過去10年間の出題は、大問3(平成24,23,21,19,17,15)、大問4(平成22,20,18,)、大問5(平成16)となっており、大問3題というのが近年の傾向です。
長文問題は、2題出題される傾向にありますが、平成22年度のように3題の出題で、詩の問題が加わっている例もあります。文章の種類としては、物語文、)随筆、説明文の他に平成24年入試では、短歌の鑑賞文(俵万智さんの文章)がとりあげられました。
設問は、記述、ぬきだし、記号選択と基本的な出題形式は一通り見られます。幅広く、ことばの知識と使い方を問う問題が出題されるだけでなく、近年の傾向として、知能要素(情報の整理能力)が問われる出題が特徴的です(例として、平成24一問十、平成23一問七、平成22一問八①)。
記述問題の字数は、25字、30字、35字、50字(それぞれ指定字数以内)などですが、字数指定がない場合(平成21二問六)もありました。また、「自分の言葉で」15字以内、20字以内という例もあります(平成22一問五、二問四)。出題担当者により、出題傾向に変化が生じています。ある程度の幅をもって対応力を磨いていく必要があります。
漢字は、平成22年以降は、書き取り10題の出題となっています。熟語だけでなく、訓も出題されています。例年、書き取り問題が20問程度出題されています。文を読んで、まず、意味を考えて思い浮かべる必要がある問題が多いため、単純な漢字力というよりは、語彙力、教養、言葉のセンスを問う問題であると見ることができます。「はちくの勢い」など、語句知識が前提となっている問題、「たっぴつ」など、熟語の意味理解が求められる問題、自動車「しんにゅう」禁止など、社会常識要素が入った問題が出題されています。日ごろから多くの用例に触れているかどうかで差がつきます。
同じ慶應義塾系の中学校でも、それぞれ出題傾向は個性的です。語句知識を幅広く求めている点では共通しているとみることができますが、それぞれに特徴的な出題形式があることに注意が必要です。各校の重点の置き方を見きわめ、特徴的な出題形式に意識的な対策をうっておくことで、意味のある差をつけることができるでしょう。普通部は、読解、知能、知識の3要素のバランスがとれた出題といえます。ただ、慶應義塾系受験の場合は、普通部なら普通部だけでなく、他の2校の過去問も出題形式などを観察しておくことは有効です。
中等部で頻出の内容正誤問題が普通部で出題されたこともありますし、普通部で時折出題される韻文問題に備えたり、語句知識の問題の備えをするために中等部の過去問を活用することも考えられます。また、心情を問う問題(記号選択・記述)で求められる読みの深さは、3校でだいたい同じくらいの水準です。慶應義塾系を併願する場合でなくとも、慶應義塾系過去問の活用できる部分は活用していきましょう。