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理科の合否を分けた一題

麻布中入試対策・理科の合否を分けた一題(2018年度)

難易度分類

問1 A  問2 A 問3 A  問4 A  問5 A  問6 A
問1 A  問2 A 問3 B  問4 A  問5 A  問6 A  問7 A
問1 A  問2 A 問3 A  問4 A  問5 A  問6 A  問7 A  問8 A  問9 B
問1 A  問2 A 問3 A  問4 A  問5 A  問6 A  問7 A  問8 B

A…麻布合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

2018年度の麻布は、例年通り、長めの文章をしっかり読み取って理解し、根本原理に則って考察し、論理を見通すことができる力が求められる問題でした。
どの問題も、自然に入っていけるように工夫されていて、構成も丁寧に組み立てられています。好奇心が刺激され、楽しく取り組むことができた生徒も多かったのではないでしょうか。

生物分野の問題は、ヤンバルクイナの胃内容物をもとに考える問題。
化学分野の問題は、界面活性剤(セッケン)についての問題。
地学分野の問題は、「水」をテーマに、気象・治水・探査機カッシーニとタイタンについての問題。
物理分野の問題は、ヒートポンプを利用したエアコン・湯沸かしについての問題。
本年の時事的題材は、2017年9月に土星の大気に突入し運用を終了した探査機カッシーニでした。

対策としては、科学読み物などを通して、文章を読み解く力を養うとともに、幅広い知識に裏付けされた論理的思考の道すじをきちんと説明できるようになることを目指します。まずは考えたことを書いてみます。すると、新たな疑問が生まれます。疑問と理解の行き来を繰り返すことで、より深い理解を得ることができます。
また、ニュースや身の回りの現象にも目を向け、しくみとその目的について考えるくせをつけましょう。今年の題材のうち、セッケンとエアコンは、新旧の生活の科学ともいえます。小学生であっても生活者であるという視点もまた、麻布ならではといった印象です。

問題構成は、4分野から大問4題、小問47問。
理科の配点は40点ですから、一部組んでの採点としても、ほぼ1問1点と考えてよいでしょう。
解答形式は、選択肢が30問、記述が6問、言語が6問、作図が1問、数字が4問。
記述は、10字以内が2問、20字程度が1問、1行程度が3問で、平年並みです。
記号選択の問題も含めて、計算を要する問題は5問で、計算が多かった昨年に比べて、こちらも平年並みにもどった印象です。
選択肢は、記号だけでなく、示されたことばや数字から選ぶものが多く見られました。
作図は平易で、麻布を目指す生徒であれば、迷いなくかけたのではないでしょうか。

問題別寸評

(生物)ヤンバルクイナの胃内容物について考察する問題です。
問1~3は読取りの問題。問5~6は、読み取った内容から論理的に考えを進めれば、正答できる問題です。

問1

読取りの問題です。本文に「森の中を活発に歩き回ります」「水中で食べ物をとることが得意なわけではありません」とあります。また、ヤンバルクイナの胃の内容物は、遠くから見渡して探し、ねらいを定めて捕獲しなければならないものではありません。

問2

胃の内容物とフンを比較します。胃には小さなカタツムリが殻のついたままはいっていましたが、フンにはカタツムリの体や殻はほとんど入っていないことから、アを選びます。
小石は、フンとして出ているので消化はしませんが、積極的に食べていることから、何らかの役に立っていると考えます。ここで、鳥類は胃石を利用して消化の助けにしていることや砂嚢(砂肝)を持つことを知っていた生徒は、ピンときたはずです。オも正しい。
小石は、栄養にならないので、クも正しい。

問3

フンに食べた実の皮と種が入っていることから、果実などやわらかいところは消化され、かたい種は消化されずに出てくることっが分かります。この種は、フンと一緒に出されたところで芽生えます。

