問一 A 問二 A 問三 A 問四 B 問五 B 問六 A 問七 A 問八 B 問九 B 問十 B 問十一(1)A (2)C 問十二 B 問十三 C |
A…麻布中合格を目指すなら、確実に得点したい問題。標準的な知識問題なども含む。
B…やや難度が高く、論理的思考力で文脈をとらえることが求められる問題。
C…かなり難度が高く、失点しても致命的ではないが、正解すると得点差がつく問題。
麻布の国語は毎年、物語文一題が出題されます。本年度の小問数も13題とほぼ例年通りでした。今後も問題形式は大きくは変わらないものと思われます。
特筆すべき点は、平成11年度の「フッキ―ウォーカーダンサーズ」、平成22年度「木登り牛」以来、主人公が動物のものが復活していることです。動物が主人公となっていますが、擬人化して描いているので「ヒト」としてとらえて、各場面での「登場人物」の気持ちをつかみましょう。
また、前の問いがヒントになる「連動型」も踏襲されています。問題をていねいに解き進めましょう。
物語文の大まかな内容は以下の通りです。
では、小問ごとに見ていきましょう。
平易な漢字問題です。「省(く)」「横暴」などいずれも小学校で習う漢字が出題されていますので、全問正解を目指しましょう。
傍線部①は「おれ(サンカク)」のセリフです。「おれ」が人間に不信感を抱いているのは、これまで人間に迫害されてきたからです。そのことは前書きに書いてありますので、ここをうまく使ってまとめましょう。
「サンカク」が勇気を振りしぼらなければ山を出ていけない理由とは何でしょうか。傍線部②の後に「心を守る武器ではあった角を失って心細くなった」という記述があります。この内容を中心にまとめればよいでしょう。
傍線部③の中の「やつら」とは「ナラコウエンで飼いならされているシカ」を指します。「ナラコウエンのシカ」は人間に保護され、エサも与えられているため、サンカクたちを敵視する必要がないのです。
傍線部中の「それ」が指す内容と「まぶしすぎた」と感じたときの気持ちを軸にして、解答作成しましょう。「それ」とは「フレンドリー」が他のシカたちと不自由なく楽しそうに暮らしている様子を指しています。その様子を見た「おれ」は、うらやましさや引け目を感じたと考えられます。
設問文に「違い」とあることから、「おれ」と「マル」の性格の違いを対比の形で解答すればよいでしょう。傍線部とその後から、「マル」はナラコウエンのルールを抵抗なく受け入れようとするのに対して、「おれ」は戸惑っていることが読み取れます。
本年度は記号選択問題が2問出題されました。いずれも決して難しくはないので、失点は避けたいところです。
傍線部⑥のときの「おれ」の気持ちを問う問題です。傍線部の後にスペースがあることから、傍線部の気持ちを読み解くカギは前ということになるでしょう。「きっとじきに慣れるさ。たくさんの人間にも、ルールにも」「母さんからはなれた後にも、しばらくは不安で仕方がなかったのに…時間がかかるだけなんだ」という箇所を根拠に解答を導きましょう。
傍線部⑦の後に「おれ」がどのような生活に慣れてきたのかが書かれています。答えのポイントとなるのは「人間を喜ばせる / 人間に気に入られる」生活という点です。これを具体的に肉付けしていけばよいでしょう。
「フレンドリー」は傍線部⑩で、ナラコウエンでの生活について「本当ならありえない」と話し、また、傍線部12では「そういう世界(=森)も見てみたいなぁ。でも無理。」とも言っています。ここから「フレンドリー」は森の生活には憧れを抱きつつも、人間に守られてきた自分は森では生きていけないのだと自覚していることが分かります。
傍線部⑧と傍線部⑨では人間が勝手にシカをえらい動物だとあがめていることについて触れていて、傍線部11では「例外の害獣もいる」と皮肉っています。人間の一方的な都合により、シカが良いものにも悪いものにもなることに「おれ」は納得がいかず、人間のことが信用できないと思っています。
(1)
これはサービス問題です。おそらくほとんどの麻布受験生が正解だったと思います。太鼓の音とともに「角切り」が始まります。
(2)
「おれ」にとって「太鼓の音=角切りの合図」は「人間の身勝手さ」を表すものです。傍線部13の直前で「マル」に「ずっと、いっしょに生きてきたのに…」と言われ、一瞬「おれ」は森へ戻る決心が揺らぎそうになります。だからこそ、「太鼓の音」を意識的に聴こうとしたのですね。
記号選択問題です。問七よりは少し難度が高い問題と言えましょう。「おれ」の影には、はっきりと「長い角」がうつっています。傍線部の箇所で、「おれ」は「長い角」がある姿こそ、本来あるべき野生のシカの姿だと確信しています。
後で「合否を分けた一題」で解説します。
麻布の国語の最後の問いは、本文のテーマに即してまとめる記述が出題されることが多いです。また、それまでの小問の解答もうまく利用して解答作成していくのも、麻布の国語の特徴と言えます。いわゆる「連動型」の問題構成ですね。
では、「合否を分けた一題」として、問十三を解説しましょう。
まず、「『おれ』が『害獣』に帰る決意をしたのはなぜですか」という問いかけに対して、解答の中心となる内容を短く考えてみましょう。
この場合の「害獣(マイナスの存在)」とは、あくまで人間の一方的な見方であって、「おれ」にとっては「本来あるべき姿(プラスの存在)」であることに注意しましょう。
→野生動物(シカ)は本来自由であるべきだ。
続いて、物語文で「本文全体をふまえて」とあれば、「心情の変化」を考えましょう。
→「初めは・・・だった。ところが、・・・をきっかけに、・・・と感じるようになった。」という型で書くと採点者に伝わりやすい答案になります。
「はじめ」「きっかけ」「あと」の3パーツを、以下のように考えます。
【はじめ】
人間に食べ物をあたえられ気楽に過ごしているナラコウエンのシカの様子を見てうらやましく思い、自分もその環境に順応しようとした。
【きっかけ】
「フレンドリー」から「角切り」の話を聞いてからは、本来あるべきシカの姿とはかけ離れているように感じ、人間にこびて生きるのにたえられなくなった。
【あと】
「おれ」は、たとえ人間に追われ危険な目にあったとしても、自分の意思で誇りをもって自由に生きるべきだと感じた。
これらをつなぎ合わせて解答作成しましょう。
[記述解答例]
初めは、人間に食べ物をあたえられ気楽に過ごしているナラコウエンのシカの様子を見てうらやましく思い、自分もその環境に順応しようとした。ところが、「フレンドリー」から「角切り」の話を聞いてからは、本来あるべきシカの姿とはかけ離れているように感じ、人間にこびて生きるのにたえられなくなった。そして、「おれ」は、たとえ人間に追われ危険な目にあったとしても、自分の意思で誇りをもって自由に生きるべきだと感じた。