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国語の合否を分けた一題

麻布中入試対策・国語の合否を分けた一題(2019年度)

難易度分類

問一 すべてA 問二 (1) A (2) A 問三 A 問四 A 
問五 B 問六 A 問七 A 問八 B 問九(1)  A (2) A 
問十 B 問十一 A 問十二 C 問十三(1) A (2) B 

A…確実に得点したい問題

B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題

C…国語力がないと歯が立たない問題

問題総評

今年度の麻布中学は例年通り、物語文1題の構成となっております。漢字の書き取り4問、選択肢問題1問、行番号を答える問題1問以外の13問はすべて記述問題です。問題の内容としては、主人公ヒナコに関するものがほとんどです。物語全体を通して、主人公の心情の変化を正確に理解できているかが問われています。難解すぎる問題はありません。受験勉強中に、どこかで似た問題を解いていたはずです。麻布対策をしっかりと行ってきた受験生がしっかりと点を取る問題だと感じました。

問題別寸評

問一

漢字の書き取り問題
4つとも落とせません。

問二(1)

状況の理解
「引っ越し」について、線部の少し後で書いているところがあります。「十字以内」とあり、余計なことを書かないのがポイントです。

問二(2)

主人公と母の心情説明問題
ヒナコと母の思いも(1)の答えの内容が書かれているあたりから読み取れます。二人の思いの違いをはっきりとさせることがポイントです。

問三

主人公の心情問題 ※選択肢 
線部自体の表現の微妙な意味合いを読み取る問題です。たとえば、「下を向いた」と、「だったのに」という逆接から、「後悔」とまでは行かないまでも、父親の悪口を言ったことに引っかかるものがあることが分かります。正解してほしい問題です。

問四

主人公の会話文の理由説明問題 
「行く」と「帰る」の違いを自分の言葉で説明する問題です。身近にある言葉なので、表現が思いつかないということはないでしょう。正解してほしい問題です。

問五

主人公の行動の理由説明問題 
ポイントは二つ。一つはチケットそのものに対する感情であり、もう一つはチケットを渡した多恵への感情です。これらのことを、主人公の「見もしないで」「つっこんだ」=大事に扱っていない行動から読み取ります。問十と対になっていることに気づくと、より明確に書ける問題でした。

問六

登場人物の行動の理由説明問題 
線部直後のおじさんの会話文を読めば答えられます。正解するためには、「今の娘」ではなく、「まだめんこい娘っ子」だった頃ということに言及することが必要です。

問七

線部と同内容を探す問題 ※行数を答える
「おじさん」が言っている行、とまで問いに書かれています。探す範囲は絞られ、しかもその数は少ない。正解してほしい問題です。

問八

主人公の心情説明
線部の直前から自分がしたことを悔いて、自責の念にとらわれていることが読み取れます。そのあとに書かれたのが線部「寒くていい。痛くていい。自分にはそれがちょうどいいのだ。」です。自分を痛めつける罰を自身に科しているのです。しかしこの要素は当然のように書けてほしいものです。勝負は残りの要素。おじさんに対しどのようなひどいことをしたのかをどれだけ正確に書けたかが点数差を生じさせたと思います。

問九(1)

状況説明問題
直前にどんな出来事があったのかを読み取れていれば、難なく書けます。解答欄も一行と短いので、端的に書いて正解をとっておきたい問題です。

問九(2)

登場人物の心情説明問題
線部の直後に書かれた内容をまとめれば答えになる問題でした。要素も多くない割に解答欄は二行と長めなので、字数を気にせずに書けたと思います。

問十

主人公の行動の理由説明問題
麻布に特徴的な、他の問題と関連した問題です。問五と対になった問題です。多恵の思いを理解した主人公が、多恵からもらった招待券の日にちを確かめ(=行く気になっている)、そっと折りたたんでバッグに入れ直しています(=大切なものとして、丁寧に扱っている)。招待券が、多恵の父も前に関係していた太鼓の演奏会のものだということが、文章の前半に書かれていたので、これに絡めた答えが書けたかが、正解の必要条件かもしれません。

問十一

家族の心情説明問題
問十同様、麻布の特徴である他の問題と関連した問題です。こちらは問二(2)での引っ越し先になじめないままのヒナコ、という内容が関連しています。そんなヒナコに対する家族の温かさが答えの内容です。入れる要素自体は難しくありません。
問十二 登場人物の伝えたいこと
今年度のトピックと言える問題です。ことわざの意味をふまえて書く記述問題でした。「郷に入れば郷にしたがえ」の意味は受験生必須です。「馬には乗ってみよ、人には沿うてみよ」はそれほど有名ではないですが、本文で姉が意味を説明してくれているので、やはり求められるのは、文意を、ことわざの意味もふまえて、自分の言葉で表記するということです。主人公の心の変化を感じ取った姉が、主人公を励ますためにどのようなメッセージを送ったのかを書きます。日ごろの努力が必要な問題です。
問十三(1) 主人公の心情変化の説明問題
心情変化の問題なのですが、解答欄はたったの一行。余計な言葉は使わず、端的に書きます。逆接などで繋ぎ、「前向き」系の表現で結べば正解でしょう。正解してほしい問題です。
問十三(2) 主人公の心情変化の理由説明問題
合否を分けた一題で解説します。

合否を分けた一題

今回は問十三(2)を取り上げます。解答欄が五行と今年度の問題で一番長いものでした。また問いの条件を軽んじてしまうと、大きく点数差がついてしまう恐れがある問題です。

問十三(2) 主人公の心情変化の理由説明問題

ヒナコがそのように変化したのはなぜですか。この作品の中にえがかれている、さまざまな「家族」に注目して説明しなさい。

解き方の手順
問十三(1)の答えになった「前向き」になれたきっかけとなる出来事を理由として書く問題ですが、条件が一つあります。「さまざまな『家族』に注目して」です。だから、文章中に出てきたさまざまな家族がどのようなものなのかを、明確におさえなければならないのです。この問題の肝です。

①ヒナコの家族
父が仕事で失敗したため、引っ越しを余儀なくされた。ヒナコ自身は現実を受け入れられず、納得していない。
→確かに「引っ越し」はしたが、家族が離れ離れになることはありませんでした。その幸福にヒナコはまだ気づいていません。

②多恵の家族
父が働きに行ったきり、家に帰ってこない。
→家族がそろっていません。

③ハローおじさんの家族
ハローおじさんは仕事が見つからず、家族の住む家に帰れない。すでに娘は大人になり家を出ているが、幼い娘のまま待っているような気がおじさんにはする。
→家族がそろっていません。

④駅での家族
お母さんと女の子が駅でお父さんの帰りを待っている。
→家族がそろいました。

⑤再びヒナコの家族
駅で姉のミオがヒナコを温かく迎えてくれた。
→家族がそろっていることの幸せにヒナコは気づいたのです。

それぞれの家族を明確におさえたら、答えの流れが見えてきました。
これをまとめるのです。

【解答例】
父の仕事がうまくいかず引っ越すことになり、転校させられたヒナコは納得がいかず、新しい町になじもうとしなかったが、多恵の父やハローおじさんのように、仕事がうまくいかず家族と離れ離れになっても、相手を思いやる姿を見て、家族と一緒に暮らせる幸福や家族のかけがえのなさに改めて気づいたから。

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