問4

ダチョウ・エミュー・キーウィ・ペンギンなどがあげられます。

問5

イは、飛べない鳥が今でも残っている理由として正しい。
エは、飛べない鳥が非常に少ない理由として正しい。

問6

カタツムリを減らすと、ヤンバルクイナのえさの量が減ることになるので、間違い。道路をつくると、交通事故による死亡が増えるので、間違い。実際に、ヤンバルクイナの交通事故数は年々増加しており、早急な対策が必要とされています。

(化学)セッケンに関する問題です。
図1のように、1つの分子の中に、水になじむ部分となじまない部分をもつ物質を、界面活性剤といいます。この問題の実験のように、セッケン分子が水面に1層のセッケンまくをつくる性質を利用して、セッケン分子の大きさを測定することができます。

問1

図2を参考にして、シャボン玉の外側・内側に、それぞれAをならべてかきます。

問2

セッケン水1000㎤に固形セッケンが1㎤とけています。セッケン水1てきは、0.2÷10㎤なので、とけている固形セッケンは、0.2÷10×1/1000=0.00002(㎤)です。

問3

水てきは、表面張力によってガラス管内にとどまります。セッケン水を一度吸い上げてガラス管の内側にセッケンまくをつくると、表面張力が弱まるので、水てきができにくくなります。

問4

アでは小さすぎ、イでは大きすぎてしまいます。▲のマスの大きさには規則性はないので、平均すると1マスの半分に近くなると考えます。

問5

セッケンまくの面積は100(㎤)、体積は0.00002(㎤)。
このとき、セッケンまくの厚みは、0.00002÷100(㎝)=2×1/10000000(㎝)=2(nm)

問6

2(nm)につぶが20個並んでいるので、2÷20=0.1(nm)

問7

実験には誤差がつきものです。そもそもセッケンまくの面積もだいたいの大きさですから、すべての実験結果がグラフ上にのるわけではありません。セッケン水の「本来あるべき性質」とは、ここではセッケンまくの体積が面積に比例することをさしています。

(地学)水をテーマにした問題。
地球では水が循環し、地形をつくり、生命を育んでいます。探査機カッシーニが撮影したタイタンの川は、地球の川とよく似た地形を形成しているように見えます。しかし、流れているのは水ではなく、液体のメタンです。メタンの融点は-182.5℃、沸点は-161.6℃ですから、地球と比べてとても冷たい世界です。

問1

3㎞を、秒速10mで落下するので、3000÷10=300(秒)=5(分)かかります。

問2

雲は、水蒸気が上空で冷やされて水てきや氷のつぶになって浮かんでいるものです。雨粒は、雲の中の水てきや氷のつぶが寄り集まって大きな水のつぶになり、重力によって落ちてきたものです。

問3

1㎡に100㎜の雨が降ると、100×100×10=100000(㎤)=100(L)の水が集まります。

問4

一気に大量の水が流れてきても、川から水があふれない方法を選びます。

問5

テチスより大きいレアが、右側に小さく見えているので、カッシーニの位置はアです。また、太陽の光をうけて明るく見える部分が、半分よりやや少ないので、太陽光の向きはcです。

問6

地球の大気でもっとも多い成分は、ちっ素です。

問7

川の流れの根本原理に基づいて考えます。川は、細い支流を集めて本流となり、やがて海にそそぎます。写真のAの流れはBより細いので、上流と考えます。また、上流ほど傾斜が大きく、流れが速いと考えます。

問8

メタンは燃料として都市ガスなどに使われています。凝固点・沸点ともにたいへん低く、地球の表面温度の範囲では、常に気体の状態です。

問9

エが最も大きな理由とされています。船体についている微生物による汚染を避けなければなりませんでした。ウも正しい考え方です。アについては、土星に突入する瞬間まで、くわしい写真を送り続けていたことから、正しいといえます。イについては、「タイタンは月より大きな天体です」とあることから、考えにくいのではないでしょうか。

