Ⅰ | 1(1) A (2) A (3) A 2(1) A (2) A (3) A |
---|---|
Ⅱ | 1 A 2 A 3 A 4 B 5 A 6 B 7 A 8 A |
Ⅲ | 1(1) A (2) B (3) A 2(1) A (2) A (3) A (4) A 3 A 4 (1) A (2) A (3) A (4) A (5) B |
Ⅳ | 1 A 2 (1) A (2) A (3) A (4) A (5) A 3 B 4(1) A (2) A (3) A (4) A 5 B |
A…女子学院合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2017年度の女子学院も、この学校らしい思考力が試される良問でした。
Ⅰ・Ⅱは、与えられたデータを適切に処理し、考えを進める問題。
Ⅲ・Ⅳは、実験を通して、次の実験の結果を予想する問題。
難問はないものの、グラフや表から、実験や観察の結果を読みとり、考えを進める問題が中心となっていて、データをどう処理して解答に活かすかが問われます。
同時に、確かな基礎知識の裏付けも必要とされており、まさに、両輪そろってこそ、正答に到達できることを、実感できるのではないでしょうか。
さらに、女子学院は、問題数が多いため、手を動かしながら、必要な情報を選び取り、迅速に処理する力が必要です。
また、ここ数年の難関校共通の傾向として、題材はさまざまですが、地球の環境や生物との関係を問う問題が、必ずと言っていいほど出されています。ふだんから、ニュースやいろいろな議論にふれ、勉強で得た知識と関連付けて考えるようにしましょう。
問題構成は、4分野から大問4題、小問60問。
解答形式は、言語が16問、数字が4問、記号選択が35問。記述が4問で昨年に比べて大幅に減り、昨年はなかった作図が1問出されました。計算問題は取り組みやすくなっていて、記述も典型的な内容でした。選択肢が多くなったものの、深く考えさせる問題が多く、若干難易度を上げながら、ぐんと洗練された印象です。
(地学)太陽系の惑星についての問題です。
惑星についての知識問題から、半径・体積・密度の情報を手掛かりに、惑星の特徴を理解し、分類します。さらに、各惑星の大気の比較、地球の大気の変化と生物の歴史の関連へと考えを進めます。確実な知識と、根本理解が必要です。
説明文から、あてはまる惑星の名前を書く問題です。8個の惑星のうち、地球をふくむ6個の惑星を取り上げていて、確かな知識が求められます。
A:環をもつ惑星のうち、最も巨大な環をもつ土星を選びます。
B:日本の金星探査機「あかつき」は、金星周回軌道投入のニュースで話題になりました。
C:火星には、数か国がいくつかの探査機を送り込まれ、いろいろな発見がされています。
D:8つの惑星のうち、一番外側を公転しているのは、海王星です。
E:木星には、これまでに67個の惑星と3本の輪が発見されています。
表の数値を適切に処理する力をみる問題です。必要なデータを抽出し、計算し、判断します。
① 表の惑星の半径を比べると、数千kmの地球・B・Cと、数万kmのA・D・Eにわけられます。また、密度の数値も、地球・B・Cの値が近く、A・D・Eとは区別できます。グループXは地球・B・C、グループYはA・D・Eとなります。
② 惑星全体の重さは、密度に体積をかけた値で比較します。グループYのうち、惑星の重さが最も小さいのはDで、1.64×60=98.4。地球は5.52×1=5.52 ですから、98.4÷5.52=17.82(倍)です。選択肢のうち、アが最も適当です。
③ グループYの土星・海王星・木星は、すべて地球の外側を公転しています。
物質には固有の密度があり、他の物質と区別する手掛かりになります。
表から、グループXの地球・金星・火星の密度は、3.93~5.524(g/cm3)となっています。
水の密度は、1(g/cm3)前後です。ドライアイスも、約1.5(g/cm3)で、水より少し重い程度です。水素・ヘリウムは、水よりももっと軽い物質です。選択肢のうち、ア~エは軽すぎるので、オの岩石・金属を選びます。
表の数値の意味を把握できているかを確かめる問題です。地球・金星・火星は、グループXの惑星です。
