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理科の合否を分けた一題

雙葉中入試対策・理科の合否を分けた一題(2016年度)

難易度分類

[1] 問1 A  問2 A  問3 B  問4 B  問5 B  問6 A
[2] 問1 A  問2 B  問3 A  問4 ③ A  ④ B
[3] 問1 B  問2 B  問3 C  問4 C
[4] 問1 B  問2 C  問3 C  問4 C

A…雙葉中学合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えれば良しとする問題

出題総評

大問は物理・化学・生物・地学の各分野から1題ずつの計4題、小問にすると25題でした。(2つ答える問題はそれぞれ、式と答えを書かせる問題は一つの小問として数えています。)

前半の大問1,2は易問でしたが、後半の大問3は読解力を要求される問題、大問4は半時事問題の難問でした。合格のためには、前半の易問で確実に得点を積み上げ、後半にならぶ難問のうちのいくつかを突破する必要があります。

その中でも、知識に頼らず、与えられた問題にしっかりと取り組むことで突破できるという点では、大問3の後半部分が大きなポイントでしょう。

これから雙葉中の入試に挑戦する人にとっては、大問4から学ぶことも多いと思いますが、今年の入試における「合否を分けた一題」という意味では、やはり大問3が鍵を握っていたように感じます。

問題別寸評

自然界の食物連鎖と個体数の関係(生物量ピラミッド)、生物濃縮に関する出題です。
生物濃縮は、数年前に高校入試ではやった出題ですが、最近、中学入試でも度々目にするようになってきました。今回は濃度の倍率を聞いただけの易問でしたが、食物連鎖を土台とし、環境問題にもつながる内容ですから、今後も多くの学校で出題されることが予想されます。

問1

「食物連鎖」という語句を記入させる問題で、基本中の基本と言えます。漢字指定こそありませんでしたが、確実に漢字で書けるようにしておきたい用語です。

問2

「直後には」という指定がありますので、短期的な変化を答えます。生物量(個体数)の変化を問う問題には、短期的な変化を問う問題と長期的な変化(元のバランスに戻る)を問う問題がありますから、この「直後には」という一言には敏感に反応してほしいところです。

問3

ぜひとも解いてほしい問題ではありますが、生物の生態に関する知識なので、知っている人と知らない人とで明暗が分かれたかもしれません。しかし、順序立てて考えれば正解にたどり着ける選択肢になっているので、諦めずに考えましょう。

(あ),(い),(う)に共通して言えることは、他の動物を食べている肉食の消費者(C)ですから、草食のウサギやクワガタではありません。この時点で、3つの空欄に3つの選択肢しかない状態になりますから、あとは最も適切な動物を選べば良いのです。

残った選択肢の中にクモがありますが、クモの巣で捕獲できる生物を考えれば、ガを食べている(あ)があてはまるということはすぐに分かるでしょう。

(い)は、「蛇(へび)ににらまれた蛙(かえる)」ということわざが連想できれば易しかったかもしれません。また、消去法からも(う)に入るのはフクロウしかありません。おとなしいイメージのあるフクロウですが、ワシやタカと同じ猛禽類(もうきんるい)という仲間に分類される獰猛(どうもう)な鳥で、ヘビやイタチもとらえてエサにします。

問4

知識としてはっきりと覚えている人は少ないと思いますので、文章を読んで想像できたかどうかが勝負の鍵でした。文章中のヒントを上手に利用して正解を見つけましょう。

まず、シカなどのように比較的大きな草食動物の天敵となること。そして、「人を襲うことはないことが示されています」と断った上で、「童話など事実と異なる話によって影響を受けている人が少なくありません」と書かれているということは、童話の中で人を襲うイメージが植え付けられている動物……つまり、正解は「オオカミ」です。

オオカミが最後に確認されたのは、1905年のことのようです。東京農工大学の名誉教授であり、日本オオカミ協会の会長でもある丸山直樹先生が、「オオカミを放つ――森・動物・人のよい関係を求めて」という著書の中で、オオカミを再導入して生物量ピラミッドを元に戻すという説を唱えています。

問5

社会的なニュースをチェックしている人にとっては、難なく答えられた問題だったでしょう。

普段生活している山の食べ物がなくなり、サル・イノシシ・クマなどが、人里に降りてきて農作物を食い荒らしたり、人を襲ったりする被害が、度々ニュースになっています。

問6

26.4ppmが0.00005ppmの何倍かを聞いているだけですから、これは確実に正解しておきたい問題です。

しかし、それだけの問題にしては、食物連鎖との関係を説明したり、途中のデータを示したり、ppmという単位の説明をしたりと、とても丁寧に問題を作り込んでいるように感じます。もしかしたら、これは、出題した先生からのメッセージかもしれません。

日常的に使用している電気や、その単位について問う問題です。消費電力については、学習指導要項に従えば中学校配当単元になりますが、知らなくても解けるように、問題文の中で丁寧に説明がされています。「電流はダメだ!」という先入観だけで避けてしまうと、もったいない問題です。

