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社会の合否を分けた一題

海城中入試対策・社会の合否を分けた一題(2020年度)

難易度表

問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 A
問8 A 問9 C 問10 C

A…海城中学合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

難易度・問題数ともに例年通りの構成といえます。数年に一度出題される年代の並び替え問題も、今年度、出題されました。記述問題の構成は、年度や実施回によって異なりますが、今年度は問9が長めであったためか、大記述が2問、小記述が1問という構成でした。海城中学の記述の特徴は、問題から出題趣旨を読み取ったり、表や統計を分析したうえで気づいたことを記述するという形式が固定化されています。ふだんの学習から、問題の中で提示されていることを分析する習慣を身につけておくことが重要です。

問題別寸評

高級ブランドの「シャネル」を題材に、地理・歴史の知識を幅広く出題されています。海城中学入試社会において、記述問題が何を聞いているのかよくわからない、という受験生が例年少なからずいらっしゃいます。海城中学の社会記述問題は、「知識を問うていない」ということが特徴です。問題本文や掲示されている表やグラフ、写真や記事などからいかに聞かれていることを読み解くかという力が求められているといえます。ご自身がお持ちの知識に引き込もうとするのではなく、与えられている資料の端から端まですべて使い切るつもりで、しっかりと分析をしましょう。

問1

西洋式の服=洋服が日本に入ってきたのは、明治初期、文明開化の一つといえます。洋装が流行したひとつのきっかけになったのが、社交ダンスです。社交ダンスの象徴的建築物が、問題になっている「鹿鳴館」です。不平等条約撤廃を目的とする欧化政策の一環として、1883年に日比谷に建設されました。

問2

海城中学の年代並べ替え問題の特徴は、年代の近いものを織り交ぜるところにあります。どちらが先だっけ?という混乱を生じてしまう受験生が現れてしまうであろうというくらい、近いものを肢に入れてきます。本年度でいえば、ア.とイ.でしょうか。ア.の大阪万博開催は、1970年です。日本初はおろか、アジアで初の万国博覧会でした。イ.のオイルショックは要注意です。一般的にオイルショックというと、問題になっている第一次オイルショックの出題が多いです。しかし、第二次オイルショックが出題される例も過去に数えきれないほどありますから、ここでおさえておきましょう。第一次オイルショックは、第四次中東戦争をきっかけとして1973年に生じた景気後退をさします。これにより、日本の高度経済成長はストップしたといわれています。他方、1979年のイラン革命により生じた原油高騰を原因とする景気後退を、第二次オイルショックといいます。上位校を目指される受験生ならば、両方とも、年代・きっかけ・呼称すべてを理解しておきたいところです。ウ.は、満州事変の記述ですから1931年となります。エ.は、小村寿太郎による関税自主権回復ですが、1911年の出来事です。

問3

ア.から順にみていきましょう。1925年施行の普通選挙法により選挙権を与えられたのは、「25歳以上の男子」だけです。女子には与えられていません。イ.は、正しいです。ウ.も、正しいです。エ.は、育児休暇を取得する権利は、育児介護休業法に基づいて、男性労働者にも認められた権利です。

問4

よく目にされる地形図ですからすぐにおわかりでしょう。「扇状地」です。地形図の中に「勝沼」という地名が何か所か目につくかと思われます。現在は山梨県甲州市に位置する「勝沼町」です。ブドウ畑を多く擁し、ワイナリーも多く点在する地域です。

問5

工業地帯・地域の特色は頻出問題です。できれば、全地帯・地域の特色をおさえたいところです。本問でもっとも判断しやすいのは「C」でしょうか。輸送機械で半分近くを占めますので、「中京」工業地帯となります。次に判断しやすいのは、「A」の金属工業が他と比較して圧倒的に高いということでしょうか。現在でも金属工業が盛んなのは、「阪神工業地帯」の特徴です。ここまでで「オ」と選べますが、京浜工業地帯の特徴は何でしょう。かつては、自動車工場が横浜を中心に神奈川県に点在していましたが、海外や北関東・九州へ工場が移転してしまい、京浜工業地帯での機械工業の割合は低下しています。

問6

(1)冠位十二階が定められたときに政治をおこなっていた「有力な豪族」が問題となっています。早合点をしてしまい、「聖徳太子」と解答してはいけません。冠位十二階の制定については、学説も対立しており、また、永いこと聖徳太子の功績といわれてきましたが、最近では「蘇我馬子」と聖徳太子の共同作業によるとするのが有力な説です。本問でも、有力な豪族が聞かれていますので、蘇我馬子となります。
(2)冠位十二階制定の目的も頻出問題です。冠位十二階は役人の階級を十二の色で分け、それまでの氏姓制度、つまり「家柄や出自ではなく、そのもの個人の能力で役人に登用すること(ため)。」を目的としていました。