① ちっ素の量=大気全体の重さ×ちっ素の重さの割合 で比較します。表から、地球は1×0.76=0.76、金星は90×0.02=1.8、火星は0.005×2=0.01 なので、金星が最も多いとわかります。
② 二酸化炭素の量=大気全体の重さ×二酸化炭素の重さの割合 で比較します。表から、金星は90×0.98、火星は0.005×97 なので、(90×0.98)/(0.005×97)≒100000/5=20000(倍)です。選択肢をにらみながら、すばやく概算しましょう。
今から約27億年前、光合成を行う生物(植物)が誕生すると、地球の酸素量が増加しました。このように、生物もまた、地球の環境をかえてきました。
これも、地球の環境の変化に関する問題です。環境についての知識がなくても、二酸化炭素をキーワードに考えをすすめることで、十分対応できます。
二酸化炭素の性質を思い出してみると、
・水にとける
・石灰水に通すと、白くにごる。
⇒水酸化カルシウム(石灰水の溶質)と二酸化炭素が反応して、水に溶けない炭酸カルシウムができる。
が、まずあげられます。
① 地球の表面の約7割が海です。この大量の水に、多くの二酸化炭素が溶け込んでいます。
② ウミユリ・サンゴ・貝類の殻の主成分は、炭酸カルシウムです。
③ 石灰岩は、炭酸カルシウムがたい積してできた岩石です。
(生物)日本の気候とバイオームに関する問題です。
陸上で構成する割合の高い生物の種類によって、分類される体系のことを、バイオームといい、高校生物で学ぶ内容です。バイオームの分布と気候の関係は、植物が中心となります。
普段目にしない題材ですが、実は、女子学院では、2015年に、世界の気候とバイオームに関する問題が出題されています。他校の入試問題でも取り上げられており、今後は、環境問題と関連付けた出題が定番化する可能性があります。
知識の問題です。日本の自然遺産は4つです。その位置と特徴・登録基準を確認しておきましょう。
A:屋久島の縄文杉は有名です。杉の寿命はふつう500年ぐらいですが、栄養が乏しい花崗岩の山に育つ屋久杉は、生長が遅いために、寿命が長くなったと考えられています。樹齢1000年以上の杉を、屋久杉といいます。
B:ブナは落葉広葉樹で、日本の温帯林を代表する樹木です。
表1の「森林の種類」は、その地域のバイオーム(しめる割合が多い樹木の種類)です。
(出典:アート工房/R_Bi_個体群間のまとまり_19)
日本のバイオームは、南北方向(緯度)と鉛直方向(標高)を組み合させた分布が見られます。
北から、
針葉樹林:トドマツ・エゾマツ・モミなど、葉の耐寒性が高い常緑樹の林
夏緑樹林:ブナ・ミズナラ・トチノキ・クリ・ケヤキ・シラカンバ・カエデなど、落葉して冬を越す樹木の林
照葉樹林:スダジイ・アラカシ・タブノキ・クスノキ・ツバキなど、常緑樹の林
亜熱帯多雨林:マングローブ・ガジュマル・ソテツ・ヤシなどの樹木の林
となります。
選択肢のうち、ウは針葉樹林、エは亜熱帯多雨林です。
① は常緑樹ですから、アを選びます。②は落葉樹ですから、イを選びます。
ふつう、月平均気温で5℃以上のときに、植物は生育します。日本では、1年間のうち、月平均気温が5℃以上の月について、それぞれの月の平均気温から5℃を引いた値の合計を、「暖かさの指数」とし、バイオームと対応させます。
「暖かさの指数」は、月平均気温が5℃以下の月をカットすることで、マイナスの値を0にします。5℃以下の月が多かったり、その月の気温が低かったりすると、「暖かさの指数」の値は、全体に大きくなります。したがって、「暖かさの指数」が大きい照葉樹林の方が、夏と冬の気温差が大きいといえます。
同じ屋久島でも、標高がちがうと、バイオームがちがう場合があります。
① 標高60mから標高1936mまで上がると、(1936-60)÷100×0.6≒11 より、約11℃気温が下がります。
② 宮之浦岳の頂上の月平均気温は、1年を通して尾之間より11℃低いものとして計算します。
宮之浦岳の頂上の「暖かさの指数」は、2+5+8+11+12+10+7+3=58 となります。
③ 「暖かさの指数」が58のとき、森林の種類(バイオーム)は「夏緑樹林」があてはまります。