問1

問題文の中で、「100V」は電圧、「1200W」は消費電力であり、「消費電力=電圧×電流」という関係が与えられています。したがって、「1200(W)= 100(V)× ??(A)」という式が得られ、ドライヤーが使用する電流は12Aであることが分かります。

問2

問題文の内容がしっかりと理解できていればそれほど難しくはないはずです。

問1より、ドライヤーが使用する電流は12Aであり、ドライヤー以外に合計22Aの電流を使っていたのですから、これらを合わせると34Aを使っていたことが分かります。さらに、問題文には「お母さんがある1つの電気製品のスイッチを入れたことにより、電気の使用量が上限を超えた」とあり、その上限が40Aであることも読み取れます。したがって、お母さんがスイッチを入れた電気製品が6Aを超える電流を使用したことになります。

また、これも問題文の条件から、「家庭用の電気はどのコンセントからも同じ100Vの電圧が得られ」るので、6Aを超える電流を使うということは、100(V)× 6(A)= 600(W)を超える消費電力の電気製品があてはまります。したがって、電気ポット(800W)と電子レンジ(1000W)が正解です。

問3

表2で与えられた関係から、②の値は0.35~0.45(A)の範囲にあることが分かります。これをmA単位に換算すると350~450(mA)となりますから、図2の電流計の値は400mAであると分かります。したがって、使用した端子は500mA端子です。

問4

表1については、大変分かりやすい比例関係が見て取れますから、ほとんど間違えた人はいないでしょう。当然、アの「一定の割合で大きくなる」があてはまります。

表2についても、できれば確実に正解してほしい問題ですが、あわてて答えて間違えてしまった人も少なからずいるのではないでしょうか。電圧の値が大きくなればなるほど、電流の値はあまり増えなくなっていますので、ウがあてはまります。

特に問2以降については、読解力を試すような問題になっています。問題文の条件設定が回りくどく、しっかりと読み込む必要はあるのですが、中身さえ理解できれば計算は簡単……という、とても雙葉らしい問題です。

問1

「銅の黒さび」というものが、「酸化銅」を指しているということが分かれば、それほど難しい問題ではないかもしれません。酸化銅が赤茶色の銅(普通の銅)に戻ったのですから、酸素を失ったことになりますし、酸素を渡した相手については水素しか考えられません。

問2

「A液=相手を酸化させる」「B液=酸化する」という関係をしっかりとつかんでおきましょう。

実験2では、結果的にA液12㎤とB液10㎤とが過不足なく反応していることが分かります。そして、A液10㎤が酸素2mgを相手に渡すのですから、A液が12㎤使われたのであれば、相手には2.4mgの酸素を渡していることになります。

問3

制限時間が迫る中であせってしまったり、長い実験手順を読んでいられなくなって後回しにしてしまったりした人も多かったことと思います。しかし、問題文の条件をきちんと読み、落ち着いて一つずつ順番に求めていくことができれば、決して難しい問題ではありません。

しかも、問3が解けていれば、問4も比較的短時間で解ける仕組みになっていますので、この問題を「合否を分けた一題」として、最後に詳しく取り上げます。

問4

先述の通り、問3が解けていれば、この池の水100㎤を酸化するのにA液が3㎤使われたことが分かっていますから、ここから先は比較的簡単です。

A液10㎤が酸素2mgを相手に渡すのですから、使われたA液が3㎤であれば、この池の水100㎤は0.6mgの酸素を使っています。つまり、1L(=1000㎤)あたりに換算すると、6mgの酸素をうばっていることになります。したがって、CODは6です。

この問題は、COD測定の仕組みを受験生に教えると同時に、がんばって問3を解き切った人にもう一題分の得点をプレゼントするボーナス問題でもあったわけです。

少し前の話になりますが、2014年5月5日午前5時18分頃、伊豆大島沖の地下162kmを震源とする、マグニチュード6.0の地震が発生しました。地震大国日本ですから、地震が発生すること自体はさほど珍しくありませんが、この地震が特徴的だったのは、震源から近い神奈川県ではなく、少し離れた東京都千代田区だけで「震度5弱」を記録したことでした。ずいぶん話題になりましたので、覚えていらっしゃる方も多いことと思います。この問題の根底には、おそらくこの地震があるものと思われます。

地震の発生から入試まで、約1年9か月も経ってしまっていますから、時事問題とまでは呼べないのかもしれません。それでも、この現象に興味を持ってニュースの解説を見ていた生徒でなければ、この問題は難しかったのではないでしょうか。

問1

一見、イも正しいように見えますが、地層が海底で作られたということだけなら、2つの資料を比較しなくてもわかります。聞かれているのは、あくまで「比較してわかること」ですから、この問いの答えとしてふさわしいのはウでしょう。ポイントは、①と②の層が「ほぼ同じくらいの時期につくられた」ということです。

問2

この問題は、非常に難しかったと思います。

いくつかポイントはありますが、一つ目のポイントは問1でも答えた地層の違いです。①の火山灰層ができた時期が、貝塚ができた時期の少し前ということですから、貝塚が作られたころ(②のれき層ができた直後のころ)には、Bの低地部分ではまだ地層が作られ続けていたということになります。つまり、少なくとも低地の一部は、まだ海底にあったということが分かります。

