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国語の合否を分けた一題

本郷入試対策・国語の合否を分けた一題(2019年度)

難易度分類

①A ②A ③A ④B ⑤A
問一 A 問二 B 問三(ⅰ) A (ⅱ) B 問四 B 問五 B 問六 B 問七 A 
問一 A 問二 A 問三 B 問四 B 問五B 問六 B 問七 B 問八 B 問九 B

A…本郷中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題

総評

例年同様に、大問一が漢字5問、大問二が説明的文章、大問三が文学的文章という出題でした。記号選択の問題がほとんどを占め、大問1つにつき記述が1題出題されるのも例年通りです。今年は70字以内の記述と50字以内の記述が1問ずつありました。近年の本郷中の国語では、以前よく出題されていた表現技法の問題や文法・言語知識の問題が減り、長文の選択肢を読ませる問題が増えてきています。知識問題の占めるウェートが高かった以前と違って、素材となる文章を読むスピードや、正確に文章の内容を把握して選択肢を選ぶ力が重視されています。一方、他の男子難関校に比べると記述問題の量は少なく、書く力より読み取る力を重視する学校であると言えます。選択肢の読み取りでは、「文章の内容に合致しているけれど、本筋とはずれていて正解にふさわしくないもの」「筆者の主張を的確にとらえているけれど、一か所だけ間違いが含まれているもの」など、微妙なところで正解が決まる選択肢が多い傾向にあります。対策として、選択肢の文章の本文と合致している部分に〇、間違っている部分に×をする習慣をつけておくことが有効です。

問題別寸評

漢字の問題です。

宮内泰介『歩く、見る、聞く 人びとの自然再生』より

問一

aからcにあてはまる接続詞を選ぶ問題です。空欄の前後の文章の要点を読み取れば解ける問題なので、本郷中合格を目指すお子さんであれば全問正解したいところです。

問二

筆者の主張を選ぶ問題です。ここでポイントとなるのは「小椋氏の研究を通しての筆者の主張」を答えるところです。図1についての小椋氏の研究内容そのものを答えるのではありません。問いの文章を読まずに答えてしまうと、エを選んでしまいがちですが、こちらは小椋氏の研究のまとめであり、筆者の主張ではありません。本文の内容に合致しているかどうかだけで判断するのではなく、設問の指示に従うことを意識しましょう。

問三

(ⅰ)
傍線部の表現がどういうことであるか、言い換えているものを選ぶ問題です。傍線部にある「草地の歴史」について、直前の3つの段落の内容をまとめれば正解が出ます。また、他の選択肢の内容を見てみると、「人間が…しっぺ返しを食う」「人間も草地の保護に努めなければならない」「人間は立ち直ってきた」など、直前のまとめの段落と無関係なものがあるので、それらを除外していっても正解にたどり着けます。

問三

(ⅱ)
合否を分けた一題で解説します。

問四

傍線部の一部の表現を言いかえて詳しく述べた部分を問題文中より抜き出す問題です。設問の「地球最後の氷河期」以降という表現に着目すると、傍線部の直後にある「氷河期が終わると…」より後の二つの段落のどこかに答えがあると予想できます。さらに設問の「自然の変化の要因」という言葉の言いかえを探し、「この一万年くらいの日本列島の自然の変化の基調」を見つけましょう。この表現は答えとなる五十字以内の部分をまとめて抽象化したものなので、その直前の部分を抜き出せば正解になります。

問五

傍線部の内容について説明した文章の穴の部分を抜き出す問題です。傍線部の直後にある「縄文時代から人間活動の影響が見られること」「時代ごと、そして地域ごとに植生がずいぶん違うこと」が正解と同じ内容ですが、二十五字という条件に合わないので、この二つの表現の言いかえを探します。後ろの段落に続いている具体例をざっと流し読みすると、その後にあるまとめの段落から正解が見つかります。

