1 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 B 問6 A 問7 A 問8 A |
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2 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 B 問8 A 問9 A |
3 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 B 問7 C 問8 A 問9 C |
4 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 B 問8 A 問9 A 問10 A |
A…麻布合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2019年度の麻布は、例年通り、長めの文章をしっかり読み取って理解し、根本原理に則って考察し、論理を見通すことができる力が求められる問題でした。つまり、読解力と問題解決能力の2つをそなえていることが大切です。
試験時間50分とはいえ、本年も文章量が多く、余裕はなかったのではないでしょうか。
生物分野の問題は、生物の生殖についての問題で、生殖についての根本理解と論理的思考がもとめられています。
化学分野の問題は、コーヒーを豆から淹れる方法についての問題で、酸化・摩擦熱についての理解、数的処理能力、道具のしくみを考える力が求められています。
物理分野の問題は、バイメタルや白金を利用した温度計についての問題で、熱膨張・電気回路・温度計についての理解、実験データの数的処理能力が求められています。
地学分野の問題は、暦法と日食・月食に関する問題で、暦の考え方・月の見え方・日食と月食・緯度と経度の理解、論理的思考力が求められています。
昨年のセッケンに続いて、生活に関連した科学の問題として、コーヒーが取り上げられています。
本年は、時事的題材が見当たらず、オーソドックスかつアカデミックな印象です。
対策としては、第一に、文章を読み解く力を養うこと。科学に関連した読み物やニュースに日常的に目を通すとともに、気象庁・国立天文台・JAXAなどのサイトを閲覧してもよいでしょう。その際、論理の道すじを意識し、自分の言葉で説明できるようになることを目指します。また、暦について問題文でふれることがたびたびあるので、調べておくと、読み取りがスムースになります。
料理・掃除・洗濯などの家事を、一通りやってみるのもよいでしょう。家事の道具や手順には、科学的な根拠があることに気付くはずです。道具や機械には目的があり、その目的をはたすための工夫がつまっています。道具や機械の取説を読み解くことで、問題解決の考え方を学ぶのもよいのではないでしょうか。
問題構成は、4分野から大問4題、小問43問。
理科の配点は40点ですから、一部組んでの採点として、1問1点と考えてよいでしょう。
解答形式は、選択肢が16問、記述が10問、数字が8問、言語が8問、作図が1問。
記述は昨年の6問にくらべて増加していて、いずれも字数指定がありませんでした。解答欄の大きさから考えると、10字程度が3問、1行程度が7問といったところです。
計算を要する問題は8問で、平年並みだった昨年の5問に比べ増加し、手間のかかる計算もあったため、苦戦した生徒もいたかもしれません。
選択肢は、記号だけでなく、示されたことばから選ぶものもありました。
作図は、指示されたものを入れる位置を、図の中にかき込むものでした。
(生物)生物の生殖についての問題です。
生きるために栄養をたくわえ、子孫を残すという、生存の大前提についての文章を読んで、設問に答える問題です。基本の知識と根本原理の理解が身についていることと、文章を読み取る力とが求められています。
空欄補充です。複数回用いられていることから、言葉をしぼっていけるようにつくられています。基本の知識の問題です。
ます。このとき、実際に合体(受精)する細胞が、卵細胞(卵)と精細胞(精子)です。これも、基本の知識です。
チューリップはふつう、球根を植えて育てます。この球根は、親のからだの一部(地下の葉)に、栄養をたくわえたものなので、無性生殖です。ひまわりは、種を植えて育てます。種子は、めしべの胚珠にある卵細胞と、めしべの花粉にある精細胞が受精することでできるので、有性生殖です。
「20分に一度の割合で1個体から…2個体になります。」とあるので、これに従って計算します。1回の分裂で個体数が2倍になることから、10万個体になるまでに何回分裂することになるかを考えます。2×2×2×…と16回かけ算をすると、65536になります。17回だと、10万をこえてしますので、分裂は16回までです。これにかかる時間は、20分×16=320分=5時間20分 なので、ほぼ5時間以内なら食中毒にならないと考えます。
動物の卵の中には、成長してからだになる部分(胚)と、生まれてえさを食べられるようになるまでに必要な栄養とが入っています。卵が大きいと、栄養を多くたくわえることができるので、成長する上で有利です。一方、魚類のように卵の数が多いと、他の生物に食べられたとしても、生きのびる可能性を残すことができます。