(物理)ヒートポンプに関する問題。
空気が上昇気流によって上空で圧力が下がると、温度が下がって露点に達すると雲ができます。このように、空気を膨張させると温度が下がり、逆に圧縮すると温度が上がります。この原理を利用したのがヒートポンプです。ヒートポンプの中にはガスが流れていて、圧縮して温度を上げた状態のときに外へ熱を放出し、膨張させて温度を下げた状態のときに外の熱を吸収します。
問題を解き進めるにつれて、この仕組みが理解できる構成になっています。熱のやり取りをイメージしながら、しっかり取り組みましょう。

問1

注射器でおし縮めていた空気を勢いよく出すと、体積が急に大きくなり(膨張し)、温度が下がります。

問2

① 室外機自体が高温になり、ガスの温度も上がってしまいます。
② パイプに触れる空気の量が減り、ガスの温度が下がりにくくなります。

問3

アは、37℃の室外の空気で冷やされたガスなので、37℃以上あります。イは、膨張弁を通ってアより温度が下がった状態です。ウは、35℃の室内の空気を冷やして、イより温度が上がりますが、35℃以下のはずです。したがって、温度が高い順に、ア>ウ>イとなります。

問4

コンプレッサーの直後の温度なので、オ>エ。その後、室外機の空気に放熱するので、オ>カ。問3より、ア>ウなので、カ>エとわかります。

問5

問3・4をまとめると、オ>ア=カ>ウ=エ>イ。
したがって、オ=90℃、ア=カ=50℃、ウ=エ=10℃、イ=5℃ となります。

問6

暖房の場合は、ガスの流れる向きが逆になります。
イのガスが膨張弁を通ると温度が下がるので、イ>ア。ア・カのガスは、室外機であたためられるので、カ<オ。オのガスはコンプレッサーを通って温度が上がるので、オ<エ。エ・ウのガスは、室内機で冷やされるので、ウ>イ。

問7

ガスは、廃棄するときに外にもれても環境に悪くなく、燃えたり燃やしたりしない安定した気体であることが望ましいと考えます。

問8

→合否を分けた一題参照。

合否を分けた1題

ヒートポンプを利用したエアコンの「冷房」では、室内の空気の熱を集めて、その熱を室外に出します。また、エアコンの「暖房」では、室外の空気の熱を集めて、その熱を室内に出します。そして、「給湯」では、室外の空気の熱を使ってお湯をわかします。
電気代を節約するには、「コンプレッサーや熱膨張弁の性能が大切」です。実際に電気を使うのは、コンプレッサーの部分だけです。拡張弁では、圧縮したガスの圧力を急激に下げるだけなので、電力は必要ありません。それぞれの性能が良ければ、「ガスの体積を変化させるために使う電気を少しにして…効率よく熱湯を得る」ことができます。
そしてさらに、効率を上げるには…?
ここで、きちんとヒートポンプの原理に立ち返って考えることができたかどうかが、合否を分けたポイントだったのではないでしょうか。
ちなみに、ここでふれられている二酸化炭素をガスとしたヒートポンプを利用した給湯機を、エコキュートといいます。いろいろな技術が使われたしくみなので、さらに詳しく調べてみると良いでしょう。

問8

ヒートポンプは、いわば熱を運ぶポンプです。運ぶ熱の量が多ければ多いほど、効率の良いしくみといえます。室外の空気の熱を最大限に吸収するためには、ガスをしっかり膨張させて冷やしておく必要があります。室外の空気との温度差が大きいほど、多くの熱を吸収できるからです。また、湯に与える熱を最大限にするには、ガスをしっかり圧縮して温度を上げます。高い温度であるほど、多くの湯を温めることができるからです。
最後に、ガスの熱は伝導によって伝わるので、図2のようにパイプの表面積を大きくして、効率よく熱のやり取りができるようにすることも大切です。車のラジエーターなども、同じ考え方のしくみです。

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