問一 | 問一 すべてA 問二 A 問三 B 問四 B 問五 B 問六 A 問七 C 問八 C 問九 A 問十 1 C 2 C 3 C |
---|
A…確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度・処理量から判断して、部分点を拾えれば良しとする問題
今年度の麻布中学は例年通り、物語文(宮下奈都「まだまだ、」より)1題の構成となっていました。漢字の書き取り3問、選択肢問題2問以外の9問はすべて記述問題です。昨年より記述問題が4問減っているのが目立つ変化です。選択肢問題は易しいものでした。内容は、周りの人たちから可愛がられていた紗英が、活け花を通して自分らしさを求めだし、そのためには一見個性を奪ってしまうと思われる「型」を身につける必要があると理解し、精神的成長のきっかけをつかんでいくというものです。麻布の特徴である、ある問いの答えが他の問いのヒントになる、問い同士に関連性のある出題傾向は健在です。
4つとも落とせません。
傍線部の直後の内容から読み取れますし、解答欄が一行しかないことからも、端的に書けばよいものだとわかります。正解してほしい問いです。
傍線部の直後に、そしてさらにもう少しあとの「お豆さんというのは・・・」で始まる部分から、姉たちの主人公への関わり方が書かれています。問いでは「関係がどのようなもの」とあるので、主人公からの姉への関わり方にもふれると良いでしょう。この要素もやはり、「お豆さんというのは・・・」で始まる部分にあります。
問三はこの物語文のテーマである主人公の精神的成長に関するものでした。ここでの主人公の周囲の人との関わり方や自分自身のとらえ方を正確に理解しておくと、このあとの問六、問八、問十(1)、問十(3)が答えやすくなります。麻布の特徴が出た問題です。
解答欄が3行あるので、複数の要素を答えに入れることを考えます。まず傍線部の行動を行うきっかけとなる出来事をおさえます。それは傍線部の前に書かれた朝倉くんの発言です。ではなぜ朝倉くんの発言に影響を受けたのでしょうか。それは朝倉くんの活けた花に感動したからです。また、朝倉くんの発言そのままに花を活けたわけではないことにもふれなければなりません。
問四は、この物語文のテーマのもう一つである「型」に関するものでした。ここでの主人公の「型」に関する考えを正確に理解しておくと、このあとの問五、問七、問十(2)が答えやすくなります。麻布の特徴が出た問題です。
傍線部の直前、および、傍線部の後に展開される家族との語らいの内容から考えます。また傍線部自体から「自分だけの特別さ」、「私らしさ」を求めていることが読み取れます。「型」に対して、「誰が活けても同じ」というように否定的な主人公の考えを答えとして書きます。
直前の先生との会話の正確な読み取りができれば、正解が選べます。
「型」がどのようなものかを正確に説明できるかが勝負を分ける問いです。しかも解答欄が2行しかないので、具体的にではなく、端的にまとめる必要があります。
傍線部で「型を自分のものにしたい」と書いてありますので、問五とは対照的なものになるという発想もヒントになります。つまり主人公が「型」に対し肯定的なとらえ方をしている部分が答えの要素です。それは傍線部の前で主人公が家族の発言を受けている部分です。ちなみに「定石」と「型」はこの物語文では同じ意味で使われています。あとは言い換え問題なので、「型」という表現を使わずに答えを書けるかがポイントになるのですが、かなり難しいと思います。受験ドクターの解答では「先人たちの知恵」としました。やや難しい問題であったと思われます。
問いに「A・Bの部分に注目して」とあるので、本文中から答えの要素の場所を探す手間は省けます。答えの要素としては、紗英と呼び捨てにできないが「さえこ」だと気軽に呼べること、「いいなあ」とみんなから言われる存在であったこと、何がいいのか自分ではわかっていないのにみんなの期待通りの行動をとること、でしょう。あとはこれらの要素が解答欄2行におさまるようまとめることがポイントです。やや難しい問題と思われます。
傍線部およびその前後の朝倉くんの会話文を読んでいけば、紗英の花に対し肯定的にとらえていることが読み取れます。正解しなければならない問いです。