卵が大きいほど、1個産むためにたくわえる栄養が多くなります。大きな卵のまま、産む数が多くなると、大量な栄養が必要となり、母親のからだの負担を考えると、限界があります。
「Aの生殖を行う動物たちは、…親と同じ情報を受け継ぐので、外見や体の性質がすべて親と同じになります。」「大腸菌はすべて同じ性質のため、腸内の環境が変化すると全滅してしまう可能性があります。」とあります。Bの生殖を行う生物が、環境の変化に対応できるのは、親と子で持っている遺伝情報が異なるからです。
(化学)コーヒーを豆から淹れる方法についての問題。
コーヒー豆を焙煎し、挽いて、ドリッパーやエスプレッソメーカーを使って淹れるまでの方法について、科学的視点で考える問題です。自宅で焙煎する家庭は少ないですし、その先は全自動で淹れてくれる便利な機械もあるので、実際のしくみを目にしたことがない生徒が多いかもしれませんが、問題文に丁寧な説明と図や写真があるので、しっかり読み取ることができれば、淹れ方を知らない生徒でも対応できるのではないでしょうか。
図3は、アルコールランプで加熱する小型のものですが、大型のものは、自家焙煎のお店で見かけることができます。ハンドルを回して、ドラムを回転させることで、均等に加熱することができます。
「苦味成分の量は、焙煎が進み、コーヒー豆が酸化するにつれて増加」するので、苦味は、浅煎りほど弱く、深煎りほど強くなります。また、「酸味の原因はコーヒー豆に含まれる糖類などの有機物が酸化されることによって生じる有機酸」で、「焙煎…により、コーヒー豆の酸化がはやま」るので、浅煎りより中煎りの方が強くなります。しかし、「有機酸は長時間の加熱にともなって、徐々に気体になったり分解したりする性質を持って」いるので、さらに深煎りしてしまうと、かえって弱くなると考えます。
酸化は「空気中の酸素と結びつく反応」なので、粉にして空気と触れる面積が増えると、酸化しやすくなり、味が変化して酸味が強くなると考えられます。
図5のような手動のミルは、固定された歯と回転する歯とですりつぶすしくみになっています。歯がすりあわさるときに摩擦熱が発生し、高温になると、焙煎が進んでしまいます。したがって、できるだけゆっくり回すことが大切です。
問5のあとの文にヒントがあります。コーヒーを淹れる作業は、コーヒー豆の成分を、「液体に溶かして取り出す作業」です。熱湯ができるだけ多くのコーヒーの粉とふれるようにすれば、「抽出される成分が多くなります。」反対に、熱湯が直接フィルターに触れてしまうと、コーヒーの粉とふれないまま下の容器に落ちてしまうので、うすいコーヒーになります。
本文から、はじめのコーヒーの粉に含まれていた粒は、コーヒーの粉と熱湯が十分な時間触れたとき、(コーヒー1g):(熱湯1g)=9:1に分配されるとわかります。また、熱湯の量を2gにすると、(コーヒー1g):(熱湯2g)=9:2に分配されます。コーヒー1gは、熱湯9gに相当すると考えると、熱湯9gに対しては、同じ量だけ分配されることがわかります。
エスプレッソは1回の抽出で濃厚なコーヒーを淹れるのですから、コーヒーの粉の表面積をできるだけ大きくするために、極細挽きにします。
図7から、それぞれ、「上の取手のある容器」「フィルターとフィルターの間」「下の直火で加熱する容器」の、3つのどこかにあてはまると考えます。水は熱しなければならないので、下の容器に入れるとすると、加熱されて水蒸気が発生すると、圧力で熱湯がフィルターを通って上の容器へ吹き出だすと予想できます。このフィルターの部分にコーヒーの粉を入れておけば、熱湯がふれ、コーヒーを抽出することができます。
(物理)バイメタルや白金を利用した温度計についての問題。
温度計というテーマにそった問題です。まず、バイメタルの知識から、仕組みと問題点を考えます。次に、白金温度計に使われている白金の、温度によって抵抗が変化する性質について実験を行います。このとき、「電気抵抗」ということばを使わず、直列につないだ白金の個数と流れる電流の関係として扱っているため、実験データを通して処理することになります。
金属は、あたためると膨張し、冷やすと収縮します。この変化が大きい方が金属aですから、あたためると、金属bより長くなります。したがって、アを選びます。
図2の回路では、接点が触れているときにヒーターがつき、離れると消えるようになっています。ドライヤーやこたつの温度が高くなり過ぎたときに、バイメタルPが接点からはなれるようにすれば、自動的にヒーターが消えるようにすることができます。
図3から、バイメタルをあたためると、内側の方がのびて、外側との長さの差が小さくなっていることがわかります。したがって、エのように、内側に金属a、外側に金属bをくっつければよいとわかります。
バイメタルが長くなると、部分によって温度のちがいができ、変形が均一でなくなり、温度を正確に測れなくなってしまいます。バイメタル温度計は安価なため、てんぷら鍋などについていることがあります。機会があったら、分解してみてはどうでしょうか。
表1から、0℃の白金1個で120mA、125℃の白金1個で80mAが流れることがわかります。つまり、白金は、温度が高くなるほど電気抵抗が大きくなり、流れる電流の量が少なくなります。表2から、白金を直列につなぐと、つないだ個数と流れる電流は反比例するので、電流を等しくするには、つなぐ白金の個数を3:2(120:80)にすればよいことになります。
