1 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 B |
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2 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 B |
3 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 B 問6 C |
4 | 問1 A 問2 B 問3 B 問4 B 問5 B |
A…開成合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2020年度の開成は、易化傾向だった昨年から一転、例年に比べても非常に難易度が高くなっています。合格平均は56.0点(昨年度65.2点)で、例年60点前後であることを考えても、かなり低くなっています。全体平均も48.1点(昨年度61.7点)と低く、合格者平均との差が大きいことから、いかに厳しい戦いであったかがわかります。
本年度は、4分野から大問1題ずつ、偏りなく出題されました。
地学分野の問題は、太陽の動きと影の位置についての問題。
物理分野の問題は、手回し発電機に関する問題。
化学分野の問題は、食塩のとけ方と食塩水の体積についての問題。
生物分野の問題は、葉の成長と葉の形の変化についての問題。
地学と物理は、知識と条件整理が中心で、丁寧に取り組めば得点できる問題でした。後半の化学と生物は、かなり高度なデータ処理能力が求められており、点差が開く要因になったのではないかと考えられます。解答に必要なデータを選び取り、すばやく処理するとともに、最後まで考え抜く胆力が求められる内容でした。
問題構成は、4分野から大問4題、小問25問。
解答形式は、言語が1問、記号選択が20問、数字が2問。作図(グラフ)が2問でした。
言語は、ごく基本の知識でした。
数字は、標準的な計算問題でした。
作図と記号選択の一部には、数的処理が必要な問題が含まれていました。
(地学)太陽の動きと影の位置についての問題です。
太陽の日周・年周運動について、根本原理の理解がしっかりできていれば、解答できる問題ばかりです。ミスのないように、注意しながら取り組むことが大切です。
図1のAは春分の日(3月21日ごろ)、Bは夏至の日(6月21日ごろ)、Cは秋分の日(9月21日ごろ)、Dは冬至の日(12月21日ごろ)です。5月5日は、春分の日と夏至の日の間なので、AとBの間です。
日本では、太陽は東から出て南の空を通り西にしずむので、南中したときの棒のかげは、棒の位置の真北にできます。したがって、ア、イ、エの3択になります。このうち、図のイは、棒の先たんのかげの位置が直線上を動いていることから、春分または秋分の日とわかります。
(1)2月1日は、秋分の日からつぎの春分の日までの間なので、太陽の南中高度は春分や秋分の日より低く、真東より南寄りから出て真西より南寄りにしずむアを選びます。
(2)5月5日は、春分の日からつぎの秋分の日までの間なので、太陽の南中高度は春分や秋分の日より高く、真東より北寄りから出て真西より北寄りにしずむエを選びます。
(3)9月23日は、ほぼ秋分の日と考えてよいので、図のイを選びます。
写真1のイの星は、真西にしずむ星です。ウはこれよりも北寄り、アは南寄りにしずんでいます。
5月5日は、春分の日から夏至の日までの間の日なので、太陽がしずむ位置は真西より北寄りのウの星の経路がもっとも近いとわかります。
問3と同様に、5月5日の太陽は、真東よりも北寄りの方角からのぼり、真西よりも北寄りの方角にしずむので、真北に向いた窓から、日の出のころと日の入りのころに日光が差しこむことになります。
写真3で、日時計の棒が真北にのびていることから、北半球の場所とわかります。また、リード文に、日時計の棒は地球の自転軸と平行になっているとあるので、棒の延長線上に見える星は、北極星です。
写真2の棒は、地面に対して90-63=27(度)の角度なので、北極星は27度の高さに見えます。北極星の高度はその土地の緯度と同じなので、この日時計が設置されている場所の緯度は27度です。また、この地域は11時に太陽が南中するため、日本標準時子午線が通る兵庫県明石市よりも東なので、小笠原父島を選びます。
