① 開成「大運動会」にみるペン剣の由来
次に二つ目のキーワードを理解しましょう。「ペンは剣よりも強し(The pen is mightier than the sword)」というのは、19世紀のイギリスの作家・政治家のエドワード. ブルワ―.リットン男爵の言葉です。「開物成務」と並んで、開成を表す象徴として校章にもなっています。
「ペンは剣よりも強し」という言葉は「物事を成就したり、問題を解決したりする方法としては、武力よりも言論(文化)の力の方が強い」という意味であることは、皆さんも承知していることだと思います。では、開成学園の生活にこの「ペンは剣よりも強し」はどのように反映しているでしょうか。
このリーフレットで語られているのは開成学園大運動会です。見たことのある人は、応援団の華やかで勇ましい姿にきっと驚いたことと思います。最上級生の高3生徒は、時に大きな声を出して、下級生を、叱咤激励します。そんな応援団の中心になって指導する責任者は、一見、強面の勇ましい人にも見えます。
けれど、運動会の様々な責任者に選ばれるためには、勇ましさだけでは、決して十分ではありません。仲間を勇まし<盛り上げながらも、一人一人の気持ちを思いやることのできるような優しさを兼ね備え、そして下級生に対しても、暖かく、時に厳しく導<ことのできるような、そんな指導力を持った者が、仲間達による厳しい選挙を経て、責任者に選ばれていくというのです。
学園での最上級生である高校3年生にとって運動会は開成学園での最後の大きな行事となります。この行事が終われば、彼らは大学進学に向けての受験勉強に突入していきます。いわば、この運動会は、6年間彼らが自ら育んだ友情と責任感、自主性と社会性の集大成であり、学園における成人式ともいえそうです。
では、この大盛り上がりの「大運動会」はどのように運営され、生徒たちがどのような気持ちでかかわり、思い出をつくり卒業していくのか続きを見てみましょう。
まず驚くのが!、前年度の運動会が終わって間もな<、次の運動会をより素晴らしいものにするための議論が生徒の間で始まるということです。具体的には組の団結・競技のル一ル・安全対策・下級生の指導法……そういった数々の議論(言論)を経て、仲間達の気持ちをまとめながら、ようやく責任者が決まってい<のです。
さらに選挙の仕組み自体も、自分達で議論しながら決めていきますから、すべての運動会の責任者が出揃うのにはなんと数ケ月もかかるというのです!。そして責任が決まった後では、いよいよ本格的な話し合いが、生徒の間で、生徒と先生の間で繰り返されます。そのようにして、開成の運動会は、一年も前から様々な議論を積み重ねて当日を迎えるのです。
ともすると、勇ましさ(武)が目立ちがちな運動会ですが、実は、たいへん地道な言論の積み重ねで出来上がっているということを、皆さんにも知ってほしいと語られています
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