1 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 B 問5 B 問6 A 問7 A 問8 A |
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2 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 B 問7 B 問8 A |
3 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 A 問8 A 問9 A |
4 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 A 問8 A |
A…麻布中学合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
例年通り、問題文のボリュームが多く、高度な理解力が必要な問題でした。
普遍的で深いテーマを扱い、知的好奇心が刺激される内容でありながら、入り口は、小学生でも入ってけることができるように工夫されていて、とても丁寧な言葉使い・構成になっています。
どこかで時事的題材にふれる問題が出される傾向もあり、ふだんから好奇心をもって、ニュースや日々触れる現象に目を向けているかが問われます。本年はニホニウムが取り上げられました。
問題構成は、4分野から大問4題、小問38問。
理科の配点は40点ですから、ほぼ1問1点の計算です。
解答形式は、言語が7問、作図が2問、数字が10問、記述が3問で、記号選択が16問でした。
昨年に比べて、数字で答えるものが大幅に増えましたが、複雑な計算を要するものはなく、問題文を正確にくみ取ることができれば解答できるものでした。例年、10問前後は出されている記述が特に少なくなっていて、記述が得意な受験生は物足りなかったかもしれません。一方、作図は、理科的な考え方に基づいて考えたうえでの表現が必要とされています。
(化学)元素合成に関する問題です。
アジア初の元素発見であり、命名権が日本に初めて認められたニホニウムの、とてもホットなニュースを取り上げています。元素合成という難解な題材を丁寧に読み解きながら問題が展開され、麻布らしい科学的好奇心を刺激する問題となっています。
原子核についての説明も、シンプルでわかりやすく、素直に読み進めれば、知識が無くても理解できるようになっています。
実は、問題文で説明されている、原子核を構成する粒のうち、○は陽子、●は中性子です。〇2個と●2個の「粒子X」は、ヘリウムの原子核と同じものです。これが原子核から飛び出すと、α線と呼ばれます。α線が飛び出して原子が壊れることを、α崩壊といいます。
また、α線などの放射線を出して崩壊して、はじめにあった原子の数が半分になるまでの時間を、半減期といいます。核Cの数が半分になるまでの時間が100秒なので、核Cの半減期は100秒といえます。
陽子30個の核Eは亜鉛、陽子83個の核Fはビスマスという物質があてはまります。亜鉛を高速に加速し、ビスマスにぶつけることで、ニホニウムを合成します。理化学研究所では、9年間で400兆回衝突させ、3個の合成に成功しました。
昨年6月に理化学研究所から命名案が発表されたことが報道され、大変話題になりました。
「粒子X」は、〇2個と●2個でできているので、1回飛び出せば、〇と●が2個ずつ減ることになります。
最初にあった核Cの数は、100秒後に50%、200秒後に25%(0.5×0.5×100)になるので、300秒後は、0.5×0.5×0.5×100=12.5% になると考えます。
最初~50秒後と、50秒後~100秒後の残った数の割合が同じなので、2回掛け合わせて0.5になる数を選びます。0.7×0.7=0.49 なので、70%が最も適当です。
問題文の中に、「○の粒は磁石のS極とS極のようにおたがいに反発します。」とあります。核が別の核に近づくと、それぞれがもつ○の粒どうしが反発してしまうのです。合成するためには、この影響を少なくするために、高速で発射しなければなりません。知識として知らなくても、手掛かりは問題文の中にありますから、おちついて取り組みましょう。