(物理)手回し発電機に関する問題です。
実験の結果を図にかき入れながら条件を整理していけば、順当に解答できる問題です。こちらも、ミスは禁物です。
電流は、かん電池の+極から出て-極へ流れるので、電流の向きはイのはずです。
図1から、手回し発電機のハンドルを時計回りに回すと、電流は黒い端子から出るとわかるので、図3では、電流がG2の白い端子に入ります。これは、図2のG1とは逆なので、G2のハンドルは反時計回りに回転します。
G1のハンドルが時計回りに回転したとあるので、電流は黒い端子から入ったことになります。したがって、コンデンサーからは、長い方の端子から電流が出ています。
図5のS3を閉じると、G1とG2が回転すると同時に、コンデンサーにも電気がたまります。このとき、コンデンサーの長い端子側に+の電気がたまります。このあと、図5のS3を開くと、コンデンサー、G1、G2が直列つなぎになります。このとき、G1では白い端子に電流が入るので反時計回り、G2では黒い端子に電流が入るので時計回りに回転します。
図6のG1のハンドルを時計回りに回転させると、黒いたんしから電流が出て、コンデンサーの長い端子側に+の電気がたまります。このあとハンドルから手をはなすと、コンデンサーにたまった電気がコンデンサーの長い端子から出て、G1の黒い端子に入るので、ハンドルは時計回りに回転し続けることになりますが、コンデンサーにたまった電気が少なくなると回転がだんだんおそくなり、やがて止まります。
(化学)食塩のとけ方と食塩水の体積についての問題。
大変難しい問題になっています。五里霧中でも、あきらめずに考え抜くことが大切です。
昨年度桜蔭でも出題された、シュリーレン現象をとりあげています。
水中にあらわれた「もやもやしたもの」は、ティーバックの食塩がとけてできたこい食塩水なので、まわりの水よりも重く、ティーバッグから真下の方向にしずんでいきます。
赤色リトマス紙を青色に変化させるのは、アルカリ性のうすいアンモニア水と石灰水です。
ここまでは順当に解答できるはずです。
状態⑦は、状態⑥に比べて、加えた食塩の重さが、60.0-36.0=24.0(g)多く、体積は、125.0-114.0=11.0(mL)=11.0(㎤)増えています。よって、固体の食塩1.0㎤の重さは、24.0÷11.0=2.18…から、約2.2gとわかります。
状態⑥が飽和なので、水100gにとける食塩の重さは36.0gとわかります。状態⑤では、水100gに食塩30gがとけていて、この水を40g蒸発させるので、100-40=60(g)の水が残ります。水に60gにとかすことのできる食塩は、36×60/100=21.6(g)なので、30.0-21.6=8.4(g)の食塩が出てきます。
加えた食塩の重さ1.0gあたりで、体積が何mL増加するかを計算します。状態①から状態②の間は、加えた食塩は2.0gで、体積が、100.4-100.0=0.4(mL)増加しているので、食塩1.0gあたり、0.4÷2.0=0.2(mL)だけ増加しています。同様に計算すると、状態②から状態③の間、状態③から状態④の間、状態④から状態⑤の間、状態⑤から状態⑥の間は、すべて食塩1.0gあたり、水溶液の体積は0.4(mL)増加します。また、状態⑥から状態⑦では、(125.0-114.0)÷(60.0-36.0)=0.45(mL)と大きくなっていることから、ウのグラフがあてはまります。
手間がかかる問題ですが、素早く処理することが大切です。
→合否を分けた一題参照。
(生物)葉の成長と葉の形の変化についての問題。
大問3に続いて、グラフの理解と利用がテーマとなっています。
観察の結果をただ図や文章にするだけでなく、基準を設けて測定して数値化し、グラフや表にして定量的に評価することは、規則性や特性の発見につながり、根本原理へつなげていく手がかりになります。これは、科学を志す場合に、たいへん重要な姿勢となるといえます。
葉Aは、最大幅よりも全長のほうが長いので、表1の②があてはまります。また、葉Aの最大幅は位置3あたりなので、図3のグラフ④を選びます。
リード文の説明を手がかりに、表1や図3が何を表しているかを的確に読み取ります。