問7

さて、「カジノ法案」についての問題ということで一瞬構えてしまいそうになりますが、一つ一つの肢を読むと、カジノ法案賛成派と反対派の理由づけを選択する問題ということがわかります。まずア.ですが、カジノはいわば賭博です。競輪、競馬、競艇といった公営ギャンブルにしても、パチンコといった街中でみかけるものにしても、皆様が持たれているイメージはどのようなものでしょうか。イメージのみならず、カジノ法案が成立し、現実にカジノがおこなわれるようになった場合、「治安の改善」が見込まれるでしょうか。むしろ、「悪化」する可能性を指摘される方のほうが多いように思われます。イ.ですが、カジノ建設は、どちらかといえば国内需要向けというよりも、外国人観光客を呼び込もうという目的が主のようです。海外ではカジノ収入で1兆円を超える収益を上げている国・都市もあるくらいです。そのほとんどが、ホテルなどと一体化した一大レジャー施設となっているため、海外宿泊客の利用を見込んでいるといえます。ウ.は、カジノが建設された場合、当然そこで働く人が必要になってきます。したがって、国内の雇用は増加することが予想されます。エ.は、現在でさえもパチンコなどによるギャンブル依存症が日本国内において深刻な問題となっています。さらにカジノがオープンすれば、よりその割合は増えると思われます。

問8

アメリカ合衆国についての正誤判定問題です。ア.について、アメリカ合衆国の首都はワシントンD.C.なのですが、東部大西洋側の中部に位置します。ちなみに、太平洋側で北部に位置するのはシアトルになります。イ.バスケットボールも野球(ベースボール)もアメリカ合衆国が発祥です。ウ.について、届出がなされているアメリカ在住の日本人の数は約50万人といわれています。対して、日本在住のアメリカ人は、約5万人でその数は10倍の差があります。これは、留学生やビジネスでの滞在がそのほとんどと考えられます。ちなみに、学術の中心はやはりアメリカであり、日本人に限定しない留学生数は100万人を超えています。対して、日本の留学生は、大学院で5万人、日本語学校でも9万人ほどですから圧倒的にアメリカのほうが多いことがわかります。エ.ですが、アメリカの国旗には、50個の星と13の紅白の条(よこしま)が描かれています(星条旗という名称はこのような意味です)。星は、現在の州の数を、条は、独立当時の州の数を示しています。

問9

「合否を分けた一題」にて解説いたします。

問10

問9同様に、何が聞かれているのか、出題趣旨・出題者の意図をよく探ることが重要です。まず、≪資料5≫でおさえるべきキーワード・キーフレーズは、「3回のサイズ合わせ」「多くの縫製職人たちが、総動員で」取り掛かるという部分です。≪資料6≫では、「22万ものスパンコールは、・・・手作業で縫い付けている。」「デザイナー・・・何度も手直しを加え」「製作するためにおよそ1000時間が費やされた」、≪資料7≫では、注文の後にデザイナーと素材工場・デザイナーと裁断/縫製工場・素材工場と裁断/縫製工場・客と裁断/縫製工場というように注文後のやり取りがそれぞれの部門で独立してなされていることに注目しましょう。つまり、オートクチュールの場合、デザイン発注から完成までに試着と直しが何回もおこなわれており、裁断・縫製・飾りつけに至るまですべて手作業で行われています。そして、全行程が緊密に結びついていることからすれば、できる限り近くに集まっているほうが、試着をする(させられる)客にとって利便性は高くなるということになります。

合否を分けた一題

問9

海城の記述の問題は、国語も社会も問題文の分析からはじめましょう。本問では、①(服を選択する)基準の変化の内容 ②変化の理由 ③本文や≪資料1≫~≪資料4≫から読み取り可能 ④第一次大戦下での女性の生活状況の変化にふれること というのが解答への条件です。これらすべてを盛り込んで、はじめて「◎」がいただけるということになります。まず基準ですが、「男性が好むものかどうか」から、社会の働き手として「働きやすさ=動きやすさ」が求められました。これらのことは、本文にも記載があり、また、≪資料3≫からも読み取れます。つまり、資料3の図Aは、縦糸と横糸ががっちり編み込まれていて、伸縮性がなく、これで作った服は動きにくそうであることが容易に想像できます。他方、図Bの生地は、糸の編み込みがばねのような形状になっており、伸縮性に富み、縫製した服は動きやすそうであろうことが想像できます。変化の理由は、本文下線部⑨以降に書かれているように、第一次世界大戦によって国民が総動員された結果、夫や家庭に縛られることなく、また、守ってもらう存在でもなく、自ら社会に進出し働き手にならざるを得なかったということです。これは、第一次大戦下での女性の生活状況の変化にもつながります。以上の条件を踏まえてその内容を記述していければ、おのずと合格点に届くものと思われます。
『第一次世界大戦以前の洋服選択の基準は、男性に好まれるかが主たる基準であった。たとえば、腰を過度にコルセットで締め付け、脚を見せないようにということで裾が床につくようなドレスや過剰な装飾を施したものを選択していた。しかし、第一次世界大戦が勃発し女性たちも働き手として社会進出する必要性が生じた。伸縮性に富み動きやすいジャージードレスが、夫や家庭に縛られて生きるもしくは守ってもらう存在とそれまで認識されていた女性の生き方を開放する象徴となった。』(220字)

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