1 | (1) A (2) A (3) A (4) A (5) B (6) A(7) A (8) A (9) B |
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2 | (1) A (2) A (3) B (4) A (5) A (6) A(7) B (8) B (9) A |
3 | (1) C (2) A (3) A (4) A (5) A (6) A(7) A (8) B (9) B (10) C |
4 | (1) A (2) A (3) A (4) A (5) A (6) B(7) B (8) C |
A…浅野合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
2020年度の浅野は、例年通り、基本的知識を問う問題と、さらに少し突っ込んだ知識をきく問題、情報を整理して考えたうえで、数的処理力と計算力が求められる問題が出されています。
2020年度の得点率は、合格者平均68.4%(昨年度67.4%)、受験者平均59.7%(昨年度57.9%)と、昨年度同様、例年通りです。
題材の取り上げ方に工夫があり、知識のネットワークがどれだけ構築できているか、また、解法の技術がしっかり身についているかをはかるような問題が中心です。計算問題のレベルも例年通りで、全体的には、難易度が上げ止まっている印象です。
地学分野の問題は、地震発生とプレートの移動についての問題。
生物分野の問題は、生物の多様性についての問題。
化学分野の問題は、物の燃え方に関する問題。
物理分野の問題は、電熱線と発熱量についての問題。
構成としては、前半(大問1と2)は知識問題が中心、後半(大問3と4)は論理的思考力や数的処理能力を問う問題が中心になっています。前半の知識をしっかり処理したうえで、後半をどこまで戦えるかで合否を分けることになります。
問題構成は、4分野から大問4題、小問45問。
解答形式は、記号選択が23問、数字が18問、言語が4問。
選択肢は、詳しい知識を問うものがいくつかあり、難易度が高くなっています。
数字は、レベルの高い計算問題を含みつつ、昨年度より6問増え、時間的に厳しくなっています。
言語は、昨年より1問増えていますが、基本の知識を問うものでした。
(地学)地震発生とプレートの移動についての問題です。
プレートの移動と関連づけた地震の問題は、本年度多くの学校で出題されています。
「アセノスフェア」などの聞きなれない用語が使われていたり、プレートの配置など詳しい知識をきかれたりしていますが、すべてリード文に説明があります。見落とさないようにしましょう。
揺れの名前と、地震波の名前はちがいます。P波がとどくと初期微動が起こり、S波がとどくと主要動が起きます。基本の知識ですから、しっかり得点したいところです。
P波やS波の進む速さが一定であるものと考えて計算します。
観測地点アとウの、震源距離の差が、126.0―25.2=100.8(km)で、初期微動発生時刻の差が、24-12=12(秒)なので、P波の伝わる速さは、1秒あたり8.4km(100.8÷12)です。観測地点イの初期微動発生時刻は、観測地点アより3秒遅いので、震源距離の差は、8.4×3=25.2(km)です。したがって、C=25.2+25.2=50.4(km)となります。
同様に、観測地点アとイの主要動発生時刻の差が23-16=7(秒)なので、S波の伝わる速さは、1秒あたり3.6km(25.2÷7)です。したがって、観測地点ウの主要動発生時刻は、観測地点イより21秒((126.0―50.4)÷3.6)おそい、9時10分44秒(23+21)です。
P波は、25.2kmを、25.2÷8.4=3(秒)で伝わるので、地震の発生時刻は、9時10分9秒(12-3)です。
S波の速さを使っても出すことができます。
緊急地震速報が発表されたのは、9時10分19秒(12+7)です。震源距離が100.8kmの地点にS波が伝わるまでにかかる時間は、100.8÷3.6=28(秒)なので、緊急地震速報を受け取ってから、9時10分9秒+28秒-9時10分19秒=18(秒後)であったとわかります。
