A…易しい(武蔵合格を目指すなら確実に正解すべきレベル)
B…標準的(ややまぎわらしいが落とせないレベル、ここで差がつく問題)
C…難しい(受験者の大半ができないため差はつかない問題)
問1 | 知識(読解) A |
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問2 | 本文をよく読み考える記述 B |
問3 | 本文をよく読み考える記述 B |
問4 | 本文をよく読み考える記述 B |
問5 | 知識 A |
問6 | 本文をよく読み考える記述 B |
問7 | (1)本文・資料をよく読み考える記述 B (2)本文・資料をよく読み考える記述 B |
問8 | 本文・資料をよく読み考える記述 B |
2017年度の武蔵の社会は例年通り1つのテーマに絞った出題となりました。武蔵中学校は学校が解答例を示し、講評も行いますが、テーマは食塩の精製法を通して見える社会情勢でした。知識問題は問1と問5だけとなっており、それ以外の問題は現場思考が必要となる、本文をよく読み考えさせる問題ばかりでした。難易度は昨年よりも上がっていますが、知識をほとんど必要としないため、武蔵の出題傾向を掴み、読み取りの訓練、考えることの訓練をしていた生徒には有利に働いたと思います。一方で知識偏重の学習では歯が立たなかったと思われます。
易しい問題です。
糸魚川市の位置を知らなくても、文章から新潟県と海沿いという点から、選択肢イかウに絞れます。
さらに、松本市は長野県にあることは余りにも有名なので、松本市をエと選ぶと自ずと、糸魚川市はウになるはずです。
糸魚川静岡構造線は地震と密接な関係があるので覚えておきましょう。フォッサマグナとは微妙に異なるものなのできをつけてください。
塩竃市もどこにあるか知らない受験生が多かったと思いますが、宮城県にあるということが問題文にあるので、問題なくアを選べるはずです。
やはり武蔵中学の社会は問題の精読が大切だと感じさせる問題でした。
本文をよく読み考える記述B
国語の問題でもよく指摘することですが、接続詞「しかし」のあとには注意する必要があります。
文章には「しかし、海水の塩分は約3%で、塩1㎏作るには40ℓの海水が必要です。海水をくみ上げる作業は大変な重労働で、人手をたくさん必要としました。」と書いてあります。
これは、理科、もしくは算数の知識になりますが、食塩水の最大濃度は30%ちょっとです。
かん水とは濃い食塩水であるとかいてあり、最大限に濃くするとしたら、塩分は30%となり塩1㎏作るのに4ℓの海水で足り、人手の量も10分の1にでき、同じ量の食塩を作るのに燃料も時間も人手も10分の1で足りることになります。
本文をよく読み考える記述 B
江戸にもっとも近い海は東京湾です。
本文に書いてあることから推測、考えられることは、気候面から瀬戸内地方で製塩が盛んだったことです。
当時の江戸は世界一の都市といってもおかしくなく、人口は100万人を超えていたといわれています。
人口が多いということは、それだけ塩の需要も多く、瀬戸内地方から運んでくることは効率的ではなかったことが容易に想像できます。
よって、徳川氏は江戸に近い行徳塩田をあつく保護し、江戸庶民の塩の需要に対応したのだと考えられます。
本文をよく読み考える記述 B
本文をよく読めば入浜式塩田の製法が書いてあります。
入浜式塩田は、『遠浅の海に堤を築いて塩田をつくり、潮の満ち引きを利用して海水を入れ、塩田の砂に海水をしみわたらせる方法』と書いてあります。
海水を染み渡らせた塩田の海水を蒸発させるには、瀬戸内地方の降水量が少なく、晴天が多いという気候条件が適していたと考えられます。
易しい問題です。
1894年日清戦争
1904年日露戦争
1914年第一次世界大戦
10年おきに大きな戦争が始まったのは基本的知識です。
