女子御三家の一角を成す雙葉中。
同じく女子御三家である桜蔭中の志望者には“男子難関校並みの問題をねじ伏せる力”が要求され、女子学院中の志望者には“尋常でないスピードで正確無比に処理する力”が要求されます。では、雙葉中の志望者に要求される力とは?
算数については、ここ10年間は全体の難易度が必ずしも安定していません。それ以前にも、年度によって難易度が大きく変わることがあり、その点においては受験生泣かせと言えるでしょう。さらに、2010年度から試験時間が40分から50分に変更され、初年度の今回は設問数が例年と同様であったため時間的な圧迫感が緩和されましたが、今後は試験時間増により設問数が増えるのか、難易度が上がるのか、しばらく様子を見る必要があります。
その一方で、“これぞ雙葉の算数”とも言うべき特徴があることも事実です。そこで、過去15年間の傾向変遷を踏まえたうえで、今後の50分間入試で要求される力を考えます。
雙葉中の算数の特徴として、出題分野の狭さが挙げられます。分野別分析表を女子学院中と比較してみて下さい。どちらもほぼ同じ項目別に整理してありますが、雙葉中の方が空欄が多い、つまり出題分野がかなり絞られることが分かります。
狭い出題分野の中でも、ほぼ毎年出題されるのは、➀多角形・おうぎ形の複合図形、➁速さ、➂周期・規則性、➃和・差・比の文章題、の4分野です。また、かつては頻出でしたが、最近は忘れかけた頃に➄作図問題がひょっこり顔を見せます。
太古の昔から変わらぬ雙葉的王道とも言える傾向、それは“丁寧に堅実に”というもの。どんなにひらめき・直感・着眼点が鋭くても、作業・処理が大雑把な生徒は高得点が望めない算数なのです。
➀2007年度を除き毎年のように、分野を問わず、問題を解く過程で煩雑な小数計算が登場します。特に円周率計算は頻出です。
また、問題を解く過程で、ひたすら計算の連続になるという年度もあります。しびれを切らして計算ミスをした生徒から脱落していきます。
➁周期・規則性・条件整理・場合の数の問題では、“丁寧に堅実に”書き出す力、“丁寧に堅実に”問題文の内容を整理する力が要求されます。「所要時間を短くするために工夫の余地はあるけれども、“丁寧に堅実に”書き出していくうちに答えがすべて求められてしまう」のが雙葉的王道問題です。
➂配点は非公表ですが、設問数が少なく、単純計算で1問当たりの配点が10点前後になります。記述式であるため部分点が期待できるとはいえ、ミスは命取り。たった1つのミスで合否が決まります。その意味からも、“丁寧さ且つ堅実さ”が要求されると言えるでしょう。
解答用紙は存在せず、問題用紙の解答スペースに“式・計算・答え”を書き込んでいくスタイル。女子学院中や学習院女子中等科と同様です。
オール記述型であり、計算問題にすら過程の記入を要求するスタイルは、答えが正しければOKという感覚で取り組んできた生徒を縮み上がらせます。
算数に限ったことではありませんが、書くという作業について及び腰になる生徒、面倒がる生徒は、残念ながら雙葉中には不向きです。それでも、やはり雙葉中を志望したいのであれば、これまでの自分の姿勢を改めなければなりません。鍛えていきましょう。