日本は、大陸プレートであるユーラシアプレートと北アメリカプレート、海洋プレートである太平洋プレートとフィリピン海プレートの4つのプレートの上にあります。リード文から、伊豆半島の付け根は、フィリピン海プレートと北アメリカプレートの境界にあること、東北地方太平洋沖地震の震源は太平洋プレートと北アメリカプレートとの境界にあったことが読み取れます。これを手掛かりにすれば、知識がなくても解答できます。
図5から、マグニチュードが2ちがうと、地震のエネルギーが1000倍になることが分かります。
9.0は、6.7と2.3ちがうので、7.0に対して9.3が何倍になるかという問題に、置き換えて考えることができます。
G の1行下のリード文に、「水面に水滴を落としたときの波紋の広がり方と同じ」とあります。これを手掛かりに、ウの「同心円状に」を選びます。
図4は、太平洋プレートが大陸プレートの下にもぐりこんでいる様子を示しています。震源の★印は、太平洋プレート内部にかかれています。
図4から、震源の真上の日本海に伝わる地震波は、アセノスフェアを通ることがわかります。一方、震源から離れた太平洋側には、太平洋プレートを伝って、地震波が届きます。図3で、太平洋側の方が、震度が大きいことから、固いプレートの方が、地震波をよく伝えることがわかります。
ここでは、図3と図4を見比べて、判断します。
(生物)生物の多様性についての問題です。
植物についての基本の知識から、やや詳しい知識、さらにはツルグレン装置を使った観察まで、幅広く取り上げられています。あやふやな知識では大量失点につながります。普段から、こつこつと知識を積み上げてきた生徒に有利な出題といえます。
種子植物は、被子植物と裸子植物に分類されます。裸子植物は、花に子房がなく、胚珠がむき出しになっている植物です。これには、イチョウとソテツがあてはまります。
風によって花粉を飛ばす花を風媒花といいます。風媒花にはふつう、花弁がない目立たない花を咲かせます。ここまでは、基本の知識です。
どちらもマツですから、針葉樹です。針葉樹は常緑樹が多く、アカマツもその一つです。落葉性の針葉樹もありますが、ほぼカラマツだけといってもよいでしょう。やや詳しい知識の問題です。
マツのめ花のりん片には胚珠が2つ、お花のりん片には花粉のう(やく)が2つあります。図6のりん片はお花のもので、Bの花粉のうがさけると、花粉が風に飛ばされます。
根の先端部分につくりについての問題です。Xは根毛で、根の表皮細胞が変形したものです。
Yは根冠といって、成長点を守っています。
標本にするときに用いる液体は、腐敗しないこと、生物のからだの成分と化学反応を起こしにくいこと、時間がたっても変化したり、溶けているものが再結晶して出てきたりしないことなどの条件が必要です。
ダニはクモに近い節足動物です。クモ類は、からだが頭胸部と腹部の2つに分かれていて、頭胸部にあしが8本(4対)ありますが、ダニのからだは胴部だけで、これにあご(口器)とあしがついています。あしは、ふつう8本です。
問題文にある言葉がヒントになります。風が強い→背丈が低い、夏場は乾燥→根を深くはる、冬場は雪が積もる→地上部が活動できない時期を根で生き延びる。といった発想ができることが、とても重要になります。
森の変遷についてしっかり学習していた生徒は対応できたのではないでしょうか。大規模な噴火が起きると、非常に高温になるため、植物の種子さえも焼け焦げて死に絶えてしまいます。また、溶岩や崩壊した岩石には土がなく、植物が根を下ろすこともできません。したがって、まず、根のないコケ類・地衣類が育ち、その死骸などから土ができてから、一年草類→多年草類の順に育つようになります。やがて十分な土ができると、日当たりのよいところで有利な陽樹がまず育ち、徐々に陰樹に入れ替わって極相林に至ります。
(物理)物の燃え方に関する問題です。
知っていることでも、表現を変えてあるなどのひっかけが仕組まれていて、曖昧な知識では得点しにくくなっています。そのうえ、小学校で学習しない内容も含んでいるため、難易度が高くなっています。
「原子」「分子」「化合物」「質量保存の法則」は、中学で学ぶ考え方です。また、「アボガドロの法則」「定比例の法則」「気体反応の法則」は、高校の化学基礎の内容です。