日露戦争で気を付けておきたいのは、講和条約がアメリカの仲介でアメリカのポーツマスで結ばれたことです。
講和条約は基本的に戦勝国で結ばれるのが基本ですが、勝ち負けをぼかすために日本でもロシアでもなくアメリカでポーツマス条約が結ばれたと覚えておきましょう。
本文をよく読み考える記述 B
よく考えなければ解けない問題です。
まず、イオン交換膜方式とは、電気を利用して化学的にかん水をつくる方法との記述があります。
これだけの記述から、イオン交換方式の燃料面以外の利点を考えるためには、今までの主流だった入浜式塩田の良くない点を箇条書き等にして洗い出していくのが有効だったと思われます。
第一に、入浜式塩田は、揚浜式塩田より少ない労力で大量に生産できるとの記述がありますが、化学的方法であるイオン交換方式のほうがより、労力が少なく済むと推測できます。
第二に、入浜式塩田は、遠浅の海に堤を築いて塩田をつくり、潮の満ち引きを利用して海水を入れ、塩田の砂に海水をしみわたらせる方法とあるので、広い砂浜が必要であるが、イオン交換方式だと場所が狭くても済むと推測できます。
第三に、入浜式塩田は、自然の晴天を使って砂浜を乾燥させますが、イオン交換方式だと天候が関係なくなるという利点も挙げられます。
(1)本文・資料をよく読み考える記述 B
設問では1960年代から1970年代にかけて塩の輸入が増えているのはなぜかという問われ方をしています。
これは言い換えると、高度経済成長期に塩の輸入が増えたのはなぜかという設問と同じです。
よって答えとしては、日本の経済成長に伴い、国産の塩だけでは足りず、ソーダ工業用の塩を海外に求めたから、となります。
高度経済成長期にあたることを思い浮かべることが重要な問題でした。
(2)本文・資料をよく読み考える記述 B
さまざまな解答パターンが考えられます。
なぜなら、設問に「考えられることを一つあげて説明しなさい」とあるからです。
すなわち、複数ある答えのうち一つを取り上げて、説明を求めているというわけです。
非常に簡単に考えられるのが、イオン交換方式の製塩が効率的だといっても、海外からの輸入に頼ったほうが採算があうから、という答えがあります。
また、国内での塩の需要はソーダ工業用の塩で、日本で精製される塩よりも国外産の塩のほうが適しているから、という答えも正しいと思います。
文章および資料から合理的に推測される答えであれば正解であると思われます。
合否を分けた一題を参照してください。
問1、問5の国語力・知識問題は非常に簡単だったので、差はほとんどついていないと考えられます。
一方で、それ以外の問題は、問題、資料を読み取りつつ、自分の頭で考えるという作業が必要な問題でした。そういった意味では、全てが合否を分けた一題といっていいかもしれません。
その中でも、問8は文章を読み取り、文章の注までしっかり気にする必要があった問題なので、敢えて合否を分けた一題として取り上げたいと思います。
まず、設問にある「社会的意義」という言葉の正確な把握が必要です。
「社会的意義」とは、1個人にとどまらず、集団・共同体に対して影響力を持つことをいいます。
この「社会的意義」の定義が正確に把握できていればかなりの点数が割り振られるのではないかと思います。
そして、文章末尾の注にあるユネスコエコパークとは、ユネスコが自然と人間の共生を目指して指定した保護地区ということも必ず答えの要素にしてほしいところです。
ユネスコは世界文化遺産や世界自然遺産を認定する機関でもあります。
とすれば、昔ながらの塩づくりが経済的に割にあわないということで行われなくなったが、だからといって昔ながらの塩づくりが行われなくなると、塩づくりの経緯や文化的背景まで消えてしまう。だから、塩田を人と自然が共生できる場所として残すことによって、人間や自然の歴史を共有していくことが出来るという社会的意義が発生すると考えられます。
上記のような答えが書けていれば、合格点といえます。