問六

本文の穴埋め問題です。植物の花粉の化石についての地方別年表を読み取って、穴になっている文章がどの地方のことを説明しているかを考えます。このように、国語のテストで理科や社会の題材になる表やグラフを読み取らせる問題は、近年いろいろな学校で出題が増加しています。一見すると簡単な問題ですが、説明文中に出てくる植物名と年表の植物名が一致していないところがあるので、そこだけを見ていると間違ってしまいます。栽培イネの痕跡と火事に注目して答える必要があります。Ⅰは1000年前から稲作・火入れ・ソバ栽培がおこなわれているところを探すと簡単に見つかります。Ⅱは本文に書いてある植物の名前に注目する人が多いと思いますが、2500年前からマツ、ナラ、クリ、シイが増加したところを探すと、この4つと完全一致する地域がないので絞れません。900年前のマツ、ナラなどの増加やイネ科やヨモギ属の増加についても完全一致する地域がありません。そこで火事の年代に着目します。2500年前ほど前に火事があって、900年前に再び火事が起こった地域は一つしかないので、ここから正解が導けます。Ⅲも植物の名前だけを参考にするとどの地方の説明か特定できないので、2500年前から栽培されたイネの痕跡が残っていて、1200年前ごろには微粒炭が見られなくなる地域を探しましょう。

問七

設問の文が問題文の内容と合致するかどうか、〇×で答える問題です。一つ一つの文の内容を本文と対照していきましょう。Aは傍線2の直後の文章に同様の内容があります。Bは注6の直前の部分に同様の内容があります。Cの内容について本文では「肥料や牛馬の餌として草地が必要」だから「明治期より江戸時代の方が草地の面積は広い」と「推測」しています。設問のCの文は因果関係が逆になっており合致しません。Dは「刈敷や焼畑で草地が減少してしまった」のではなく、焼畑や刈敷などの目的で草地が利用されていたと注2の後の段落にあるので合致しません。Eには「昔は森林がもっと豊かだったが、今では減少してしまった」という箇所がありますが、bの前の段落に「日本列島の森の面積は、過去の歴史の中でもたいへん多い時期にあたる」とあるので、合致しません。

門井慶喜『銀河鉄道の父』より

問一

宮沢賢治の作品でないものを選ぶ問題です。『蜘蛛の糸』は芥川龍之介の小説です。

問二

空欄に当てはまる言葉を選ぶ問題です。空欄がある文に、「ちょうど人間集団において、単なる烏合の衆にすぎないものが、目的と、機能と、体系とをそなえたXとなるがごとく」とあるので、Xは「人間集団」や「烏合の衆」と同じ性質を持った言葉であることがわかります。

問三

傍線部の比喩表現の意味を選ぶ問題です。傍線部の「左右に割れつつある大地」が何の比喩なのか考えましょう。直後に「いずれ股が裂けると知りながら」とあるので、割れる大地の比喩は「子供への感情の矛盾」を表していることが分かります。矛盾というのは二つの考え方が論理的に並び立たないことなので、政次郎の賢治に対する相反する感情が書いてあるところを探します。「(だいじょうぶか)」と賢治の将来を危ぶむ気持ちと、賢治の「(助けになりたい)」という気持ちが書いてある選択肢を選びましょう。

問四

傍線部の身体表現から視点人物の心情を読み取り、ふさわしいものを選ぶ問題です。「叱り口調」になった理由は本文中に明示されていませんが、明らかに間違っている箇所が分かりやすいので難問ではありません。「石の名前には複雑で発音しにくいものが多く」や「頭が固い賢治」という表現は本文にありません。また、「怒りがこみあげてきている」という心情は、賢治のために一か月間勉強をしてきた政次郎の気持ちとしてふさわしくありません。政次郎が鉱物学の入門書を読み、学者に教えを乞うたのは、「父親としての威厳を保」ちつつ、賢治を助けるためだと考えられます。

問五

傍線部の独白から視点人物の心情を読み取り、ふさわしいものを選ぶ問題です。傍線部の「これ」という指示語の内容を明らかにすると、賢治が取り出した百個ほどの石の山について政次郎が感動していると分かります。同じような内容を述べている選択肢はアとエです。この二つを比べ、賢治が石へのめりこんでいることがはっきりわかる方を選びましょう。

問六

傍線部の内容を設問の指示に従って説明する問題です。傍線部にある「ここ」が、直前にある標本箱を指していることはすぐ分かります。しかし、標本箱が欲しいという賢治の気持ちを書くだけでは不十分です。また、標本箱をどのように使用するかを具体的に書きすぎると字数が足りなくなります。「話を」「ここへ落としこむ」と傍線部にあるので、政次郎と賢治の会話においての賢治の狙いを書けば正解になります。賢治の狙いは、何のために標本箱が必要であるかを政次郎に説明し、政次郎を説得して標本箱を買ってもらうことです。

