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理科の合否を分けた一題

女子学院中入試対策・理科の合否を分けた一題(2020年度)

難易度分類

1 A  2 A  3 A  4 A  5 A  6 A  7 B
1(1) A  (2) A  (3) A  (4) A  (5) A  (6) B  2 (1) A  (2) A
1(1) A  (2) A  (3) A  (4) A  (5) A  (6) B  (7) A  2(1) A  (2) A  (3) B  
1 A  2 A  3 A  4 A  5 A  6 A  7(1) A  (2) A  (3) B  8 C

A…女子学院合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

2020年度の女子学院は、例年通り、根本原理の理解と思考力を試す問題が中心ですが、全体に典型的な題材が取り上げられていて、取り組みやすい問題でした。昨年に引き続き難易度が下がった印象で、高得点がねらえる半面、差がつきにくい状況で、うっかりミスが命取りになる可能性があります。
傾向としては、条件整理がしやすく、忖度が必要な問題が少なくなっています。リード文もすっきりしていて、読み取りやすくなっています。1つの題材について角度を変えながら問い重ねる手法は相変わらずです。目立ったところでは、もともと問題数が多い上に、計算問題が倍増しており、時間的にさらにきびしい戦いとなっています。

生物分野の問題は、アミラーゼのはたらきに関する問題。
地学分野の問題は、太陽の動きと日食に関する問題。
化学分野の問題は、海水の成分と溶解度、固体の分類についての問題。
物理分野の問題は、ばねとてこのつり合いについての問題。

問題構成は、4分野から大問4題、小問60問。
解答形式は、言語が2問、記号選択が36問、記述が5問、数字が15問、作図が2問。
記述は、1行程度が3つ、10字程度が1つ、「25字程度」の字数制限のあるものが1つありました。
記号選択は相変わらず多いものの、典型的な内容で、解答しやすくなっています。
計算が必要な問題が特に倍増し、中にはやや処理が煩雑で時間のかかるものもあります。
作図は、根本原理を問うものでありながら、ポイントを抑えた表現が必要でした。

問題別寸評

(生物)アミラーゼのはたらきに関する問題です。
前半は、でんぷんにだ液を加える典型的な実験。後半は、コムギの種子に含まれるアミラーゼのはたらきを見る実験の2段構えです。でんぷんを消化するアミラーゼのはたらきが理解できていれば迷わず解答できる問題です。

実験で用いるでんぷん液の作り方を答える問題です。でんぷんとしては、コーンスターチや片栗粉を使用することが多いのですが、常温の水にはとけないので工夫が必要です。でんぷんの種類にもよりますが、だいたい60~80℃くらいの水であれば、とかすことができます。いったんとければ、でんぷん糊
のように、さましても固体が出てくることはありません。作ったことがなくても、選択肢なので、解答しやすかったのではないでしょうか。

でんぷんが消化されると糖に変化し、ヨウ素でんぷん反応が見られなくなります。実験1、2ともに、結果が書かれているので、迷わず解答できます。

実験1、2ともに、どの試験管も全体の量が0.5+2=2.5(mL)になるようにそろえてあります。また、加えるでんぷんの量も同じです。このように、確かめたい条件以外は、すべてそろえなければならないことは、実験の鉄則としておぼえておきましょう。

3と同じように、実験の条件をそろえるためには、加えるヨウ素液の量も同じにしなければなりません。

実験2の試験管CとDのちがいは、でんぷんを加える前のだ液を加熱したか、しなかったかです。試験管Cのだ液は100℃で20分加熱したため、だ液アミラーゼはでんぷんを消化するはたらきを失っていると考えられます。これも、典型的な実験なので、迷うことなかったのではないでしょうか。

コムギの発芽には空気が必要です。図1のイメージから、ついイネと取り違えてイを選んでしまった生徒がいたかもしれません。このようなひっかけには、注意が必要です。

アミラーゼがはたらくと、でんぷんが分解されることは、実験1,2で確かめたことです。コムギの実験で、断片Y(胚なし)をのせた寒天のでんぷんはそのまま残っているのに対し、断片X(胚あり)をのせた寒天では、断片に近いところでヨウ素でんぷん反応が見られなくなっています。また、寒天は種子の外にあたりますが、それでもアミラーゼがはたらいていることがわかります。
エやオについては、ヨウ素液を加えたのは、断片を取りのぞいたあとの寒天なので、断片に含まれるでんぷんについてはわかりません。