しかし、これだけでは、「当時の気候を考えて」という題意には合いません。

そこで、Bの試料を改めて確認してみましょう。②のれき層が作られた後、砂層と粘土層が交互に積み重なっていることがわかります。これは、れき層が作られた時期よりも、Bの場所が岸から離れていることを意味します。つまり、何らかの理由で海面が上昇したと考えるべきでしょう。実際には、氷河期が終わり、氷が解け始めたことで海水面が上がったことが原因と思われます。

いずれにしても、そのために人々は標高の高い台地の部分で生活せねばならず、貝塚も台地に作られたものと想像できます。

問3

「大正関東地震」と言われるよりも、「関東大震災」と言われた方がピンとくるのではないでしょうか。もしかしたら、発生日が9月1日になっていることで気づいた人がいたかもしれません。(これが理由で、9月1日が「防災の日」と定められています。)

ここに気づくことができないと、なかなかこの問題で正解することはできないでしょう。

海や地形の話をしていた問題の流れから素直に考えれば、「津波」というキーワードが頭に浮かんでしまうと思います。しかも、この問題では、わざわざ「図1や図3の範囲内で大きな被害が出た原因」と限定していますから、なおさら「津波」や「洪水」を連想しやすかったことでしょう。

しかし、関東大震災では、地震が昼前に起こったために、火災で大きな被害が出たということを思い起こしてください。実は、「図1や図3の範囲内」というのは東京23区あたりのことであり、火災から逃れた人々が日比谷公園などに集まったという記録も残っているのです。

なお、大正関東地震による津波被害は、相模湾や房総半島沿岸が中心で、東京湾ではほとんど起こっていないようです。

問4

この大問の寸評でも触れた「千代田区だけ震度5弱を記録した地震」について、当時のニュースでは、「千代田区だけ震度が大きかったのは、震源が非常に深かったことと、千代田区周辺の地盤がやわらかいことが原因」と報じていました。

図3を見ると、日比谷のあたりに海が入り込んでいるのが分かると思います。これは「日比谷入江」と呼ばれており、江戸時代初期に埋め立てられて、大名屋敷となった地域です。このあたりに東京都千代田区の気象庁庁舎もありますので、大きな揺れを観測したことと関連があるでしょう。

大正関東地震(関東大震災)の時にも、大きな揺れを記録した場所がこの地域に密集しており、地震の揺れが地盤に影響することを物語っています。特に、砂層で揺れが増幅される傾向があるようです。

また、水分を多く含む地盤で液状化現象が起こりやすいこともよく知られていますから、この問題が要求している「共通すること」とは、水分を多く含むやわらかい地盤のことだと考えられます。

合否を分けた一題

今回の理科入試問題の中で、一番論理的な計算過程が求められる問題でした。

とはいえ、途中計算で多少分数が出てくる程度であり、雙葉中学を目指す受験生に課す数値問題としては、決して難しいレベルではありません。与えられた問題の文章をしっかり読み、一つ一つの数値の意味を考えながら、落ち着いて計算を進めましょう。

【問題】大問[3] 問3
まずは、「酸化される物質」と「相手を酸化する物質」とをしっかり区別し、過不足なく反応した量を意識して考えましょう。

酸化される物質 池の水 ②のB液 10㎤
100㎤ ( う )㎤ ( え )㎤
相手を酸化する物質 ( あ )㎤ ( い )㎤ 5㎤
①のA液 10㎤ ③のA液

上の表を見ながら説明していきます。

池の水100㎤に①でA液10㎤を加えると、A液が相手を酸化させる能力はまだ損なわれずに残っていました。つまり、池の水100㎤に酸素を与えたのは、最初に加えたA液10㎤の一部分である( あ )㎤で、10㎤中( い )㎤のA液がまだ残っていると考えられます。

この残ったA液から酸素をうばい取るために、②でB液10㎤を加えましたが、今度はB液を加え過ぎている状態になるため、B液10㎤中( う )㎤だけが使われ、( え )㎤が残りました。

このB液( え )㎤に酸素を与えるために、③でA液をさらに加えていったところ、5㎤加えたところで過不足なく反応したと考えることができます。

ここで、実験2の条件から、A液12㎤に対してB液10㎤、つまり、A液:B液=6:5の体積比で過不足なく反応することが分かります。

したがって、最後に加えたA液5㎤と過不足なく反応するB液( え )㎤は、
5 × = 4 (㎤) ( え )
これは、加えたB液10㎤の一部ですから、残りのB液( う )㎤は、
10 - 4 = 5 (㎤) ( う )
同様に、A液:B液=6:5の体積比で過不足なく反応することから、B液5 ㎤と過不足なく反応するA液( い )㎤は、
5 × = 7(㎤) ( い )
これは、加えたA液10㎤の一部ですから、残りのA液( あ )㎤は、
10 - 7 = 3(㎤) ( あ )

したがって、池の水100㎤を酸化するのに使われたA液は3㎤です。

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