また、(5)の選択肢は、使われている用語に馴染みがないものもあり、内容を読み取りにくいものでした。この選択肢は、(6)、(8)でも使われていて、得点しにくくなっています。
①~③で共通なのは、炎をともなって燃えるとき、燃やそうとしたものは気体になっていることです。ろうそくも木材も、室温では固体なので、どのようにして気体となるかが判断の基準となります。
・ろうそくでは、ろうそくそのものが熱によって気体になり、その気体が燃えます。実際には、気体のろうがさらに、水素や炭素などの気体に熱分解されるですが、ここでは、③と区別して、②を選びます。
・木材を加熱すると、100℃くらいまでは、おもに水分が水蒸気として出ていきます。このあと、いろいろな種類の可燃性のガスと不燃性のガスが発生し、うち可燃性のガス(一酸化炭素、水素、メタン、エタンなど)に引火すると、炎を出して燃えます。したがって、③を選びます。このとき、炭素は固体のまま残り、炎を出さずに赤くなって燃えます。
ろうそくが、②か③か、で迷った生徒もいたと考えられます。木材との明らかなちがいに着目することがポイントです。
炎をともなわないで燃えるのは、燃えるものが固体だからです。
当然、イを選ぶのですが、他の選択肢では「燃える」とあるところを、イだけ、「酸素と結びつく化学変化を起こす」と言い換えています。かく乱されないように、注意が必要です。
ガスバーナーの操作は、よく出される知識です。浅野受験生なら解答できるはずです。選択肢の表記に紛らわしいところがありますが、しっかり処理しなければなりませんでした。
燃焼しているときにすすが発生するのは、熱分解によってできた炭素が、不完全燃焼して残るからです。
当然、エを選ぶのですが、たとえば、オの表現には引っ掛かりそうになります。「すすが発生しにくい」ときは、完全燃焼をしているので、「酸素が不足して」いるわけではありません。
模式図からもわかるように、酸化マグネシウムは、マグネシウムの原子と酸素の原子が結び付いてできた「化合物」です。したがって、反応前のマグネシウムと酸素の重さの和は、できた酸化マグネシウムの重さと等しくなります。選択肢に、「アボガドロ」「圧力」「温度」「質量」「定比例」といった、小学生にとっては関連性がつかめにくいことばが散見されますが、惑わされないよう強い気持ちを保つことが大切です。
マグネシウムの重さが2倍になると、酸化マグネシウムの重さも2倍になっていることから、結びついた酸素の重さも2倍になることがわかります。つまり反応する物質の重さを比で表すことができます。
マグネシウム:酸素:酸化マグネシウム=6:4:10=3:2:5
したがって、酸化マグネシウムを240gつくるとき必要なマグネシウムは、240×3/5=144(g)となります。
反応する重さの比は、マグネシウム:酸素=3:2
で、このときの原子の数の比が1:1ですから、原子1個の重さの比は、
(3÷1):(2÷1)=3:2
となります。
→合否を分けた一題参照。
たとえば、すべて二酸化炭素になるとき、炭素6gと反応する酸素は、22-6=16(g)なので、反応する重さの比は、炭素:酸素=6:16 です。このとき、原子の数の比は、炭素:酸素=2:4 なので、原子1個の重さの比は、炭素:酸素=(6÷2):(16÷4)=3:4 となります。
実験2の図の原子の数は、あくまでも比ですから、注意しなければなりません。
つるかめ算で解きます。
得られた気体の体積の合計が60Lであることから、燃焼した炭素の重さは、6×60/12=30(g)です。これがすべて一酸化炭素になったとすると、発生した一酸化炭素の重さは、30×14/6=70(g)になるはずですが、実際は94gなので、二酸化炭素になった炭素は、(94―70)÷(22/6―14/6)=18(g)。したがって、発生した二酸化炭素は、18×22/6=66(g)です。
面積図をつかっても解くことができます。
(物理)電熱線と発熱量についての問題。
実験からわかることだけでなく、一般的な電熱線の発熱に関する知識がないと、解けきれない箇所があり、電流を流す時間と水の量も考えに入れながらの処理の煩雑さとあいまって、難易度が高くなっています。水の温度変化は、図11のグラフを基準とします。
