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算数の合否を分けた一題

武蔵中入試対策・算数の合否を分けた一題(2017年度)

難易度分類

(1)B~C (2)C
(1)A (2)B (3)B~C
(1)A (2)A~B (3)B (4)C

A:武蔵中合格を目指すなら必ず得点したい問題
B:着眼点や解法により正答率・かかる時間に差がつく問題
C:難易度や処理量から判断して、部分点狙いで答案を作成すべき、もしくはとばすべき問題

問題別寸評

[1]

合否を分けた一題として、後述します。

[2]

題材こそ、武蔵中で頻出の平面図形ですが、大変な難問であったといえるでしょう。(1)から解答の糸口がつかみづらく、時間を使わされた上に得点できなかったという受験生も多そうです。試験での立ち回りとしては、短時間で解答までの見通しが立たなければ、まずは飛ばすべき問題でした。

(1)

抜群のセンスをもって(または幸運にも?)A、S、T、Cの4点が一直線上にあることに気づくことができると、それなりに見通しよく解決に至りますが、試験場でその解法を取れる受験生はわずかでしょう。
多くの受験生にとっては、与えられた図の内外に補助線を引き、何らかの相似の関係を用いて解くのが現実的でしょうが、いずれにしてもかなり煩雑になります。

(2)

図3のア、ウ、オはそれぞれ図2のS、Q、Tと同一の点になります。(1)の結果を利用するならば、八角形を正方形アウオキと周りの二等辺三角形4個に分割して考えるのが良いでしょう。他の解法を含め、途中計算や最終結果の数値も簡単ではなく、本番で解ききるのは相当大変だったことと思われます。

[3]

円周上の旅人算です。同一テーマとしては2011年にも出題されていますが、本問は3人のうちの1人が途中で進む向きを変える点で、やや複雑になっています。試験場では混乱しそうなところではありますが、(2)までは何とか点にしたいところです。

(1)

1800mを5分で出会ったAとBの速さが1:2であることから簡単に答えが得られます。これは絶対に落とせません。

(2)

Aが最初にBと出会って向きを変えた直後の3人の位置関係は、図のようになっています。

このままの向きでA、B、Cが進み続けたとして、AがBと同じ位置に来るまでには、7200÷(240-120)=60分、AがCと同じ位置に来るまでには(7200-800)÷(120-80)=160分かかるので、次に向きを変えるのはBと同じ位置にいるときで、出発からは5+60=65分後であることが分かります。

(3)

あまり上手い方法はなく、3回目にQを通過するまでの様子を愚直に調べていくのが良いでしょう。効率的な方法を求めて時間を空費した受験生がいたかもしれません。

Aが2回目に向きを変えた直後の3人の位置関係は、図のようになります。

1回目に向きを変えたときからこのときまでに、AはQを1回通過しています。そして、この後Cと出会うまでに更に1回、そしてそこで向きを変えて戻る際に3回目の通過をすることになります。
あとは、確実に計算を進めていきましょう。

[4]

例年通り、武蔵特有の「調べ」系の問題が配置されました。例年と比較すると「気づき」を要求される度合いは少なく、きちんと条件整理をした上で確実に調べる作業の方に重点が置かれた内容となっています。とはいえ、(4)まできちんと完答するのは、ほとんどの受験生にとっては厳しいでしょう。(3)まででどれだけ点数を拾えるかが勝負の分かれ目でした。

(1)

これは題意の確認をするだけの内容です。落としてはいけません。

(2)

Bが1のとき、言い換えれば取り出すカードの枚数が最少の場合でも3枚のカードを取り出すことになります。したがって、Cは連続する3個以上の整数の積です。
連続する3整数の中には3の倍数が必ず1個含まれますから、Cは少なくとも1回は3で割り切れることとなります。
以上の内容を、簡潔にまとめれば良いでしょう。

(3)

