です。
(a)「おもりの重さ」を変えたときのふりこの周期の変化を確かめるときは、「引き上げた角度」と「ふりこの長さ」のどちらも同じCとEを選びます。「おもりの重さ」を大きくしても、10往復するのにかかる時間は変わりません。
(b) 「引き上げた角度」を変えたときのふりこの周期の変化を確かめるときは、「おもりの重さ」と「ふりこの長さ」のどちらも同じAとCを選びます。「引き上げた角度」を大きくしても、10往復するのにかかる時間は変わりません。
(c) 「ふりこの長さ」を変えたときのふりこの周期の変化を確かめるときは、「おもりの重さ」と「引き上げた角度」のどちらも同じAとBを選びます。「ふりこの長さ」を大きくすると、10往復するのにかかる時間が長くなります。
ふりこの周期は「ふりこの長さ」で決まることを知っていれば、表1の数値は、確認程度ですみます。

問2

おもりをはなす高さが高いほど、Qを通るときのおもりの速さは速くなります。ふりこの長さが最も長いBとGのうち、引き上げた角度が大きいGを選びます。

問3

これも、よく目にする問題です。図2のPとRは同じ高さなので、ふれる糸の長さが短いRの方が角度は大きくなります。また、P→Qのふれより、Q→Rのふれの方がふれ幅が小さいので、道のりQRは、道のりPQより短くなります。

問4

ふりこの長さが120cmのふりこが10往復にかかる時間は22.0秒、ふりこの長さが30cmのふりこが10往復にかかる時間は11.0秒です。10往復のうち、半分は120cmのふりこ、半分は30cmのふりことしてふれているので、22.0÷2+11.0÷2=16.5 より、16.5秒かかります。

(生物)渡り鳥が渡りを行う方向に関する問題です。
実験の結果を整理し、別の実験の結果を予想します。[実験1]で、ホシムクドリの若鳥と成長のちがいを確認します。[実験2]~[実験5]では、どの操作が何の条件にあてはまるのかを把握しながら整理し、結果と照らします。

問1

基本的な知識問題です。ヒヨドリは漂鳥、ツバメは夏鳥、ハクチョウは冬鳥、ハトは留鳥です。

問2

[実験1]の図2では、成鳥だけをA地点以外の場所から放しても、越冬地にもどってくることがわかります。図3では、若鳥だけをA地点以外の場所で放すと、Aから越冬地までの方位(南西)と同じ方向に飛んでしまうことがわかります。このことから、ホシムクドリの若鳥は、もともと南西の向かって飛ぶ能力があるが、目的地が南西の方向にない場合は、越冬地にもどれないこと。経験を重ねた成鳥は、放した場所にかかわらず、越冬地にもどることができるとわかります。ウのように、成鳥が南西の方向に移動する能力を失うことはありません。

問3

[実験1]から、A地点に住む若鳥は、住む場所が変わっても、南西に向かって飛ぶ性質があることをおさえておきます。また、図4から、時刻Tに容器にあたる太陽光は、南東からさしていると考えます。[実験2]~[実験5]の条件と結果をまとめると、下の表のようになります。

ア:[実験2]と[実験4]を比べると、周囲の景色が見えても見えなくても、ホシムクドリの向きは変わらないことがわかります。
イ:[実験2]と[実験3]を比べると、太陽光の方向が定まらない場合は、ホシムクドリの向きも定まらないことがわかります。
ウ:[実験2]と[実験5]を比べると、磁石で磁場が変えられても、ホシムクドリの向きは変わらないことがわかります。
優先しているのは、太陽光の方向であるといえます。

問4

南東からの太陽光のうち、⑤の窓からだけ、容器の中に太陽光がさしこみます。他の光は、鏡で反射して、はじかれてしまいます。

問5

[実験2]~[実験5]の結果から、[実験6]の結果を予測します。
最も桜蔭らしい問題であり、合否を分けた一題で取り上げます。

太陽が南中したとき、かげが最も短くなります。Aの方位に重なるかげが最も短いことから判断します。

問2

日本の正午は、日本標準時の明石市(東経135度)の南中時刻です。この地点は、東経140度なので、明石市より東に位置するため、南中時刻は正午より早くなります。

問3

春分の日の太陽の南中高度は、90°-(その地点の北緯) です。90°-35°=55°なので、45°と63°の間の長さになります。

問4

太陽のかげは、西から北側を通って東へと移動します。図4の「12」の目盛りが北ですから、S1は午前の時間です。

問5

図4のS2のかげが、南側にあることから、このときの太陽は、真東より北寄りからのぼったことがわかります。

問6

夏至の日は、太陽が出ている時間が最も長いので、A→Dの道を通ります。
図6の棒は北極星の方向、ばん面は図5のB→Eの道の面と平行です。したがって、角度aは春分の日の南中高度と一致します。太陽がとうめい半球上を動く速さは一定なので、ばん面の目盛りも等間隔にします。また、太陽が動く面とばん面は平行なので、同じ日のかげの長さは同じになります。この日時計は、ばん面にかげができる、春分の日から秋分の日までの時期に使用することができます。秋分の日から春分の日までは、ばん面の裏に棒を立てることで、使用できます。