表3から、350℃の白金10個と、0℃の白金24個で、流れる電流が同じとわかります。0℃の白金24個に流れる電流は、120÷24=5(mA)なので、350℃の白金1個に流れる電流は、5×10=50(mA)です。
同じ個数で、電流の大きさが、0℃のときの半分になるのですから、表3で、0℃の白金20個と同じになる白金10個をさがします。表3から、「白金10個の温度の変化」は、「0℃の白金の個数の変化」と比例することがわかるので、0℃の白金20個とおなじになるのは、175+25×(20-17)=250(℃)の白金10個です。
液体温度計で使われている液体は、凝固点以下で固体に、沸点以上で気体になってしまうので、利用できる範囲が限られています。
白金1個に流れる電流が300mAなので、この温度の白金10個には30mAが流れます。表2から、0℃の白金に30mA流れるのは、4個直列にしたときです。表3で、0℃の白金4個と同じになるのは、50-25×(12-4)=-150(℃)の白金10個です。
(物理)暦法と日食・月食に関する問題。
暦についての読み取りから、日食・月食に関する思考実験を通して、頻度や見え方について論理的に考える問題です。日食・月食を、実は、測量に利用していたという結論へ、興味をそらすことなく導いていく構成はさすがです。
立春・春分・冬至は、暦法で定められた二十四節気で、立春は、冬至と春分の真ん中にあたります。梅雨は、毎年6~7月に雨が続く気象現象をさします。「梅雨」だけ他の選択肢とちがうことは、気づいたのではないでしょうか。
月食は、太陽・地球・月の順に一直線に並んだときに起きる現象で、満月が地球の影に入り、欠けて見えます。基本の知識です。
公転面のかたむきがなければ、新月のたびに日食が起きたり、満月のたびに月食が起きたりするはずです。これも、基本の知識です。
① 地球から見ると、月が半分だけ光って見える半月です。
② 地球から見ると、月は太陽の方向にあるので、新月とわかります。
地球の公転面と、月の公転面が交差する場所のうち、月が太陽の方向にある位置を選びます。
図3で、2か所見つけることができます。
18年11日後に見られる皆既日食が、何回目の新月かを計算します。
(365×18+11)÷29.5=223.08…より、223回目の新月とわかります。
これは、迷わず計算できたのではないでしょうか。
→合否を分けた一題参照。
問題文の読み取りの問題です。「元が定めた新しい暦法」で、「中国での日食を正確に予測できていました。」とあるので、暦法が間違っているわけではありません。ウやエはありえませんから、アを選びます。日食が見られる地域は、地球上を時間とともに移動します。
これも、文章を読み取ることができれば、解答できます。
緯度は、太陽の南中高度から容易にわかります。しかし、当時、経度の測定は難しかったようです。伊能忠敬は、何か所かで日食や月食の起きる時刻をはかり、それを比較することで、経度の差を出しました。
入試問題を見ると、その学校がイメージする生徒像が浮かんできます。
麻布の理科の場合は、第1に読解力で、説明の文に書いてあることを、きちんとくみ取れているかを確かめる問題が散見されます。そして第2に、問題解決能力を試す問題です。たとえば、今年については、これが顕著に感じられる問題として、1の問5、4の問7があります。一見、少ない手がかりから、単にアタリをつける方法に見えるかもしれませんが、実際の研究や実社会の活動では、とても大切な能力で、これを繰り返すことで、物事の本質に近づけることも少なくありません。
こういった、麻布のねらいにしっかり対応できたかどうかが合否を分けたと考え、この問題を取り上げました。
図4の説明では、太陽・月・地球が並んだとき、中心のずれがあったとしても、観測者の位置によっては皆既日食が観測できる可能性を示しています。しかし、その中心のずれがどのくらいまでなら、地球上の観測者によって皆既日食が観測できるのかが示されていないため、手掛かりが薄いと感じるかもしれません。太陽・月・地球の直径や距離が分かれば、計算できるかもしれませんが、そうなる位置は、図3のA~D・e~hの組み合わせ以外にいくつかあると考えられ、容易に解答でいないレベルです。
しかし、選択肢を見てみると、そこまで考える必要がないことがわかります。つまり、この問題は、まずは問6で答えた数を評価し、問題点を絞り込みましょうと言っているのです。ここで、これまでの設問の流れを振りかえります。問5から理想的な皆既日食の回数、問6から新月すべてで皆既月食が起きた場合の回数がわかります。これを、回数が最小となる場合と、最大になる場合とすればよいのです。
問5から、太陽・地球・月の中心が一直線にならぶ場所が2か所あるので、約18年11日の間に、もう1か所での皆既日食が生じます。つまり、18年11日の最初の日と最後の日とその間にもう1回の、最低3回は見られることになります。また、問6から、223回よりは少ないとわかります。
この問題を持ち帰って、図4から予想されるシチュエーションでの皆既日食について、調べてみようと思った生徒もいたのではないかと想像されます。