(地学)太陽の動きと日食に関する問題です。
緯度のちがう地点での、太陽の高度や動きの違いについて考える問題です。典型的な内容ですが、あれこれ聞き方を変えて畳みかけるような構成になっています。グラフの読み取りや作図もあるので、集中力を切らすことなく、しっかり考えて解答するように心がけることが大切です。

1(1)

「ある日」とは、図2のグラフのデータを取り始めた初日のことです。X地点、Y地点ともに、北半球にあるので、太陽の南中高度が最も低い日が冬至の日、最も高い日が夏至の日です。グラフの始まりは冬至の日の前で、秋分の日よりもあとと、読み取ることができます。

1(2)

低緯度のX地点の方が、同じ時期の太陽の南中高度が高くなります。
取違いのないよう、注意しましょう。

1(3)

X地点、Y地点ともに、春分の日の翌日から、秋分の日の前日まで、日の出の位置が真東より北寄りになります。図2のCやGが春分の日、EやJが秋分の日と考えると、その間のD、H、Iがあてはまります。

1(4)

図1からわかるように、南中高度は1年中、X地点の方が高くなります。
昼の長さは、春分の日はどこでも同じですが、夏至の日は高緯度のY地点、冬至の日は低緯度のX地点の方が長くなります。

1(5)

知識として知っている生徒が多いかもしれませんが、図2で確認することができます。たとえば、X地点の春分の日(C点)と、南中高度が同じになるのは、Y地点では夏至の日の前後(I点など)です。このとき、Y地点の方が昼の長さが長くなります。

1(6)

① 図1を真上から見ている、ですから、太陽が通る方が南で、対するアが北にあたります。また、太陽の移動経路は東から西ですから、イがあてはまります。
②、③→合否を分けた一題参照。

2(1)

「晴れていたのに、一晩中月を見ることができなかった」のですから、月は太陽と同じ方向にあり、新月であったことがわかります。「地球―月―太陽」の順に並んでいるときのようすとして、イを選びます。

2(2)

2019年は、日本で部分日食が2回観測されて話題になったことから、準備していた生徒も多かったと思われます。ですから、新月の日に起きる天文現象といえば日食だと、容易に思いつくことができたのではないでしょうか。図4のグラフからは、天文現象が起きている午前中の時間に、一時的に気温が下がっている様子がわかります。これは、太陽が月にかくれて暗くなる間、太陽の熱が届かなかったからと考えられます。

(化学)海水の成分と溶解度、固体の分類についての問題。
海水には食塩(塩化ナトリウム)だけでなく、微量なミネラル分が何種類か含まれていて、これをまとめて「にがり」といいます。白色固体の大部分が食塩なので、煮詰めて出てきた食塩を取り除いたろ液には、にがりが多く含まれていると考えられます。ここでは、溶解度とてらして、数的処理を行い確かめます。
後半の固体の分類では、二酸化炭素の吸収量にふれています。海水は基本的に食塩水ですから、二酸化炭素の吸収量が、それほど多いわけではありません。多少、環境問題を意識した構成になっていると言えなくもありません。

1(1)

ろ過の装置については、よく出されます。ろ紙はろうとからはみ出さないこと、ろうとのとがった方の先はビーカーの内側のかべにそうようにつけることをおさえておきます。

1(2)

ろ過した海水なので、にごりはとれているはずです。食塩が溶けていることから、真水と比べると、凝固点(こおる温度)が低く、温まりにくく冷めにくくなっています。

1(3)

海水に溶けているのは、白色固体なので、固体が出てきたとき、鍋の内側が濃い色の方が観察しやすいと考えられます。

1(4)

表の数値を手掛かりに考えます。アは溶ける量の差を出して比較します。エは、たとえば、食塩と硫酸マグネシウムのように、20℃と100℃の溶ける量の大小関係が逆転する組み合わせを見つければ、正しいといえます。
「どの固体も」とある表現は、1つでも例外があれば正しいとはいえないので、注意しましょう。

1(5)

海水1kgに溶けている食塩は、1000×3.4/100×78/100=26.52(g)です。一方、20℃の水10gに溶ける食塩の量は、37.8×10/100=3.78(g)です。したがって、出てくる食塩の量は、26.52-3.78=22.74(g)です。

1(6)

1(7)

飽和水溶液の底に、再結晶した白色固体が現れます。水溶液は飽和していても、どの場所も濃さが均一なので、ウを選びます。ここは、原理原則に沿って考えます。

2(1)