問七

傍線部の身体表現から視点人物の心情を読み取り、ふさわしいものを選ぶ問題です。「蚊の鳴くような声」は弱々しく細い声の比喩で、政次郎に自信や確信がないことが分かります。この文章のテーマである、政次郎の「子供への感情の矛盾」、賢治の将来を危ぶむ気持ちと賢治の助けになりたい気持ちが表現されているものをまず選びましょう。その上で、本文からは読み取れない、お金の支払いに対する不安が書いてある選択肢を除けば正解となります。

問八

傍線部の身体表現から視点人物の心情を読み取り、ふさわしいものを選ぶ問題です。政次郎が賢治に対してどう接すればいいか悩んでいることが書いてある選択肢をまず選びましょう。そして、「鼻歌をうたっていた」との表現から、政次郎の嬉しさや喜びが分かります。この嬉しさの前提になっているのは、傍線部の直前にある「理解ある父になりたいのか、息子の壁でありたいのか」という悩みです。政次郎は息子への接し方に悩みながらも、息子の人生に関われることに嬉しさを感じているのです。

問九

物語文の表現技法に関する問題です。「ような」「みたいな」を使った表現技法は直喩です。本文中の( )は政次郎の心中を強調するために使用されていますが、賢治についてだけではなく、賢治が集めた石についての感動も( )で表現しています。「…」は三点リーダーという表現で、無音の状態が続くことを表しています。どうして賢治が無音になったのかを考えれば正解は明らかです。また、この物語文は、政次郎の視点から時系列に沿って進んでいくので、回想場面の挿入や視点人物の変更はありません。

合否を分けた一題

問三(ⅱ)

傍線部のことばについて説明する問題です。設問の指示が具体的なので、指示通りに解答を書くことを意識しましょう。字数が60~70字とやや長いのですが、詳しく書きすぎるとすぐに字数をオーバーしてしまいます。本文の該当箇所は見つけやすいですが、要素を過不足なく入れて抽象化することが難しく、解答力が問われる問題です。書くべきことは分かっているのに字数制限に引っかかって長い時間を使ってしまったり、大事な要素が抜けてしまったりした受験生は多かったのではないかと考え、合否を分けた一題として取り上げることにしました。
考え方

(ⅰ)で答えた「草地の歴史」について、なぜ「草地」が「減少」したのかの理由を答える問題です。(ⅰ)の答えを利用すると、人間の活動が草地減少の理由になることが分かります。そして設問に、「草地」が「維持」された理由を踏まえながら、とあるので、これに近い表現をまず探します。すると、cの直後の部分に「草原は維持されてきた」という表現が見つかります。この表現を含んだ「火山の噴火、あるいは…草原は維持されてきた。」が該当箇所となります。

次に草地が減少した理由を探します。維持されてきた理由の直後の段落は、草地が具体的にどう利用されてきたのかを書いた部分なので、中型記述の解答では必要ない部分となります。この部分を解答に入れると字数制限に引っかかるので、ばっさりと切り捨てましょう。「草地」「減少」に近い表現を探していくと、傍線部1の前の段落の最後に「草地は消滅していった」とあります。この表現の前の部分「しかし、燃料が…草地は消滅していった。」が該当箇所となります。

この二つの部分の内容をまとめてみます。

・噴火や洪水に加え、人間が刈り取ったり焼いたり放牧することで草原は維持されてきた。
・燃料が化石燃料に、肥料が化学肥料に変わると草地は生活に必要な場所ではなくなった。
・もともと草地だったところに大量の杉が植えられた。

そのまま上記三点を繋げると以下のようになります。

噴火や洪水に加え人間が刈り取ったり焼いたり放牧することで草原は維持されてきたが、燃料が化石燃料に肥料が化学肥料に変わると草地は生活に必要な場所ではなくなり、さらにもともと草地だったところに大量の杉が植えられたから。(107字)

条件は60~70字なので、抽象化してまとめます。

草地は噴火や洪水に加え人間の活動で維持されてきたが、燃料と肥料の変化で人間の生活に必要な場所ではなくなり、大量の杉も植えられたから。
(65字)

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