葉Cの幅の値を表2から計算すると、位置0の幅は0mm、位置1、位置6は5.0mm、位置2は15mm、位置3、位置4、位置5は20mmとなります。これらの値を解答らんに点で書き入れて、各点を直線で結びます。→下の図参照。
単純な作業なので、すばやく正確に処理します。
問2でかいたグラフと、図6を関連付けて計算し、グラフにかき入れます。
(問2の図を参照のこと。)
位置1:葉の全長が200mmの成葉とき、位置1の幅は5.0mmです。また、図6の位置1のグラフから、葉の全長が20mmのとき、成葉の幅に対する幼葉の幅の割合は10%なので、幼葉の幅は5×10/100=0.5(mm)となり、これを図にかきいれて「カ」とします。同じように、全長が40mmのときの割合は50%なので、キは5×50/100=2.5(mm)、全長が100mmのときの割合は80%なので、クは5×80/100=4.0(mm)となります。
位置2:成葉の全長が200mmのとき、位置2の幅は15mmです。図6の位置2のグラフから、葉の全長が20mmのとき、幼葉の幅は15×10/100=1.5(mm)となり、これを「カ」とします。同じように、全長が40mmのキは15×20/100=3.0(mm)、全長が100mmのクは、15×50/100=7.5(mm)に記入します。
問3でグラフに書き入れたカとキの値の差が、葉の全長が20mmから40mmまで成長する期間の幅の増加量です。同じように、キとクの値の差は、葉の全長が40mmから100mmまで成長する期間、クと折れ線グラフ上の点の値との差は、葉の全長が100mmから200mmまで成長する期間の幅の増加量です。このうち、位置2より位置1の方が大きいのは、カとキの間です。
少々煩雑ですが、落ち着いて判断しましょう。
① 葉の全長が2倍になると、位置0〜1の長さも2倍になります。このとき、問3の位置1のカからキの変化を見ると、葉の幅は、2.5÷0.5=5(倍)になっています。
② 位置0〜1の長さが2倍になっているのに対し、問3の位置1のクから折れ線上の値の変化を見ると、葉の幅は、5÷4=1.25(倍)になっています。
どのデータをどう処理すれば、解答に結び付けられるかを、しっかり考えなければなりませんでした。
実験1と実験2の結果から、「確認できること」や「考えらえること」を選びます。従来の開成の問題パターンから考えると、「確認できること」はシビアに判定すべきなのですが、「考えられること」となると、どこまでを正しいとすればよいのか、かなり悩むところです。
特に、イとオについて、開成受験生なら、事柄としては正しいとわかるのですが、実験と関連付けることができるかの判断がネックになります。
ここで、問5のグラフに着目し、利用できたかどうかが試されたのではないかと考え、合否を分けた1題としました。
ア 実験2の状態①〜⑥の結果から、水にとかす食塩の重さが増えると、水溶液の体積は増えていることが確認できます。
イ 問5で選んだグラフを手がかりにします。もし、食塩が水のとけない物質であれば、体積の増加分は、下のグラフの赤線のようになります。これは、⑥から⑦のグラフと同じ傾きで、原点を通る直線です。状態①〜⑥の間では、常に赤線より体積が小さいことから、確認できます。
ウ 実験1、2では、できた食塩水の重さをはかっていないため、確認できません。また、とける前後で重さの合計が変化するとは、考えられません。
エ 実験1には、温度の条件がないので、確認できません。また、実験2でも、水温を25℃に保って行っているので、温度による変化は確認できません。食塩は、温度による溶解度の変化が小さいことはよく知られていますが、実験の結果から考えられるとはいえません。
オ 状態①〜⑥のそれぞれで、食塩水の重さをはかっていないため、実験2の結果から、定量的には確認できません。そこで、下のグラフの赤線と黒線の値のちがいに着目すると、状態①から状態⑥に向かって、だんだん離れていくことがわかります。これは、食塩が水に溶けたために減った体積にあたり、「水の体積1.0mLの重さは1.0gであるものとします。」とあることから、食塩水の体積1.0mLの重さは増えていると考えられます。
これは、問1で、実験1の結果がイになることからも、確かめることができます。