さらに多くの上位コースの授業は、いわゆる賢い生徒だけを相手にして授業が進む。
例えば、ある問題に対して,Aさんの理解度が80%、Bさん50%、Cさん20%だとする。
すると、上位コースの先生は、Aさんに問いかけて(もしくは自主的に発言)解答へ導く。
そして、どんどん授業を進めていくのである。理解していない生徒のために、時間を割かない。なぜなら、成績が下がれば、下のコースで学習すればいいと思っているし、賢い生徒が退屈してしまう。それでは、トップクラスの士気が落ちるし、賢い生徒は物足りないと言って他塾へ移ってしまうかもしれないからである。
討論式授業も結果は同じ。一部の賢い生徒がどんどん引っ張っていく。結果として、ついていけない生徒が多量に発生する。そして、賢い生徒だけでトップクラスは形成される。
だから、個々に合わせる必要はないし、伸ばす必要もない。ただひたすら難問を解かせ、演習量を増やしていく。このような授業で、そもそもついていこうなどと考え、ひたすら復習や宿題を文字通りこなして、学習しても伸びるはずがない。
私自身も、このようなジレンマと闘いながら、それでも全員が授業に参加して考えることができるように発問を工夫し、賢い生徒も満足できる質の高い授業を心がけていた。
例えば、私は、B授業と呼ばれる長文、記述対策の授業を担当していたが、ある時のサピックスの6年のα1の生徒(桜蔭サピックスオープン一位の女の子や、4科目の平均偏差70の生徒などがいるコースで、コース平均偏差64⇒開成10名、桜蔭11名、筑駒2名など出した学年・中規模校)に対しては、授業中に扱う設問は5問程度に絞った。宿題は、間違いなおし+設問2、3問のみ。このように設問を絞り込んで、場合によっては作問しながら授業を行い、問いかけを多用して、考えさせる時間を確保することで、生徒にしっかり考えさせる授業ができたし、それだけの演習量でも十分生徒の学力を伸ばすことが出来た。実際、その年は、αコースというトップクラス以外からも桜蔭中や開成中の合格者がでたし、渋谷幕張中にも50名合格者を出した。
(ちなみに今年度も、トップクラス以外で、桜蔭、開成、麻布、駒場東邦、渋谷幕張、双葉などの合格者を出した。)
だが、やはり残念だった生徒もいた。今思えば、もう少し、深くかかわってあげればよかったと後悔している。
集団塾では、個別対応は難しい。抱えている生徒数が多くて、物理的に無理だからである。(今年度は、述べ150名の生徒にかかわっていた。)
このような自分の体験からいっても、やはり集団塾では限界がある。
まして、桜蔭中は記述問題がほとんどである。
記述は、一対一の指導が基本。なぜなら、記述力は個々によって違うし、設問の理解度によって間違い方もばらばらだからだ。添削が必要なのは、このためである。
とくに過去問を解き始めると、難易度が高すぎて、とても一人では消化できない。
桜蔭中の受験者は、なるべく早く「良い」先生を見つけて個別指導、添削してもらうようにお願いすることを勧める。
そして、一日でも早く思考訓練を始めよう。どんどん問題と格闘して論理的思考力を伸ばそう。
「ローマは一日にして成らず。」
ご健闘お祈りいたします。