(総合)発電とエネルギーに関する問題。
エネルギーをテーマに、分野をまたがった総合的な問題です。発電に関する基本的知識があれば、迷うことなく解答できる内容です。桜蔭は、環境問題にからめた出題が多くみられます。教科書でも丁寧に扱われている分野なので、取りこぼしのないようにしておきましょう。

問1

重要語句です。漢字で正確に書きます。

問2

火力発電は、化石燃料を燃やして、その熱で水を水蒸気に変えて、タービンを回し発電します。化学エネルギー→熱エネルギー→運動エネルギー→電気エネルギー の順に変換しています。

問3

選択肢の問題ですが、すべてを選ぶため、ミスのないように注意します。
ア:化石燃料は、地球がつくり出す速度より、人間が使用する速さの方が速いので、いずれ枯渇する燃料です。
イ:火力発電は、水力発電・太陽光発電・風力発電などとちがい、特に季節や天候の影響を受けることはありません。
ウ:日本は、化石燃料のほとんどを輸入にたよっています。
エ:燃料の燃焼を止めれば、発電を止めることができます。比較的コントロールしやすい発電方法です。
オ:燃料の種類によっては、有毒ガスが多く発生する場合があります。

問4

地球上のエネルギーのおおもとをたどると、太陽エネルギーに行きつくことを理解しておきましょう。
水力発電は、川の水の位置エネルギー→タービンの運動エネルギー→電気エネルギー の順に変換しています。

問5

LEDは、電気エネルギーを直接光エネルギーに変換しているので、白熱電球と比べて、エネルギーのむだが少なくなっています。

(化学)溶解度に関する問題。
これも、よく目にするタイプの問題です。実験の手順を正確に把握し、整理することで、無駄な計算をすることなく、すばやく解答することを目指します。手を動かしながら確実に処理しましょう。

問1

表1のデータを、グラフに書き込むだけの問題です。単純ですが、実験結果をまとめる際には、確実に行わなければならない作業でもあります。ミスのないように注意しましょう。

問2

図1のグラフから、目分量で読み取ります。

問3

水200gのうち、20gが蒸発して180gになります。蒸発した20gの水にとけていたBが固体となって出てきます。
7.1×20/100=7.42(g)

問4

水120gの場合に換算しなくても、40℃の水100gに、A~D50gがとけるかどうかで判断できます。表1から、BとCがとけ残るとわかります。

問5

水の量(150g)は、終始変わりません。それぞれの操作で、固体として取り出した量と水150gにとけこんでいる量を把握します。比較のために、すべての値を計算する必要はありません。

(a) AとDはすべてとけます。BよりCの方がとけ残りが多いはずなので、100-24×1.5=64(g)
(b) 温度によって溶解度が大きくちがうDに着目します。100-32×1.5=52(g)
Cは、80℃で飽和しているので、20℃に冷やすと、(24-5)×1.5=28.5(g)
Aは、20℃でもすべてとけています。
Bは、温度によって溶解度がほとんど変わらないので、少量しか取り出せません。
(c)Aはすべてとけて、ろ紙に固体が残りません。

合否を分けた一題

本年も、Ⅰ・Ⅱ・Ⅴのように、実験や観察から考察を進めて、解いていく問題が中心でした。
考察を進めるにあたって重要なのは、実験結果の情報をどう整理して利用していくかということです。
表の値を比較したり、文章を表にまとめてみたりすることで、不要なデータと、着目すべきデータの見極めができます。うわべだけの理解では対応できない内容をふくむことが少なくない桜蔭の入試問題にあっては、面倒がらずに手を動かすことが、ミスを遠のけ、正答に到達する一番の近道となります。

問5

問4から、太陽光は⑤の窓からのみさしこむことがわかります。⑤の窓の鏡は南北に立っているので、南東からの光が反射すると、南西からさしこむ光となります。
太陽の方向以外の条件が同じ、[実験5]と比較して考えます。

窓から見える景色は異なりますが、問3の結果から、太陽光の方向を優先します。
[実験5]の結果から、ホシムクドリは、太陽光から見て直角に左に向くと考えられます。⑤の窓から入る太陽光は、南西からの方向に変えられているので、それに対して、ホシムクドリは北西を向くと予想されます。

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