核Eを36万×80兆(個)発射すると、新しい核を1個合成できます。1000日で発射できる核Eは、2兆×1000×24×60×60(個)なので、新しい核は、(2兆×1000×24×60×60)/(36万×80兆)=6(個)できます。
核Eと核Fがひとつになると、○113個と●166個になります。これから●が1個放出されて、○113個と●165個。「粒子X」は○2個と●2個のかたまりなので、○105個になるには、(113-105)÷2=4(回)放出されたとわかります。
165-2×4=157(個)です。
(生物)日なたを好む雑草に関する問題です。
一見ばくぜんとした問いのように見えても、問題文の中に、必ず手掛かりにある情報があります。その情報を見逃さず、論理的に考えて、答えを導き出します。
問6・7のように、仮説を立てて、実験方法を考え、検証する手法は、根本原理・法則を見つけだすときに、大変有効です。麻布に入学する生徒には、このような手法を身につけてほしいという、メッセージが込められています。
光が多い所で生育する植物を陽生植物、日陰で生育する植物を陰生植物といいます。
タンポポ・ヒマワリ・アブラナ・イネは陽生植物、シメジ・スギゴケは陰生植物です。
発芽の3条件は、基本中の基本の知識です。
問題文に「約70%の雑草は、日あたりの悪いときは種子のまま休眠し、光があたるようになるとそれを感じ取り、発芽しはじめます。」とあります。多くの雑草は、発芽の3条件のほかに、光の条件を必要とすることがわかります。
ア:種子そのものが焼かれてしまい、発芽しません。
イ:ほり起こすことで、十分な空気と光が与えられ、多くの雑草が発芽します。
ウ:日あたりが悪くなり、発芽する雑草は少なくなります。
エ:砂利におおわれて、種子に光がとどきにくくなります。
オ:ビニールシートによって、光がほとんどとどかなくなります。
最も多くの雑草が発芽するのは、イです。
「日なたとなったことを感じ取って発芽」とあるので、日なたの特徴について説明しているものを選びます。
ア:日なたと二酸化炭素濃度は関係がありません。
イ:日なたと酸素濃度は関係がありません。
ウ:日なたと土の水分量は関係がありません。
エ:昼間の温度が高いところほど、日あたりがよいといえます。
オ:日あたりの良い場所が、とくに低温になるわけではありません。
カ:昼間の温度が高くなると、昼夜の温度差も大きくなります。
エとカを選びます。
実験Aと実験Bの条件のちがいは、あてた光が赤色光か遠赤色光かという点だけです。
ア:実験Aでは赤色光をあてていますが、発芽したのは50%だけです。
イ:実験Bでは遠赤色光のみをあてた結果、発芽は0でした。
ウ:実験Cで、木かげの光の強さは、赤色光が2、遠赤色光が10なので、遠赤色光の方が強いといえます。
エ:実験Cで、日なたの光の強さは、赤色光が24、遠赤色光が16なので、遠赤色光の方が弱くなっています。
オ・カ:問題文に、「植物は赤色光をあてるとさかんに光合成を行います」とあります。赤色光は、他の植物に吸収されて利用されるので、木かげにとどきにくくなります。
したがって、イ・ウ・カを選びます。
実験Dから、
となります。
仮説1が正しいとき、木かげでも、遠赤色光が2以下なら発芽することになります。
仮説2が正しいとき、遠赤色光の量にかかわらす、赤色光の量が一定量より強ければ、発芽することになります。①~③では、遠赤外線の量を変えていますが、これは発芽する赤色光の量に影響しないはずなので、エを選びます。
成長の5条件は、発芽の3条件に、日光・肥料を加えたものです。他の植物がいない場所では、日光と土の中の養分(肥料)を多く得ることができます。
(物理)慣性の法則に関する問題。
問題文では、ふだん目にしたり実感したりしている慣性の法則について、いろいろな例をあげながら説明されています。慣性の法則は未習ですが、文章を的確に読み取りながら、考え方の流れをつかみます。