固体の分類の問題です。水にとけるのは食塩と水酸化ナトリウム、水に浮くのはろう、沈むのはアルミニウムと石灰石です。Cを加熱するととけて火がついたことから、ろうとわかります。ろうが燃えると、水と二酸化炭素が発生します。うすい塩酸を加えると二酸化炭素を発生するDは、石灰石です。水酸化ナトリウム水溶液は、二酸化炭素をよく吸収するので、Bが水酸化ナトリウム、Aは食塩とわかります。

2(2)

Eはアルミニウムです。アルミニウムにうすい塩酸を加えると、アルミニウムがとけて、水素が発生します。

2(3)

水酸化ナトリウム水溶液はアルカリ性で、二酸化炭素を通すと中和反応がおこります。食塩水に二酸化炭素を通したときは化学反応が起きず、食塩水の水に二酸化炭素が溶けるだけなので、吸収される量は水酸化ナトリウム水溶液のときより少なくなります。
詳しい知識問題ですが、消去法で選択肢を選び、解答できる問題です。

(物理)ばねとてこのつり合いについての問題。
計算中心の問題です。しっかり勉強してきた生徒に、軍配が上がる構成になっています。

表から、ばねの自然長は、Aは8.0cm、Bは6.0cm、Cは12.0cmです。また、重さ30gあたりののびは、Aは2.0cm、Bは3.0cm、Cは1.5cmです。
①は、ばねAの自然長なので、8cm。
②は、ばねAとBの交点なので、表から60gがあてはまります。
③は、ばねBとCの交点なので、表から120gがあてはまります。
④は、ばねAとCの交点なので、(12-8)÷(2-1.5)×30=240(g)です。

おもりの重さが同じとき、のびが大きい順に、B>A>C となることから、解答できます。
グラフ2、3ともに、グラフの意味をすばやく読み取ることが大切です。

ばねAは、重さ30gで2cmのびるので、1cmのばすのに必要な重さは、30÷2=15(g)です。
単純明快です。

ばねがかたいほど、同じ重さでのびる長さが短くなります。したがって、C、A、Bの順になります。
言葉の意味がわかれば、迷うことはないでしょう。

ばねには、それぞれの下にさがっているおもりの重さがかかります。
① Aの長さ+Bの長さ=12+12=24(cm)
② Aの長さ+Bの長さ=12+9=21(cm)
③ Aの長さ+Bの長さ=12+6=18(cm)

ばねA1本あたりにかかる重さは、30gの1/2です。
このときのばねの長さは、8+2×1/2=9(cm) となります。

(1)ばねBとばねCが、同じ重さで同じ長さになるので、表より、それぞれに120gがかかり、長さ18cmであることがわかります。このとき、つるしたおもりの重さは、120×2=240(g)です。
(2)(1)のあとも、左右のばねには同じ重さだけ増えるので、のびが大きいばねBの方が下がります。
(3)(1)の状態からあと、のこりの600-240=360(g)を、ばねBとばねCにB:C=1:2になるように分配します。このとき、ばねBにかかる重さは全部で、120+360×1/3=240(g)、ばねCにかかる重さは全部で、120+360×2/3=360(g)なので、ばねにかかっている重さの比は、B:C=240:360=2:3となり、おもりをつるす位置は、逆比の3:2とわかります。典型的ですが、少々手間のかかる問題です。

合否を分けた1題

太陽の移動経路を図に書き入れる問題です。
基準となる線があらかじめかき入れてあるので、それを手掛かりにすればよいのですが、南中・日の出・日の入りの場所を、的確にかき分ける必要があります。ただ漫然と少しずらした位置に線をくのではなく、図1を見て確かめながらミスなく処理しなければならず、合否を分けた一題としました。

1(6)②、③

② 図にあらかじめ引いてある線は、Y地点の夏至です。かき入れるのは、同じ地点の冬至です。図1のY地点の図を見ると、冬至の日の太陽は、日の出と日の入りが大幅に南寄りで、南の低い位置を通ることがわかります。図のように、基準の線に並行な線を、ぐっと南寄りにかくとよいでしょう。

③ 図にあらかじめ引いてある線は、Y地点の夏至です。かき入れるのは、X地点の夏至です。図1のX地点の図を見ると、夏至の日の太陽は、日の出と日の入りがY地点に比べて真西・真東に近くなっています。また、南の高い位置を通るので、円の中央に近いところを通ります。
図のように、基準の線とは、日の出後と日の入り前に交わるように線を引きます。

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