50はカードの中で最大の数ですから、A=50です。このときにBとして当てはまる数を求めることになります。
言い換えれば、50を中心に左右に同じ個数ずつ整数を掛け合わせ、その3で割り切れる回数の合計が7になるのはどのような場合なのかを調べることが題意です。

上の表は、50周辺の整数が3で割り切れる回数をまとめたものです。

まず少なくとも何個ずつ掛け合わせる必要があるでしょうか?表で濃い青で示した通り、50の左右5個ずつを掛け合わせることで初めて3で割り切れる回数の合計が7回になることを確認しましょう(4個ずつでは5回にしかなりません)。

次に、最大で何個まで掛け合わせることができるかを考えます。濃い青に加え、水色の数字はいずれも0ですから、6個掛け合わせることはできます。しかし、赤色で示した7個目を掛け合わせると、3で割り切れる回数の合計が8回になってしまいますね。

よって、もう1枚のカードに書かれた数は5、6です。

(4)

(3)ではA=50と決まっていましたが、この設問ではA=11の場合とB=11の場合の2通りについて考察する必要があります。

まずA=11の場合には、(3)と同様に考えることでB=10のときのみが条件に当てはまることを確認してみてください。

B=11の場合に当てはまるAを考察するのは、かなり難度が上がります。
「左右11個ずつの整数と掛け合わせたときに3で割り切れる回数が9回になるのは、どんな数を中心にした場合か?」という問題を考えることになります。

まず、中心となる数Aは3の倍数である必要があります
上の表に例を示したように、Aが3の倍数であるときには、掛け合わせる数の中に含まれる3の倍数の数は7個になります。さらに3の倍数7個の中には9の倍数が少なくとも2個含まれるので、3で割り切れる回数の合計が9回となる可能性がありえます。
表の下段のようにAが3の倍数でないときには、3の倍数の個数が8個、そのうち9の倍数が少なくとも2個含まれるので、3で割り切れる回数の合計は少なくとも10回になってしまいます。

さて、Aが3の倍数である必要があることは分かりましたが、逆に3の倍数であれば何でも構わないわけでもありません。

以下、表が煩雑になるので3の倍数のみを取り出して考えます。

表のように例えばA=18や21のときには、7個の3の倍数の中に27(3で3回割り切れる)が含まれるため、Aが3の倍数であっても、3で割り切れる回数の合計が9回よりも多くなってしまいます。このように、Aを中心とした7個の3の倍数の中に27や54が含まれないことに留意して、Aとして適切な数を求める必要があります。

煩雑かつ長い議論を丁寧にこなす必要があり、合格レベルにある受験生にとっても、試験場での完答は困難であったと思われます。

合否を分けた一題

大問4題構成は例年通り。出題分野自体は、割合と比、平面図形、速さ、数の性質を題材とした調べ上げと、すべてが武蔵中での頻出単元であり、武蔵中受験生は充分に練習を積んでいたところであったはずです。

しかし、各設問の難易度は昨年度に比べ大幅に上昇しました。合格者平均55.2点、受験者平均40.4点という結果は、2013年に次ぐ厳しさで、近年の武蔵中入試の中でも最難に近いレベルと言ってよいでしょう。
合格者平均と受験者平均で20点以上の差が開くことも珍しくない武蔵入試において、15点弱の差しかついていないのも2013年以来のこと。算数で点数を稼いでおきたかった受験生にとっては得点が伸ばしにくく、厳しいセットとなりました。

合格域に入るためには、まずは冒頭の難易度分類でA~B評価とした問題を取り切った上で、さらに算数で差をつけるのであれば、残りの問題からも点を拾う必要がありました。すべての大問が合否を分けかねないセットでしたが、ここでは、最も完答が容易だが全員が取れるとも限らないレベルの大問という意味で、[1]を取り上げます。

[1]

武蔵中では頻出の、割合と比を題材とした出題です。数学で言うところの「不等式」の考え方を用いる必要があり、受験生にとっては見慣れないという印象であったかもしれません。ただ、セット全体を眺めると、合格のためには落とせないところであるのも事実です。

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