農業関係者の団体がTPPへの加盟に反対する理由を説明しなさい。
(2 問10)
2012年度の開成中学の社会は、上の難易度表から分かるように、レベルAかBの問題のオンパレードでした。レベルCの問題は出題されませんでした。レベルCは受験者の大半ができないため差がつかない問題です。ところが、レベルAやBは、開成中学合格を目指す受験生なら確実に得点すべきもので、落とせない問題です。皆ができるところで落とせば差がついてしまいます。2012年度の開成中学社会の合否を分けた一題もそういったタイプの問題です。
農業関係者の団体がTPPへの加盟に反対する理由を考えるためには、「TPP」・「関税」とは何か、正確な知識が必要です。
まず、TPPは「環太平洋パートナーシップ協定」などと訳されていて、加盟国間で関税を撤廃したり環境や労働の規制を統一したりして経済的な連携を深める協定です(リード文より)。
次に、「関税」とは何でしょうか?「関税」ということばは歴史分野にも登場していたことを覚えていますか?日米修好条約(1858)では、日本側には「関税自主権」が認められませんでした。米国からの輸入品に関税をかける権利が日本にはなかったのでした。つまり、関税とは輸入品に課せられる税のことです(2 問8)。関税の目的は、安い外国産の品物から国内産の品物を保護することです。
例えば、国産のネギは1本100円で、中国産のネギは1本10円だとしましょう。もし、味や品質が同じならば、日本の消費者はみんな中国産のネギを選ぶでしょう。そうすると、国産のネギは売れなくなってしまいます。日本のネギを生産している農家は大打撃を蒙ります。そこで、中国産のネギに15倍の関税を課したとしましょう。すると、中国産のネギは1本150円となり、国産のネギより割高になってしまいます。このように、安い外国からの輸入品に関税を課すことによって国内の産業を保護することが関税の目的です。
それでは、農業関係者の団体がTPPへの加盟にどうして反対しているのでしょうか?
もし、日本がTPPに加盟すると関税を撤廃しなければなりません。これは、農産物も例外ではありません。そうなると、これまで関税によって保護されてきた日本の農家は、外国の安い農産物と競争しなければならなくなり、経営が圧迫されるおそれがあります。これが日本の農業関係者の団体がTPPへの加盟に反対している理由です。