A…易しい(武蔵合格を目指すなら確実に正解すべきレベル)
B…標準的(ややまぎわらしいが落とせないレベル、ここで差がつく問題)
C…難しい(受験者の大半ができないため差はつかない問題)
問1 | 本文をよく読み考える記述 C |
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問2 | 知識・単語記述 A |
問3 | 知識・単語記述 A |
問4 | 知識・単語記述 A |
問5 | 本文をよく読み考える記述 B |
問6 | 資料の読み取り B |
問7 | (あ)知識・記述 A (い)知識・記述 A (う)知識・記述 A (え)知識・記述 A |
問8 | (あ)知識・単語記述 A (い)考える記述 B |
今年も1つのテーマに絞った出題となりました。武蔵中学校は学校が解答例を示し、講評も行いますが、テーマは問8(あ)の答えである「国民主権」でしょう。そして、サブテーマとしては問7で問われている「選挙」でしょう。問7(え)の答えとなる「国会議員の選挙権が満20歳以上から満18歳以上に変更された」ということが大きく関係していると思います。入学してくる生徒には6年後に立派な主権者になっていてほしいという出題者の強いメッセージが伝わってきます。また、問題文自体が秀逸です。憲法を学ぶ上で考えさせられることが詰め込まれています。知識の問題はとても平易でしたが、資料の読み取り、本文をよく読み考えさせる問題が特徴であり、武蔵攻略のカギとなるでしょう。
本文をよく読み考える記述 C
民主主義を考えるうえで非常に良い問題ですが、相当な実力がある武蔵受験生でも完全解を導くのは難しかったのではないかと思います。
まず、民主主義とは何かを調べてください。ウィキペディアでも教科書でもなんでも構いません。結果としてよく分からないのではないでしょうか?
ここでいう民主主義とは、現代の議会による代議制(間接民主制)のことです。そして、この問題では間接民主制は、アテネで行われていた直接民主制と比べ、どんな点が優れているのかを答えるのです。
結論として、ここでの民主主義は本文に書いてある「話し合いの場を持つこと」です。ここに気付ける受験生は少数でしょう。四万人で話し合いが出来るでしょうか?絶対に出来ません。衆議院の475人でも話し合いは無理なのではないかという意見もあると思いますが、よく勉強している受験生は一つの法律が出来るまでに、委員会があり、公聴会もあり、そして本会議にかけられることを知っているでしょう。そして、さらに参議院でも同じ過程を踏むのです。
現代の民主主義についての考えで初歩的な間違えが、民主主義は多数決であるという考えです。違います。多数決は話し合いが煮詰まった後にされる妥協なのです。妥協という言葉に悪いイメージを持っているかもしれませんが、民主主義にとっては前に進むためのプラスの意味をもっているのです。
そして、話し合いが行われる最も大きなメリットは少数意見が反映されるということです。単なる多数決は大多数の意見が通るだけなのです。
答え
アテネで行われていた、政治に関わることの決定は単なる多数決で、少数者の意見は無視されるが、現代の議会による代議制では、自らが選んだ代表が話し合いの末、政治に関する決定をするので少数意見も考慮される点。
知識・単語記述A
基本的な知識問題です。四民平等となった明治という時代に士族が不満を募らせた結果起こったのが西南戦争です。西郷隆盛がトップとして担ぎ出されました。
知識・単語記述A
基本的な知識問題です。地租が答えです。当初は3%でしたが、各地で反乱・暴動が起こったため2.5%になりました。
知識・単語記述A
単純な知識問題です。自由民権運動の代表的人物で自由党をつくったと言えば、
もちろん板垣退助です。暗殺されそうになったときに「板垣死すとも、自由は死せず」と言ったとか・・・
本文をよく読み考える記述B
1881年は国会開設の詔がだされ、10年後に国会が開かれる約束がなされます。しかし、国家のあり方を基礎づける憲法がなければ、国会の運用さえままならないことに不安を覚えた人が多数いたということでしょう。
資料の読み取りB
合否を分けた1題で後述します。
知識・記述A
(あ)基本的な知識です。直接国税を支払ったか支払わなかったに関わらず満25歳以上の男子。
(い)基本的な知識です。1946年までは満25歳以上の男子だけが有権者でしたが、性別に関わらず、満20歳以上の国民が有権者になったから。
(う)基本的な知識です。現在は少子高齢社会であり満20歳以上の国民の割合 が高いからです。
(え)時事問題対策で必ず扱っているはずです。満20歳以上から満18歳以上の男女
(あ)知識・単語記述A
基本中の基本です。国民主権です。日本国憲法の3原則は基本的人権の尊重、平和主義、国民主権ですが、同列の価値ではありません。
基本的人権の尊重が目的、平和主義と国民主権はそれを実現するための手段となっています。戦争状態で基本的人権が尊重されるはずはありませんし、自分たちの決まりは自分たちで決めるという国民主権でなければ基本的人権に対する縛りが強くなりすぎたり、緩くなりすぎたりするためです。
(い)考える記述B
国民主権とは、政治のあり方を最終的に決定する権力が国民にあるということです。にもかかわらず、一部の有権者の意見ばかり聞いていては部分的国民主権になってしまいます。特に資料から20代の投票率が低いことがわかります。これから日本を背負っていく人たちが自分たちのことを自分たちで決めないと、後々の社会生活に支障をきたすかもしれないのです。また、被選挙権者が高齢者の投票率が高いことから、若者に目を向けていない政策を掲げていても、選挙で当選し、国民の代表者ではなく高齢者の代表者となる恐れがあり、これも国民主権の趣旨からは離れてしまいます。
知識系の問題は非常に簡単だったので、差はほとんどついていないとかんがえられます。また、問1は合格レベルにある生徒でも難しかったので差がつかなかったと思います。
しかし、資料の読み取りは丁寧さや考察により差が出たと思うので、合否を分けた一題として問6を取り上げます。
資料の読み取りB
立法権に注目してください。植木枝盛は人民全体にあるとしていますが、大日本国憲法では天皇に、日本国憲法では国会にあるとされています。
特徴①国民主権をかかげている(が、多数決的民主主義になる可能性がある)。当時としては先進的な考えといえる。
植木枝盛の憲法案第43条と49条、大日本帝国憲法の第29条、日本国憲法19条と21条を比べましょう。植木枝盛は43条で自由権は法律で制限されると考えていることが伺えます。しかし、49条でとくに思想の自由を持つとしていることから、思想の自由は法律によっても制限されないと考えていると推測されます。
一方、大日本国憲法は法律の範囲内で表現の自由をもつとしているので植木枝盛の43条に近い考え方だといえます。日本国憲法では19条も21条も法律によって制限されることはうかがえません。
特徴②植木枝盛の憲法案は大日本帝国憲法と日本国憲法の中間的なものだといえる。
平等権については大日本帝国憲法には書かれていないので、日本国憲法と比べても先進的な考え方としてもいいと思います。
小学生にとっては難しい分析かもしれませんが、答えはひとつではないはずです。着眼点を示し、論理的思考を示せば正解となるはずです。