一 | 問一 A 問二 全てA 問三 C 問四 C 問五 B |
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二 | 問一 二つともA 問二B 問三 B 問四 C 問五 C |
A…確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題
今年度の桜蔭中学は説明的随筆文と物語文の二つの構成となっており、例年通りでした。大問一は、「登山」の面白さは旅と同じくその過程の自由さにあり、それを実感できなければ「登山」の魅力は失われるという文章でした。大問二は、中国が舞台の、女性だけが書く文字「ニュウシュ」を通して、女性同士の関係や大切な相手への思いを描いた物語でした。例年通りの、字数指定のない長い記述問題が複数ある桜蔭らしい問題でした。難度も高く受験生にとって厳しい戦いになったことが想像されます。
千差万別。落とせません。
5つとも落とせません。
大変な難問です。まず本文には「エベレスト」という言葉がありません。それなのに、本の題名『エベレストには登らない』にこめた筆者の思いを答えるのです。これには「エベレスト」が何かの象徴であるという発想が必要です。また、筆者は「登山」について肯定的に書いています。だから「エベレスト」と「登山」の違いは何なのかを対比の形で答えることが求められていると考えられます。さらに、この問題を難しくしている別の要素として、「☆から★までの文章をふまえて」という問いの条件があります。この範囲以外の言葉を使った方が説明しやすいのですが、それをしてしまうと減点の対象になる可能性があります。
「登山」が「自由の感覚」を有していると本文で書いてあることの対比でエベレストを考えると、目的が山頂に登ることだけであるという自由の感覚がないことだと言えます。あとは「登山」における「自由の感覚」について具体的に書くことで解答欄は埋まります。
「コペルニクス的転回」の意味を知っていればやや有利になりますが、たとえ知らなくても線部の直前の内容が「コペルニクス的転回」に当たるのだということは想像がつくはずです(ちなみに「コペルニクス的転回」の意味は、天動説から地動説に変わったように、考え方が180度変わることです)。この直前の内容を、問いの条件にあうように、筆者の言おうとしていることとして具体的に説明することが求められます。その内容は線部の直後から書かれだします。冒険を劇的に変えるGPSを使った時には得られないこと、これを明らかにしていくことで答えとなります。難問です。
「もどかしさ」とは「思った通りにならずいらだつこと。じれったい。はがゆい。」という意味です。もどかしさの対象、つまり筆者の思った通りにならなかったことを説明することとその理由を答える問いです。理由部分は、線部の後ろにあります。GPSを使ったことにより北極での旅で得られなかったものがあったからです。線部の後ろに触れていれば部分点がもらえるものですが、比ゆ的な表現を言い換えるなどの作業も必要なため、やや難しい問題だと考えます。
1目を輝かせて。2目を丸くして。どちらも落とせません。
小鳥のさえずり。落としたくはない問いですが、語彙問題は知らないとどうにもならないものです。
決して書きにくい問いではありませんが、「喜び」の対象が二つあることに気づけないと正解にはなりません。解答欄の大きさもヒントになります。喜びの対象の一つめはニュウシュを自分だけで書けた達成感としての喜び、二つめは自分だけでかけたことで今後は自分の思いを自由に表現できることへの喜びです。半分は取れるが、正解の答えを書くにはやや難しいと考えました。
合否を分けた一題で詳しく説明します。
チャンミンのお母さんは、イーレイおばあさん(チャンミンのお母さんの義理の母)から「ハル族の女たちは文字を持たない」と断じられています。しかしお母さんは文字を書いています。これらから、お母さんは結婚した嫁ぎ先で辛く苦しい思いをしていたこと、そしてそこでの救いになったもの、それが「ニュウシュ」だったということが分かります。新たに知らない家に嫁いでいくシューインに、先輩として辛く苦しいときにどうすればよいかを伝え、これからの生活を乗り越えてほしいという願いを持っていたのです。難問だと考えます。
今回は大問二の問四を取り上げます。「重さ」には二重の意味があります。その両方に触れられるかが合否を分けたポイントと考えました。
―線部Bについて、「愛おしい重さ」とはどういうことですか。説明しなさい。
「どういうこと」という問題は、言い換えが求められています。
まずこのことを知っておいてください。
「重さ」ということですぐに着目できるのは、
―線部の直前の行にある「まあ、こんなに」という会話文です。
たくさんあった三朝書を抱えたので物としての「重さ」を感じたのです。
しかし、「愛おしい」という言葉がついているのはなぜでしょうか。
これも直前にヒントがあります。
「何はさておき三朝書だ。自分の愛しい人たちにつながるものがほしかった。」
自分の愛しい人が書いてくれた三朝書であり、
また、チャオミンが「人一倍の願いだけはこめた」とあるように、
みんながシューインのことを心から思って書いたものだからです。
自分へ向けられた温かな言葉の数々は、愛情の「重さ」の表れです。
【解答例】
自分の大切な人たちが自分に向けて贈ってくれた言葉に感じた温かさと愛情の重さとが、物理的な三朝書の重さと掛け合わされているということ。