「合否を分けた一題」があるのかどうかという点は、悩ましいところです。何故ならば、桜蔭中受験生は、理社に関してはほぼ完璧に得点することを求められているからです。 とはいえ、ここで「全部取ってこい!」だけ言ってお終いにするわけにもいきませんので、ビジュアル的に理解することが処理速度を上げるという例を挙げて解説していきたいと思います。
水酸化ナトリウム水溶液と塩酸を用いた中和実験の問題です。
表 実験結果
(A)→(B)で塩酸が20増えているのに伴い、残った粉末の重さが0.4g増えています。
ところが、(B)→(C)で同じく塩酸が20増えているのに対し、残った粉末の重さは0.1g しか増えていません。
このことから、(A)・(B)では水酸化ナトリウム水溶液が過多、(C)・(D)では塩酸が過多であることが分かるので、問1・問2はすぐに正解が出ます。
問3(水酸化ナトリウム水溶液50立方cm中に含まれる水酸化ナトリウムの重量を求める問題)
要するに、塩酸を全く加えなかった時の残った粉末の重さを出せば良い問題です。
問4(水酸化ナトリウム水溶液の濃度を求める問題)
問3で求めた値を利用すればすぐに出ます。
条件の100立方cmを読み落とす人はまずいないでしょうが、念のため注意を呼び掛けておきます。
問5(完全中和時の塩酸の量を求める問題)
比例の関係が成り立つ事を考えれば、すぐに値を求められます。
表だけを見て、すぐに式が立てられない(迷ってしまう・混乱してしまう)のであれば、無理に式だけで出そうとせず、グラフを描くのが近道。
上図のようなグラフを描けば、問3~問5は素早く処理できます。
逆に、このグラフのイメージが日々の演習で身に付いている生徒は、態々描かずともすぐに式が立てられるでしょう
図やグラフを描くことを面倒くさがって、無理に数字だけで処理しようとしてきた生徒はこういった所で少しずつ時間の差をつけられて行きます。
ということは、“四角囲みⅣ”(力学計算)で少し手間取ると時間が不足する可能性も出てくるので、結果的に得点で差をつけられることもあり得るということです。
この完全にパターン的な出題で不要な時間を費やすべきではないのです。
フリーハンドでも構わないので、一瞬でも「アレ?」と思ったらグラフや図を描く癖をつけて下さい。
最初は時間も掛かるでしょうが、最終的には大きな武器を手にできます。