女子学院中学入試問題の出題傾向を踏まえて、これまでJG合格者と共に私自身が実践してきたそれぞれの攻略法をお伝えします。
スピード勝負かつ高得点勝負を攻略するためのキーワードは、処理速度と時間配分です。
頭の回転が速い、計算が速い、文字・数字を書くのが速い、というのが過去のJG合格者の特徴です。つまり、処理速度を上げるには、思考・計算・筆記の各場面でスピードを追求する必要があるということです。
筆記については意識するだけですぐに変化が見られますが、思考については資質に負うところが大きいという考え方も確かにあります。しかし、日々の家庭学習において、1問ごとに制限時間を設けて問題演習を行うという時間帯を作り、その時間帯は常にスピードを意識して考えるというトレーニングをすることにより、徐々に思考のスピードはついていきます。その際、自分が必ずわかる問題、必ず解ける問題を繰り返し取り扱うことです。この“わかる問題・解ける問題の徹底反復”が、思考のスピードアップの秘訣です。「わたし、頭良くないから」などと自らさじを投げてはいけません。地道にトレーニングを積んでもらいます。
計算については、取り組み方次第で飛躍的にスピードアップを図ることが可能です。制限時間遵守で毎日の計算練習を行うことは当然ですが、それに加えて➀安易に筆算に頼らず暗算力を鍛える、②軸となる数値を覚える(例:円周率の計算、三角数、平方数)、③計算の工夫を常に意識する、ことが肝要です。ただ漫然と計算するだけでは、答えが合っていても、JG志望者として必要な計算力はつきません。
成績上位者であっても、問題を解いている姿をそばで見ていると、計算のやり方に修正すべき点を抱えている生徒が案外多いものです。正しい答えが出せているので、指摘されない限り気付かないですし、修正すべき必要性も感じていません。6年生になって計算のやり方を改めるのは、相当苦労します。JGを目指すのであれば、単に正しい答えが出せる計算方法ではだめなのです。処理速度を上げるための適切な計算方法が必要です。可能な限り早い段階で、その計算方法を指導し、身につけてもらいます。
入試は限られた時間内での勝負ですから、どの学校を受験するにしても、時間配分について作戦を立てるのは当然です。「女子学院中学の合否を分けた一題」で後述しますが、2010年度のJG入試は時間配分が合否を分けたと言っても過言ではなく、今後も綿密な作戦を練る必要があります。
JGの時間配分と他校の時間配分の決定的な違いは、捨て問題の有無です。他校では合否に影響しないような問題は捨てるべきですが、JGではボーダーラインの高さを考えると、安易に捨て問題を作るべきではないでしょう。「捨てる」のではなく、あくまでも「一旦とばして後回しにする」のです。
算数が得意な生徒は、なまじ解き切る力があるだけに、ついつい時間をかけて解き切ってしまいます。気付くと残り時間が圧迫されていて、焦ってその後の問題でミスをするというケースが目立ちます。「多分解けるけど、ちょっと時間がかかりそう」と感じた問題を、我慢して一旦とばせるかがカギ。全ての問題に落ち着いて取り組めるようにするためには、時にはとばして後回しにする勇気を持たせることも必要なのです。
どのような問題を後回しにするか、解く順番はどうするか、1問あたりに費やす時間は最長何分か等々は、画一的なものではなく、生徒一人一人に応じて異なるもの。生徒の状態を完全に把握したうえで、最適な時間配分の基準を作り上げるようにします。生徒にそれを身体に染み込むくらいに実践してもらうことが、合格には不可欠です。