「傾向が無い」そう評されることも多い開成中学の算数。
得点率も年度によってかなりの波があることが特徴です。この数年の出題を見ても、2012年は正確な作業力と高度な思考力・柔軟性がバランスよく問われ、受験者平均点が約50%、合格者平均点でも約65%と難度が高かった一方、2013年は中学受験における典型問題が並び、合格者平均点が80%を超えるほど、練習量と計算力で差がつく高得点勝負となりました。
そんな中2014年の出題が注目されましたが、受験者平均点が60%弱、合格者平均点でも70%強と、この10年の中では、やや難度が高い出題となりました。
出題内容もテキストによく掲載されているような典型問題は少なく、高度な算数的思考力や正確な作業力を持ち合わせた生徒を見極めるための、良質な試験であったと言うことが出来るでしょう。
では2014年の出題構成に目を移しましょう。
1(1)は約数・倍数の基本、(2)は平面図形の基本問題です。いずれも中学受験における典型題で、開成中学合格を目指す受験生ならば、確実に正解する必要がありました。
2は見取り図と投影図を関連付ける空間把握力が問われました。普段から立体図形をいかにして平面で捉えなおすのか練習してきた開成中受験生にとっては、決して難しい問題ではないでしょう。
3は特殊な設定の時計算です。既成概念にとらわれない柔軟さや、正確な作業力が問われる難問でした。計算処理量が多いものの(2)までは正解したいところです。
4は立体図形の感覚と、展開図に関連付けて考える論理性が問われる難問です。特に(2)以降の難度が高いので、ここは部分点狙いに徹し、他の問題に力を入れたほうが得点効率は良かったかもしれません。
このように、2014年の開成中の算数の出題で合格点を獲得するためには、1と2での失点を最小限に食い止め、3と4で、得点できそうなものを的確に判断し、確実におさえることが重要でした。思考力や柔軟性、作業力や判断力などをバランスよく高度に持ち合わせた生徒が、合格を勝ち取ったと言うことができるでしょう。
A…開成中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えれば良しとする問題
1 | (1)A (2)A |
---|---|
2 | (1)B (2)B |
3 | (1)B (2)B (3)C |
4 | (1)A (2)C (3)C (4)C |
アは21・98の公倍数、イは21・35の公倍数、ウは35・98の公倍数と言い換えて、解答を導くことが重要ですが、今回は素因数分解や約数・倍数の本質的な性質から考えてみましょう。
(ア、イ)の最大公約数21 = 3×7
(イ、ウ)の最大公約数35 = 7×5
(ウ、ア)の最大公約数98 = 2×7×7より
ア= 2×3×7×7×● = 294×●
イ= 3×5×7×■ = 105×■
ウ= 2×5×7×7×▲ = 490×▲とおくことができる
●■▲は互いに素で、
また、●は5と互いに素
■は2、7と互いに素
▲は3と互いに素だから
ア+イ+ウ≦1000より
(●、■、▲)= (1、1、1)に確定する
よって ア=294 イ=105 ウ=490
今回はア・イ・ウの合計が1000以下という条件もあり、そのまま全て最小公倍数が答えになるという易しい出題でしたが、本来は上記のように倍数の条件を照らし合わせて解くことが重要です。
角(い)の大きさを①と置いて、P~Qの長さが、Q~Rの長さの5倍という状況を式で整理しましょう。こちらも開成受験生ならば絶対に落とせない、中学受験算数における典型題です。
2つの三角錐の重なる部分の捉え方がポイントですが、開成中受験生にとっては「2つの面が交わるとき、直線になる」という発想は定番でしょう。その上で立体図形を、どう投影図に落とし込むのか、柔軟な立体図形に対する感覚が必要です。
なお、真上から見た図におけるABCDの位置関係に気をつけましょう。
(1)で見取り図を正しく把握できていれば、決して難しくない出題です。四角柱から三角錐台を2つ引くだけの計算は、処理量も決して多くはないので確実に正解しておきましょう。
開成中合格を目指すならば、ここまでは満点を目指したいところです。
特殊な設定の時計算は、難関校において時々見られるテーマですが、典型問題の演習を数多く重ねた受験生にとっては「長針:6度/分」「短針:0.5度/分」という「常識」が気になって、非常に解きにくく感じられる場合も多いようです。また、この問題では秒針も考える必要があるため非常に高度な処理能力が求められます。(3)は計算処理量も非常に多いので、後回しにしても良いでしょう。
この中では非常に易しい問題です。対称性に注目して、平均4.5×4面と考えても良いでしょう。
非常に説明しにくい問題です。
辺BCと辺DEを共有しない三角形に注目しましょう。
(2)と同様、論理的に組み立てることが非常に困難な問題です。
1と8が最小値と最大値であることを考え、1が書かれている三角形に隣接しなければ成立しないだろうと、感覚的に掴みたい問題です。
展開図に各頂点を書き込んだ上で、どの面に、どの数値を設定するのか考えましょう。試行錯誤する内容が多く、また数値の向きなど注意点も多いので、開成受験生とはいえ完答することは非常に困難な問題です。