温暖化と、バイオームを結び付けて考える問題です。
合否を分けた一題で取り上げます。
知識の問題です。ヒグマは北海道だけに生息しています。ツキノワグマは、広く日本全国に生息していますが、九州にはいないといわれています。
7を導入として、動物が生息する地域は、気候だけでは決まらない場合があることにふれています。固有種のように、限られた場所で、独自の進化をする生物は、他の陸地から離れている島などで多く見られます。また、鳥や魚などのように移動能力があるものは、比較的固有種になりにくいといえます。
同じような気候のところに、いつも同じ生物が生息しているとはかぎらないのです。
(化学)物質の三態・熱の伝わり方・金属と塩酸の反応に関する問題。
化学分野の問題をいくつか集めた問題になっています。基本的な内容でありながら、根本原理の理解が求められる問題です。
温度によって、固体・液体・気体の状態が決まります。
加熱をはじめてからA:氷のみ
A~B:氷と水
B~C:水のみ
C~D:水と水蒸気
D~E:水蒸気のみ
横軸は、温度を表します。縦軸の体積は、水の場合、温度が変化したときより、状態変化が変化したときの方が、大きく変化します。
-3℃~0℃:固体の氷です。
0℃:固体の氷から、液体の水に変化します。このとき、体積が約1/10だけ減ります。氷から水になる間、温度は0℃で一定です。
0℃~3℃:体積の変化はわずかです。水の体積は4℃で最も小さくなります。
「AからBまで」加えた熱は、氷が水に状態変化するために使われます。また、「CからDまで」加えられた熱は、水が水蒸気に状態変化するために使われます。
A~Bにかかる時間より、C~Dにかかる時間の方が長くなっていることから、氷が水になるときより、水が水蒸気になる方が、多くの熱を必要とすることがわかります。
水は、温まりにくく冷めにくい物質です。
同じ時間だけ加熱したときに、温度上昇が少ない方が水です。グラフから目分量で読みとると、加熱時間3分のとき、水の温度は57℃で、57-30=27℃ 上昇したことがわかります。
水・油とも、グラフのかたむきは、加熱時間とともに少なくなっています。これは、加熱に対する温度上昇がしがいに小さくなっているからです。理由として、高温になった水や油からまわりの空気などに熱が伝わったためと考えられます。熱は、高温のものから低温のものに伝わりますが、温度の差が大きいほど、より多くの熱が伝わります。
水や油と、まわりの空気などとの間に、熱を伝えにくい材質を置きます。
3
① ~③ はじめ、鉄板・発泡ポリエチレンの板は、ともに室温と同じ温度です。手のひらは、これより温度が高いため、さわったときに、手の温度が板に伝わります。熱を伝えやすい鉄板は、このとき冷たく感じます。
④ 板に氷をのせたとき、温度の低い氷に、空気や板から熱が伝わってとけます。鉄板の方が、発泡ポリエチレンより熱を伝えやすいので、早くとけます。
⑤ 金属の性質としては、ほかに、・たたくとうすく広がる。・引っ張ると細くのびる。・磨くと光る。・電気を良く通す。などがあります。
大きめのビーカーに氷水をつくり、試験管を入れます。氷水は0℃で一定なので、試験管の塩酸の温度も、0℃に保つことができます。
試験管の中の反応は、
塩酸 + 鉄 → 水素(気体) + 塩化鉄(加熱して残る固体)
です。
温度がちがっていても、とけた鉄の量は同じなので、あたらしくできた物質である塩化鉄の量も同じです。
水素の性質は、・最も軽い気体である。・爆発的に燃えて、水になる。・水に溶けない。などです。
塩化鉄は、黄色の固体で、水によくとける物質です。
反応量を整理すると、下の表のようになります。
反応した物質の量は、発生した水素の量に比例します。
Yにあてはまる値は、0.2×64/40=0.32
鉄0.4gのうち、0.32gがとけたので、0.08gが残ります。
鉄0.08gをとかすために必要な塩酸の量は、5×0.08/0.32=1.25≒1.3(cm3)
(物理)物の運動に関する問題。
実験結果から、わかることを考える問題です。
ふりこ・衝突・飛び出すおもりの運動(放物運動)について、根本的理解があれば、そう難しい問題ではありません。問題文をよく読み、実験結果をすばやく分析・処理していく必要があります。
