一 | 問一 A 問二 A 問三 B 問四 B 問五 C |
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二 | 問一 全てA 問二A 問三C |
A…確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度・処理量から判断して、部分点を拾えれば良しとする問題
今年度の開成中学は文章問題二つの構成という点では例年通りでしたが、漢字書き取りが独立した問題ではなく、文章中にある形式で、やや多い七問となっているところが例年と変わっていました。大問一は、小学生女子が主人公の物語文(朝比奈あすか『君たちは今が世界』)でした。女子特有の人間関係を描いたものなので、開成受験生には少し理解しがたいものだったかもしれません。大問二は「蛍雪の功」という故事成語に関する論説文(瀬川千秋『中国 虫の奇聞録』による)でした。解答欄が小さいので、具体的表現を短くまとめるという、開成対策として取り組んできたことが活かされる問題でした。
例年開成で出題されている変化の問題です。
【変化の公式】「はじめはAだったが、□というきっかけがあって、Bに変わった。」
に当てはめて書きます。きっかけ(めぐ美がひなっちと出会ったこと)は問いに書かれているので、まず、ひなっちがどういう存在なのかに触れ、そのうえでAとBの対比の構造をまとめていきます。今回は、性格についての変化(内向的・おとなしい→外向的・活発)と、読書に対する思いの変化(楽しいこと→寂しいこと)の二つについて触れる必要があります。やや易しい問いであったと思われます。
これも開成でよく出題される問題です。「 」がついていることから、作者が本来の意味とは違う使い方をしていること、意味をずらしていることを読み取れているかが試されています。ただし問いに『「~という意味ではなく、~という意味。」の形で答えなさい』というヒントがあるので、答えの形式面で悩まされず答えられるようになっています。
また、このような場合、本来の意味と反対の意味で使われることが多いです。そこで、本来の親友の意味と、めぐ美とカナの関係を、「本音・本心」などのキーワードを介して対比させて書きましょう。自分の言葉で書く必要がある問題でしたが、書き方のヒントがあったことから、やや易しい問題であったと思われます。
合否を分けた一題で詳しく説明します。
傍線部の内容から「かったるそうな声」が本心からではないことを説明できるかが試されています。
【相反する心情の公式】「本心では、□によって、Aであるのに、△のため、Bのようにふるまっている」にあてはめて考えていきましょう。
カナの存在が、めぐ美に本心のままに行動させず、わざと気のないそぶりをさせているのです。解答欄が小さいので、答えに必須の要素だけを書き込むために、重要度の低いものを削る作業が必要な問題ですが、決して書きにくいものではありません。標準的な問題と思われます。
本文に書かれたカナの性格、小磯への思いを読み取ったうえで、傍線部のようになった状況を類推するという難問です。
問いで「なぜカナはまやまやを攻撃しなかった」と聞かれています。これは傍線部の後にある「カナが小磯を…馬鹿にするようになった」と対照的なものです。ここに着眼できると状況類推がしやすくなります。本文からカナは小磯に好意を持っていたこと、そしてカナは自尊心が強いことが読み取れます。しかし小磯はまやまやに好意を持っていることが分かった。ここから類推できることは、まやまやに負けたことを受け入れず、自分を選ばなかった小磯を攻撃することで、自身のプライドを守ろうとしたということです。本文に書かれていないことを、自分で根拠のある想像をして書くというものでした。これが書ければ大きく合格に近づきましたが、ほとんどの受験生が書けないほどの難しい問いだったと思われます。
難しい漢字はありませんが、別の同音異義語があるため、言葉の正しい意味を思いつけないと書けないものがある、全問正解はかなり厳しい漢字の書き取り問題でした。ただし、問いに「トメ・ハネなど丁寧でない場合は減点になります」とあるように、丁寧に書けたかが勝負を分けることもあります。漢字では簡単に一点減点されること、そしてその一点が合否を分ける可能性のあるのが開成の入試だということを忘れないで下さい。
線部の前に康熙帝の態度が具体的に書かれているので、そこが答えだと分かりますが、解答欄が小さいので、抽象的表現に言い換える必要があります。ポイントは、実際に自分で試してみて客観的に判断するところです。やや易しい問いと思われます。
傍線部の直後に笑い話が書かれていますが、それをまとめても正解にはなりません。もともとの故事成語「蛍雪の功」の意味をおさえたうえで、傍線部の直後の内容とのズレを説明することが求められます。「蛍雪の功」の意味は本文の最初に、貧しい人が夜に蛍の光や雪明かりで勉学に励んで出世した、「困難にくじけず学問にはげむ大切さ」ということだと書かれています。笑い話では、日の出ているときに、勉学を行わず、蛍を探したり、夜雪が降りそうにないことを心配していたりしています。この二つのズレを小さい解答欄に書き入れるのは、かなりの難問だと思われます。
合否を分けた一題
今回は大問一の問三を取り上げます。傍線部から二つの心情を読み取ることが出来るかどうかが試された問いです。標準レベルの問いと考えますが、だからこそ差がつきやすい、合否を分ける一題だといえます。
傍線部3「カナの自尊心の強さを、めぐ美は見て見ぬふりをする。実際、なんでも強気で向き合っていくカナの『でも』には、説得力があるようにも思った」とありますが、この部分から読み取れる、めぐ美のカナに対する思いを説明しなさい。
解き方の手順
物語文の問題で難度は高いがよく出題されるものに、「心の葛藤」に関する問題というものがあります。あることに対して二つの相反する心情を持つことです。
問三は「カナの自尊心の強さ」に対して「見て見ぬふり」という行動をとっていることが一つめ、そして、「なんでも強気で向き合っていくカナ」に対しては「説得力がある」と考えていることが二つめで、この二つが相反する心情となっています。順番に見ていきます。
<一つめ>
カナの自尊心の強さについての説明は傍線部の直前にあります。
「長い付き合いだから、カナの口癖が「でも」だということは知っている。誰かが目立つと「でも」と必ず否定せずにはいられないカナの、あまりに大きな自尊心を、めぐ美は間近で見続けてきた。」
この部分に注目して、まずは傍線部の表現「カナの自尊心の強さ」について言い換え説明をします。「プライド」という単語が思いつくととても良いです。
次に、「見て見ぬふりをする」という行動からめぐ美の思いを考えます。この表現からはマイナスの心情が読み取れます。「長い付き合い」や「間近で見続けてきた」という表現から、何度も何度も見てきたために見て見ぬふりをするようになってしまったのだすると、心情としては「また言っているよ」という言葉と同時にため息が出てきそうな「うんざり」や「あきれ」のようなものだと考えられます。
<二つ目>
「なんでも強気で向き合っていく」は自尊心の強さの言い換えです。
「説得力があるようにも思った」からはプラスの心情が読み取れます。
自分が決してしない強気で向かっていく姿勢は、自分ができないことでもあります。
そのことに説得力があるように思うということは、自分にはない強さへの「あこがれ」の心情と言えます。
これらをまとめると解答となります。
【解答例】
自分より目立つ存在を否定するカナのプライドの高さにうんざりする反面、自分にないカナの強さにあこがれる気持ち。