問1・2では慣性がはたらく向きを確認し、問5で、慣性は、見かけ上の力がはたらいているように扱えることを理解します。さらに、問6~9で、実は、慣性力は重力と同じように、物質にはたらくとわかってきます。このように、一段一段、階段を上る感覚で、解き進んでいくことが大切です。
走っていた自転車がブレーキをかけたとき、自転車は止まりますが、かごのボールと水とうは、そのまま同じ速さで動き続けようとします。このような性質を、慣性といいます。ブレーキをかけた直後は、ボールはかごの前の方へ転がり、水とうは重心が高いので、前の方へ倒れます。
問題文をしっかり読めば、解答できる問題です。
(1)~(3)に人形を固定すると、(1)はその位置に止まり、(2)・(3)は台車と同じように動きます。
台車をすばやく動かすとき、止まっているボールは、その位置に止まり続けようとします。人形Aとボールの距離が変わらないことから、人形Aは(1)に固定されているとわかります。
一方、人形Bは(2)か(3)に固定されています。台車を前に動かすと人形Bも動き、このときボールが近づいてくることから、(3)とわかります。
建物を地面に固定すると、地震のゆれがそのまま建物のゆれとなり、構造物に大きな力がはたらくと同時に、固定されていない家具などは建物の中では動いたり倒れたりします。建物の基礎にゴムなどを利用した装置を入れ、ゆれを直接伝えないようにする方法を免震といいます。
慣性の法則が、実際にどのように体感されるかを考えます。「つり革が少しだけかたむいている」「片方の足に重心をかける」といった状態は、あたかも重力以外の水平方向の力に引っ張られているかのような感覚です。このような見かけの力を、慣性力といいます。慣性力は、重いものほど大きく、また、速さの変化が大きいほど大きくなります。電車が前に走り出すとき、つり革の輪や人には、後ろに引っ張られる向きに慣性力がはたらきます。したがって、つり革はうしろにかたむき、人も後ろにたおれそうになって、後ろにある足に体重がかかります。
つり革や人が、後ろ方向に慣性力を受ける場合を選びます。
ア:とどまり続けているバスには、慣性力がはたらきません。
イ:ブレーキをかけると、つり革や人はそのまま前に進もうとするので、前方向の慣性力を受けます。
ウ:速度の変化がないので、慣性力ははたらきません。
エ:下り坂では、前が後ろより低くなっているので、前方向の慣性力を受けます。
オ:上り坂では、後ろが前より低くなっているので、後ろ方向の慣性力を受けます。
したがって、オを選びます。
ブレーキをかけると、台車の上のものは、前に動き続けようとします。このとき、台車に固定されていないピンポン球は、前方向の慣性力を受けます。同時に、地球の中心に向かう重力を受けるので、この2つを合わせたものが、見かけ上の重力となります。(下の図)
ピンポン玉では、重力・慣性力・抗力(どんぶりがピンポン玉をおし返す力)の3つの力がつり合います。
水そうの水面は、見かけ上の重力に対して垂直になるように傾きます。
水そうの水の動きだけでなく、水中のピンポン球の様子についても考える問題です。合否を分けた一問で取り上げます。
問7・8までで、台車上の物体は、地球による重力と慣性力を合わせた、見かけ上の重力はたらくことがわかりました。これによって、その場いる人は、台車がかたむけたときと同じように感じます。カーレースのアトラクションでも同様に考えることができます。
ア~ウ:急発進するときは、その場所に止まろうとするので、後ろ方向へ慣性力を受けます。このとき、部屋を後ろにかたむけたときと同じになります。
エ~カ:急停止するときは、前に動き続けようとするので、前方向へ慣性力を受けます。このとき、部屋を前にかたむけたときと同じになります。
(生物・地学)地球の歴史と生物の進化に関する問題です。
生物の発生は、大気の成分を変え、地球の気温変動の原因になりました。このように、生物の存在は環境を変えます。同時に、環境の変化は生物の存続に大きく影響します。このようにして、地球環境が変化する過程で、いろいろな生物が出現・繁栄・絶滅を繰り返し、そのことが生物の進化に深く関係することになります。