ふりこの周期は、糸の長さで決まります。基本の知識です。
実験1で、AのふりことBのふりこは、ふりこの長さが同じなので、周期(1往復する時間)も同じです。①は、ふりこAの周期の1/4の時間。②は、ふりこBの周期の1/4の時間ですから、同じになります。
実験1で、AはBと衝突して静止するので、このときAの運動エネルギーは失われます。Bは、その運動エネルギーを受けとって動きます。AとBの重さは同じなので、衝突直前のAと衝突直後のBの速さは、同じになると考えられます。Bが、最初のAと同じの高さに到達していることからも、Aの運動エネルギーが、すべてBの運動エネルギーとなったことがわかります。
実験2で、①は、ふりこBの周期の1/4の時間。②は、ふりこCの周期の1/4の時間です。ふりこBとふりこCの長さは同じなので、周期も同じで、①と②も同じになります。
実験2で、Aは衝突しても止まらず、運動を続けます。このため、衝突直前のAの運動エネルギーを、
衝突直後のAとCで分け合うことになります。このため、衝突直後のAとCの速さは、衝突直前のA速さより遅く、Cの最高点も、最初のAの高さより低くなります。
実験1で、①はふりこAの衝突直前の速さと同じです。実験2で、②はふりこAの衝突直前の速さより遅くなっています。
ふりこAとふりこCの周期は同じです。どちらも、衝突から周期の1/2の時間で最低点にもどってきます。衝突する前後のおもりの速さは、関係ありません。
実験結果の表を手掛かりに考えます。あてる球○が30gのときは成立しますが、90gのときは成り立ちません。したがって、✕です。
表のⅠとⅢを比べると、最初の高さが同じとき、Ⅲの飛距離は、Ⅰの1.5倍になっています。また、表のⅡとⅣを比べると、最初の高さが同じとき、Ⅳの飛距離は、Ⅱの2倍になっています。
表のⅠとⅣを比べると、最初の高さが同じなら、飛距離も同じになることがわかります。
表のⅠについて、最初の高さが1cmの場合と4cmの場合を比べると、飛距離が2倍になっていることがわかります。Ⅱ~Ⅳについても、同様です。
表のⅠについて、最初の高さが1cmの場合と9cmの場合を比べると、飛距離が3倍になっていることがわかります。Ⅱ~Ⅳについても、同様です。
ア:表のⅠの最初の高さが1cmのとき、飛距離は20.0㎝です。最初の高さが36㎝のとき、36=6×6より、飛距離は6倍の120㎝(20×6)です。
イ:表のⅡの最初の高さが1cmのとき、飛距離は10.0㎝です。最初の高さが36㎝のとき、36=6×6より、飛距離は6倍の60㎝(10×6)です。
ウ:表のⅢの最初の高さが2cmのとき、飛距離は42.4㎝です。最初の高さが18㎝のとき、この9倍の高さなので、9=3×3より、飛距離は3倍の127.2㎝(42.4×3)です。
エ:表のⅣの最初の高さが3のとき、飛距離は34.6㎝です。最初の高さが27㎝のとき、この9倍の高さなので、9=3×3より、飛距離は3倍の103.8㎝(34.6×3)です。
飛距離が110~130㎝になるのは、アとウです。
見たことがない題材についての問題に取り組むとき、必要最低限の情報から、①問題文を正確に読み取ること。②データ処理を適切に行うこと。が必要になってきます。
どの問題にも、何らかの根拠があります。問題であたえられた情報の意味を理解し、論理的に考えながら解き進みましょう。
Ⅱでは、①気候とバイオームの関係。②気候は、緯度や標高と関連していること。③温暖化によって、バイオームが変化する可能性があること。を論理的に展開しています。
櫛石山の「暖かさの指数」は57なので、バイオームは夏緑樹林です。表1を見ると、地球温暖化の影響で気温が上がると、バイオームが夏緑樹林から照葉樹林に変化する可能性があることがわかります。
照葉樹林は、「暖かさの指数」が85~180の森林です。櫛石山は、少なくとも85-57=28 増えると、照葉樹林に変化すると考えられます。
ア:1×7=7 より、「暖かさの指数」が7増加。
イ:2×7+1=15 より、「暖かさの指数」が15増加。
ウ:3×7+2=23 より、「暖かさの指数」が23増加。
エ:4×7+3=31 より、「暖かさの指数」が31増加
ここまでで、28を超えるエを選びます。