Ⅰ | 問1 A 問2 B 問3 A 問4 B |
---|---|
Ⅱ | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A |
Ⅲ | 問1 A 問2 A 問3 B 問4 A |
Ⅳ | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 B 問6 A 問7 B 問8 B |
Ⅴ | B |
A…桜蔭中学合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2016年の問題は、昨年度よりやや易しくなっています。受験生の大部分が高得点をねらってくると考えられることから、引き続き、最後までミスのないように、正確に処理する姿勢が必要です。
問題構成は、4分野から大問5題、小問40問。
解答形式は、言語が8問、作図が1問、数字が5問、記述が1問で、記号選択が25問と大部分をしめています。記述の字数は、昨年度の60字よりさらに長く、80字でした。この傾向は、今後も続くものと考えられます。確実に得点するために、対策をしておいた方がよいでしょう。
内容的には、実験や観察から論理的に考察を進めていく流れになっていて、本年度も、桜蔭らしい考えさせる問題といえます。
(地学)台風および雲についての問題です。
台風の基本的な知識から、風向きの変化を考えます。解りきっている知識であっても、具体的に当はめてみると、すんなりといかないように感じることがあります。知識を知識としてだけでなく、実用に生かせる力を問う問題といえます。
基本的な知識問題です。台風は、熱帯低気圧が発達したものですから、最も気圧が低い中心に向けて、回りから空気が入り込んできます。北半球では、低気圧に吹き込む風の向きは、反時計回りになります。
問1で回答した風向きの図を見ながら、実際に台風が通り過ぎるとき、風向きがどのように変化するかを、考える問題です。台風の中心がAにあるとき、P点は真北よりやや東寄りの位置なので、東からの風がふきます。Bに中心があるとき、P点は真東よりやや北寄りの位置なので、南東の風がふきます。Cに中心があるとき、P点は真東よりやや南寄りの位置なので、南風がふきます。あくまでも、問1で選んだ図をふまえて、実直に考えるのみです。
こちらも、よく知られた台風の特徴ですが、 a の空欄を見ると、問2の結果から考えを進めることを求められているとわかります。問2の図のように、P点の西側を、台風が南から北に通過するとき、P点の風向きは東風→南風(時計回り)に変化します。これは、台風の進む方向に一致するので、風の強さが特に強くなります。論理的に考えた結果を知識で確かめることで、より得点を確実にすることができます。
積乱雲と乱層雲は書けるとして、巻雲と積雲も、漢字でまちがいなく書けたでしょうか。雲の名前は全部で十種類ですから、主要なものはおぼえておくべきということでしょう。
(物理)浮力に関する問題です。
水溶液の密度と卵の浮き沈みの関係を考えます。考え方は極めてシンプルで、計算間違えさえしなければ、確実に正解できる問題です。
単純な計算ですから、ミスのないようにしましょう。四捨五入の桁も、間違いのないように確認しましょう。
表から読み取って解答します。それぞれの表の、「卵の浮き沈み」が、はじめて「浮」になるときに、加えた食塩・砂糖の重さを答えます。
水200㎤(200g)に食塩25gをとかしたときの濃度です。計算間違いのないように、注意しましょう。
表から、問3のときの食塩水の体積は209㎤です。濃度と比重(1㎤あたりの重さ)とを混同しないようにしましょう。
実験から、卵が浮き始めるときの濃度は、溶質によって異なるが、比重は同じになることがわかります。浮力は、濃度ではなく、比重に関連します。選択肢を正確に読み取り、ミスのないようにしましょう。
ア:問2から、浮くときの濃度は大きく違います。
イ:溶かす量が同じなら、濃度も同じはずです。
ウ:問1の結果と、問4の結果を比べます。食塩水の比重が、卵の比重より大きくなったとき、卵が浮くことがわかります。砂糖の場合も、同様です。
エ:溶解度については、実験からはわかりません。
オ:加えた食塩や砂糖の重さが同じであっても、水溶液の体積がちがうので、水溶液の比重はちがいます。
台はかりの示す値=(ビーカーの重さ)+(砂糖水の重さ)+(卵の重さ) です。
(化学)化学変化による液性の変化に関する問題。
市販のホットケーキの粉でつくった生地に、ムラサキイモの粉を入れて焼いたときの色の変化について考えます。