合否を分けた一題で詳しく説明します。
答えの中心部分「朝倉くんをはっとさせたい」の言い換えは書きやすいのですが、もう一つの問いの要素「『私だけの花』がどのようなものを表しているかを明らかに」するのは難問です。なぜなら「私だけの花」が「どのようなもの」だと単純に書いている部分が本文中にないからです。紗英は「私の花ってどんな花なんだろう」と言いましたが、そのあとその答えは明らかにされていません。そこで、「私だけの花」を活けられるようにするのにはどうすべきなのか、「私らしさ」を手に入れるためにどうすればよいのかについて書きます。つまり「型」について書くのです。「今は型を身につけるときなのかもしれない。私自身の花を活けるために。」という本文中の表現からも、この問いは「型」について書く問いだということがわかります。
麻布らしい、今までにあったいくつかの問いの答えがここで集約するという構造の問題です。今回最大の難問でした。
問三で紗英と姉たちとの関係が、甘えさせる⇔甘えるという関係だと確認しました。これは甘えさせる姉たちが上、甘える紗英が下という上下関係・縦の関係と言えます。それに対し、この問いでは「姉たちとの関係をどのように変えていきたい」と聞いています。縦の関係ではなく、横の関係、つまり対等関係に変えていきたいのです。語彙力が必要な問いでした。
また、傍線部の前の内容から、朝倉くんが姉の七葉に一目ぼれした様子がうかがえます。そんな朝倉くんに対し紗英は姉の悪い面を次々と言い出します。これは紗英の姉への嫉妬の表れ、つまり紗英は朝倉くんに好意を抱いているのです。紗英は姉に負けたくないという対抗意識、朝倉くんに「私らしさのある」自分を見てほしいと思っている、という方向からも答えは書けます。やや難しい問題と思われます。
今回は問十(1)を取り上げます。今までの問いの答えがこの問いのヒントになっている麻布らしい問題です。物語文のまとめにあたる問いであり難度は高いのですが、麻布に合格するために今まで学習してきた物語文の問題で必ずふれたパターンの問題でもあります。大きく点数を稼げる受験生が存在すると考え、合否を分けた一題としました。
傍線線⑩「私もまだまだだ。~私の花を見つめてくれたらいい」(267~269行目)について。本文全体をふまえて、以下の問いに答えなさい。
(1)波線部「まだまだお豆さんでいられる」(66行目)の「まだまだ」と、「私もまだまだだ」の「まだまだ」の使い方のちがいから、自分に対する「私」の考え方がどのように変化していることがわかりますか。説明しなさい。
解き方の手順
まず言えることは、この問いは物語文の問題の定番、変化の問題だということです。
出来事+考え→変化のきっかけとなる出来事+考え
のパターンで書く想定をします。
内容に入ります。
波線部は「まだまだお豆さんでいられる」とあることから、この問題は問三と関連していることがわかります。
問三で見たように、姉たちに可愛がられる自分を「いつまでも下の立場に喜んでいる子だった」、「私はのほほんと楽しんでいた」と考えていることから、自分の好む状況を維持し続けられるという、肯定的な意味で「まだまだ」が使われていることがわかります。
→いつまでも周囲に愛され、甘える側の存在でいればいいと思っていた
一方、傍線部の「まだまだ」は、波線部の直後にあるように「厳しい意味」の「まだまだ」です。自分の理想とするところに現在の自分の実力は遠くおよばないという否定的な意味です。
このように変化したきっかけは、「私の花ってどんな花なんだろう」と考えたが答えは出ず、自分の精神的な未熟さを痛感し、今まで拒んできた「型」を身につける必要性を理解したことです。
しかし、傍線部「いつか私だけの花を活けて、朝倉くんをはっとさせたい」という表現からは、その厳しさを乗り越えて精神的に成長しようという前向きな考えが読み取れます。
この要素も答えに入れます。
→自分の未熟さを痛感し、今はもっと自分に厳しくして、精神的に成長したいと考えるようになった。
【解答例】
いつまでも周囲に愛され、甘える側の存在でいればいいと思っていたが、自分の未熟さを痛感し、今はもっと自分に厳しくして、精神的に成長したいと考えるようになった。