問題文から、進化とは、生物が子孫を残すときに少しずつ変化することとあります。
昆虫が、「幼虫→さなぎ→成虫」のように姿を変えることを変態といいます。これは、1つの個体が成長するための変化です。「成長」「進化」の言葉を使ってまとめます。
図1を参考に、シンプルに考えます。生物の大きさが2倍になると、からだの表面積は2×2=4(倍)、体積は2×2×2=8(倍)になります。昆虫の場合、気管の表面積がからだの表面積と比例すると考えると、8倍になったからだに必要な酸素を、たかだか4倍になった気管で吸収することになり、1/2しかまかなえなくなる可能性があります。
グラフから、3億年前の大気の濃度が、それ以前と比べてどのように変化したか読みとります。二酸化炭素濃度は3.7億年前ごろをピークに減少し、酸素濃度は3.7億年前から3億年前にかけて増加しています。二酸化炭素は植物に吸収されて減少し、酸素は放出されて増加したと考えると、この時期に光合成がさかんに行われたことがわかります。さらに、温室効果ガスの二酸化炭素が減少したことで、地球の気温は低くなったと考えられます。
肺胞は、小さな部屋がたくさんあることで、表面積を大きくなり、物質の吸収を効率的に行うことができるしくみになっています。このように、物質を吸収・排出するいくつかの器官では、表面積をふやす工夫が見られます。
ア:胃や小腸のひだは、食べ物と接する面積が大きくなり、吸収の効率がよくなります。
イ:食べ物をあらかじめ細かくすることで、消化液や、胃や小腸のひだと接する面積が大きくなり、消化・吸収がはやまります。
ウ:気孔は、葉などの表面にある穴で、酸素などの気体を通しますが、吸収とは関係がありません。
エ:根は枝分かれして表面積を大きくすることで、地中の水や栄養の吸収を効率よく行っています。
からだが大きくなると、体積に対して表面積が小さくなるので、からだの温度が冷えにくくなります。素直に読んで、ことばをあてはめていく問題です。
体重は8倍、足の裏の面積は4倍になるので、同じ面積で支える体重は、8÷4=2(倍)になります。
恐竜が絶滅した原因を問う問題です。知識があれば、もちろん迷うことなく解答できますが、選択肢の文脈を読みとることで十分解答できます。その際、食物連鎖の考え方が手掛かりになります。
いん石が衝突→ちりやほこりがたつ→日光が届きにくくなるので、光合成量が減り、生産者の植物が絶滅する→消費者の動物が絶滅する
酸素を体内に取り入れ、細胞にとどけるしくみと関係がある内容を選びます。
ア:横隔膜を持つのはほ乳類だけです。
イ:ヒトは、他の動物と比べて、皮膚呼吸がさかんというわけではありません。
ウ:ヒトの心臓や血管には弁があるので、逆流もふせぎ、効率よく酸素を細胞に届けることができます。
エ:ほ乳類は、2心房2心室の効率の良い心臓をもっています。
3の問7までは、読解力と論理的思考を駆使して、慣性力についての理解を進めてきました。問8では、さらに、浮力の考え方が必要になります。浮力といっても、これまで学習してきた内容とは異なる設定です。しかしながら、浮力についての根本的な理解があれば、対応することは可能です。逆に、うわべだけの理解にとどまっていると、そのことに気づくことすらできません。
はじめ、台車が一定の速さで動いているときは、ピンポン玉は糸で固定している点の真上の位置にあります。これは、鉛直方向に浮力がはたらいているからです。浮力は、物体のおしのけた水の重さに等しく、重力と反対向きにはたらきます。(図①参照)
(図①)
つぎに、ブレーキをかけると、水そうの水とピンポン球に、地球による重力と慣性力を合わせた見かけ上の重力がはたらきます。この場合の浮力は、見かけ上の重力と反対向きにはたらきます。(図②参照)
(図②)
同じような現象は、例えば、空気中のヘリウム風船などでも見られます。
問1で、自転車のかごのボールは、かごの前の方に動きました。そのイメージを引きずっていると、この問題は正答できません。