炭酸水素ナトリウムを加熱すると、炭酸ナトリウムと二酸化炭素に分解されます。基礎的な知識なので、間違えることはないでしょう。
5種類の水溶液の液性を、BTB液とムラサキキャベツを使って調べています。
液性 | BTB液 | ムラサキキャベツ | |
---|---|---|---|
食塩水(2㎤) | 中性 | ①緑 | 紫 |
酢(2㎤) | 酸性 | ②黄 | ピンク |
アンモニア水(2㎤) | アルカリ性 | ③青 | 緑 |
食塩水(1㎤)+酢(1㎤) | 酸性 | 黄 | ④ピンク |
食塩水(1㎤)+アンモニア水(1㎤) | アルカリ性 | 青 | ⑤緑 |
食塩水は中性、酢は酸性、アンモニア水はアルカリ性なので、食塩水+酢は酸性、食塩水+アンモニア水はアルカリ性です。ムラサキキャベツの色の変化を覚えていなくても、表の結果から、答えることが出来ます。
80字の記述です。
(1)で、炭酸ナトリウムの水溶液は、赤色リトマス紙を青色にすることから、アルカリ性の水溶液です。
ホットケーキを焼くと、紫色→緑色に変化しています。ムラサキイモの色は、ムラサキキャベツと同じように変化するので、加熱によって、ホットケーキが中性→アルカリ性に変化したことがわかります。
加熱
重曹 → 炭酸ナトリウム + 水 +二酸化炭素↑
(中性) (アルカリ性)
「重曹を加熱すると、炭酸ナトリウムと水が発生する」「重曹をふくむホットケーキは、はじめ中性だったが、加熱してできた炭酸ナトリウム水溶液は、アルカリ性である」「ムラサキイモは、ムラサキキャベツと同じアントシアニンをふくみ、液性によって色が変化する」「アントシアニンは、紫色(中性)→緑色(アルカリ性)に変化する」
以上をまとめます。必要なことばを必ず使用し、ポイントをはずすことなく、筋道の通った表現をすることが求められます。
選択肢問題ですが、ミスをしないよう、注意深く処理します。ホットケーキ自体はアルカリ性ですが、小さく切って使うことで、酸性を検出する試薬として使用することが出来ます。
(a)食塩水は中性なので、緑色のままです。
(b)砂糖水も中性なので、緑色のままです。
(c)レモン汁は酸性なので、ピンク色に変化します。
(d)アンモニア水はアルカリ性なので、緑色のままです。
(e)酢は酸性なので、ピンク色に変化します。
(生物)オナモミの開花実験に関する問題。
開花実験は、よく出されますが、今回は、開花の条件だけでなく、日長の情報の伝達についてにまで発展しています。
一見、難易度の高い問題に見えますが、処理すべき情報はそれほど多くない上に、導入にジャガイモの道管のはたらきを問うことで、考察しやすい構成になっています。
選択肢で迷うようなら、実験結果を表にまとめ、条件を確認してから取り組むとよいでしょう。
実験の結果を推測し、咲く花を書き入れる問題が出されましたが、問題の流れをくみ取り、論理的に考えれば、解答できます。
根から色水を吸い上げるので、茎の道管が赤くそまります。道管は、形成層の内側を通っています。これは、間違うことはないでしょう。
ジャガイモの葉は、先のとがった楕円形に近い形(エ)です。複葉といって、このような葉が奇数枚規則的に集まった形になっています。これも間違うことはないでしょう。
形成層の内側を通る道管は、枝で分かれて葉に入ると、葉の表側になります。これも、確実に解答できる問題です。
【実験2】では、道管を残し、師管をはぎ取っています。根からの水と養分は道管を通ってからだ全体に運ばれますが、光合成によって葉でつくられた栄養は師管を通るため、はぎ取った部分から下へ送ることが出来なくなります。ジャガイモは、栄養分を地下茎にたくわえることでイモができるので、新しいイモができなくなります。これも、容易に解答できる問題です。
【3-1】は、オナモミの開花には、どのくらいの長さの暗期(光のあたらない時間)が必要かを調べる実験です。
実験条件と結果をまとめると、下の表のようになります。
暗期の長さ | 開花 | |
---|---|---|
① | なし | × |
② | 8時間 | × |
③ | 8時間×2回 | × |
④ | 12時間 | ○ |
⑤ | 16時間 | ○ |
③と⑤は、暗期の合計が同じですが、③は開花しないことから、開花には、ある決まった時間(8時間より長く、12時間以下)以上の連続した暗期が必要なことがわかります。十分な暗期が一度でもあると、開花すると考えられます。
【3-2】では、オナモミの体の一部をアルミニウムでおおうことで、日長をどこで感知しているかを調べています。
