首都圏の私立中学校で、算数の問題用紙を見た瞬間に誰もが学校名を言い当てることができるのは、おそらく武蔵中だけでしょう。それほど特徴的な本校の算数。
まず、出題形式ですが、B4用紙1枚に大問1題、合計4枚の大問4題。時代に逆行するかのようなザラ紙4枚にオール手書き、問題文以外の空きスペース全てが解答欄で、直接そこに書き込んでいくのが、武蔵中の変わらぬ伝統的スタイルです。
ただし、1枚目の大問[1]について、平成に入ってからはH18まで大問1題でしたが、H19以降は小問集合になっています。H19・H20が小問4題、H21・H22が小問2題です。
変わらないのは出題形式だけでなく、出題分野もまた同様。(1)和と差、(2)割合と比、(3)速さ、(4)図形、(5)場合の数、(6)数の性質、で出題分野のほぼ全てがカバーされます。分野別分析表を見れば明白ですが、空欄が目立つ、つまり出題分野が限られるということです。
小問集合を除き、ほぼ全てが記述型。前述のように、B4用紙1枚に大問1題で、問題文以外のスペースが全て解答欄という、他校では見られない十分すぎるほどの解答スペースが与えられています。
同じ記述型入試でも、解答スペースが狭い学校の入試では、自らの思考過程を簡潔にまとめ上げる力が要求されます。それに対して、武蔵中ではどの教科においても十分な解答スペースを与えて記述量に制限を設けないという点から、どのような力が要求されるのか、それに向けた対策のポイントもおのずと見えてきます。
その対策については、以下の「【算数 合格戦略の提案】〔2〕答案作成力の養成」で述べていきます。
男子御三家の一角を占める武蔵中は、開成中・麻布中と比べて、教師・生徒ともにアカデミックな雰囲気が漂います。自調自考の精神を謳う学校の姿勢が、入試問題にも色濃く反映されています。
難関校においては渋谷教育学園幕張中や駒場東邦中のように数学にまで範囲を広げる学校もある中で、ひたすら算数にこだわって作問する武蔵中。発想力・思考力重視の問題が多く、中途半端に知識・解法で武装した受験生では全く歯が立たないでしょう。
このような発想力・思考力に加えて、〔2〕で述べた答案作成力を鍛え上げた受験生が合格を勝ち取ると認識しておきましょう。