実験条件と結果をまとめると、下の表のようになります。
おおった場所 | 暗期の長さ | 開花 | |
---|---|---|---|
①(図3A) | 葉一枚 | 12時間 | ○ |
②(図3B) | 葉のつけね全部 | 12時間 | × |
③(図3C) | 葉一枚とそのつけね | 12時間 | ○ |
④(図3D) | 葉のつけね一ヶ所 | 12時間 | × |
①と③で開花しています。その共通した条件は、葉一枚を12時間おおったことです。一枚であっても、葉が決まった時間以上の暗期を感じれば、花が咲くことがわかります。
【3-3】の①では、形成層の外側をはぎ取った箇所を基準に考えると、暗期を感じる葉も、咲いた花も、これより下の部分です。このことから、感知した日長の情報は、形成層の外側をはぎ取った箇所をこえて、上の部分に伝わることはないと考えられます。
つまり、情報は、形成層の外側を通って伝えられることになります。
【3-3】の②では、形成層の外側をはぎ取った箇所を基準に考えると、暗期を感じる葉は、これより上です。したがって、花は、これより上の葉のつけねに咲きます。情報は、下の部分には伝えられないので、一番下の葉のつけねには花が咲きません。
(総合)実験器具に関する問題。
むずかしい問題ではありませんが、正しいものを「すべて」選ぶ選択肢の問題で、確かな知識の裏付けが必要となります。
ア:発生する気体が有毒な場合があるので、風通しは良くしておきます。
ウ:実験器具は実験後に速やかに洗います。
エ:安全メガネは、ふだんのメガネの上にかけます。
オ:目に入ったら、大量の水でよく洗います。様子を見て、必要であれば医師に相談します。
キ:加熱しているときは、試験管の口から気化した物質が出ていることがあるので、のぞき込まないようにします。
ク:分銅は、手でふれず、ピンセットでつまんであつかいます。
コ:顕微鏡は、直射日光があたらない、明るい場所で使用します。
サ:親指でふたをしてふると、液が指に直接ふれるので、危険です。
本年も、Ⅱ~Ⅳのように、実験や観察から考察を進めて、解いていく問題が中心でした。
考察を進めるにあたって重要なのは、実験結果の情報をどう整理して利用していくかということです。
表や図に情報を書き入れたり、文章を表にまとめてみたりすることで、不要なデータと、着目すべきデータの見極めができます。うわべだけの理解では対応できない内容をふくむことが少なくない桜蔭の入試問題にあっては、面倒がらずに手を動かすことが、ミスを遠のけ、正答に到達する一番の近道となります。
ここまで、オナモミの開花実験に関する実験を、いくつか行ってきて、【3-3】が最後の実験となります。
【実験2】では、形成層の外側をはぎ取ると、葉→イモ の流れが阻害されることがわかります。
【3-1】では、開花には、ある決まった時間(8時間より長く、12時間以下)以上の連続した暗期が必要なことがわかります。
【3-2】では、一枚であっても、葉が決まった時間以上の暗期を感じれば、花が咲くことがわかります。
【3-3】の実験を、表にまとめると、次のようになります。花は、葉のつけねに咲きます。
アルミニウムでおおった部分 | おおった時間 | 形成層の外側をはぎ取った箇所 | 一番下の葉のつけね | 二番目の葉のつけね | 三番目の葉のつけね | 四番目の葉のつけね | |
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A | 下から2番目の葉と葉のつけね | 12時間 | 下から二番目のつけねと三番目のつけねの間 | ○ | ○ | × | × |
B | 下から2番目の葉と葉のつけね | 12時間 | 下から一番目のつけねと三番目のつけねの間 | ? | ? | ? | ? |
AとBは、形成層の外側をはぎ取った箇所以外は、すべて条件が同じです。
Aで、花が2つ開花しているので、葉が日長の感知をしているはずです。
ここで、選択肢の文を見ると、すべてに、「感知した日長の情報は…伝わる」とあります。
日長の情報がどのように伝わるのかを考えればいいわけです。
Aの結果を見ると、はぎ取った部分から下の部分で開花し、上の部分は開花していないことがわかります。また、アルミニウムでおおった葉は、はぎ取った部分より下でした。
このことから、はぎ取った部分が、情報の伝達をさまたげていることが予想できます。
つまり、日長の情報は、形成層の外側の部分を通って伝えられるのです。