表2から、電熱線の長さと電流は、反比例の関係とわかります。反比例の関係のとき、積が一定であることを利用すると、すばやく処理できます。5×12÷40=1.5(A)
図11から、電圧が一定のとき、流れる電流が3倍になると、発生した熱量も3倍になることがわかります。いま、図12の電熱線には1.5Aの電流が流れるので、発生した熱量は、図10の回路の1.5/6.0=1/4(倍)です。このことから、4分間200gの水の上昇温度は、20×1/4×100/200=2.5(℃)なので、水の温度は10+2.5=12.5(℃)になります。
水の量が2倍の200gになっていることに注意が必要です。
図13の10cmと20cm電熱線には、どちらもおなじ2.0Aの電流が流れます。流れる電流が同じとき、発熱量は抵抗に比例するので、電熱線が出す熱の量の比は、10cm:20cm=1:2 です。
さらに、水の量が1:2になっていることから、水の温度変化の比は、100g:200g=(1÷1):(2÷2)=1:1 です。
上記の下線部の知識が必要でした。
水の量が2:3になっていることから、水の温度変化の比は、200g:300g=(1÷2):(2÷3)=3:4 です。これは、(2)の考え方を利用して解答します。
15cmの電熱線:流れる電流が図9の回路の2倍なので、上昇温度も2倍になります。したがって、15分後100gの水の上昇温度は、5×15/3×2=50(℃)で、10+50=60(℃)になります。
25cmの電熱線:流れる電流が図9の回路の1.2倍なので、上昇温度も1.2倍になります。したがって、15分後100gの水の上昇温度は、5×15/3×1.2=30(℃)で、10+30=40(℃)になります。ここまでは丁寧に処理して、得点したいところです。
発熱量は、電流の大きさに比例するので、電熱線の長さ(抵抗)には反比例するはずです。
直列つなぎの場合とのちがいを確認しておきたいところです。
10cmの電熱線には6.0A、20cmの電熱線には3.0A流れます。合計で9.0A(6.0+3.0)流れるので、表2の関係から、(5×12.0)÷9=60÷9=20/3≒6.7(cm)の長さの電熱線に置き換えることができます。
9Aの電流が流れる電熱線に置き換えて考えます。これは、図10の電熱線に流れる電流の3/2倍なので、300g10分後の上昇温度は、5×10×3/2×1/3=25(℃)で、水の温度は35℃(10+25)になります。
10cmの電熱線に流れる電流が1/5倍になるので、回路全体に流れる電流は、6.0×1/5+3.0=4.2(A)です。したがって、300g8分の上昇温度は、5×8×4.2/6.0×1/3≒9.3(℃)で、水の温度は約19.3℃(10+9.3)になります。
全体の7割の得点を目指すとき、大問1は標準的な問題であったものの、大問2はやや得点しにくい知識問題があり、ここで失点すると、後半で挽回しなければなりません。大問3、4ともに、大問中の後半3問に難易度の高い問題が配置されていて、ここでどれだけ戦えたかによって、合否が分かれたと考えられます。特に大問3の(8)は、発生した気体の体積の比など、未知の考え方を使って解くことから、リード文をどのくらい理解できたかが重要であると考え、合否を分けた一題に選びました。
実験2の図を手掛かりにします。
図から、炭素の原子2個(6g)と、酸素の原子4個が結びついて、二酸化炭素の分子2個(22g、12L)できることがわかります。
同じように、炭素の原子2個(6g)と、酸素の原子2個が結びつくと、一酸化炭素の分子2個(14g、12L)できます。
どちらも、できた気体の体積は同じですが、結びつく酸素の量が違うため、できた気体の分子の重さは違います。
ここでは、同じ重さの炭素が燃えてできた二酸化炭素と一酸化炭素は、得られた気体の分子の数と、気体の体積が同じであることに着目します。気体の体積は、分子の数に比例すると考えれば、「アボガドロの法則」があてはまることになります。
実は、化学基礎で学ぶことですが、分子6.02×(10を23回かけた数)個分の気体の体積は、1気圧0℃で22.4Lと決まっていることがわかっています。
炭素6gを燃やしたとき、二酸化炭素が得られたとしても、一酸化炭素が得られたとしても、発生する気体は12Lです。つまり、どちらの気体であっても、発生する分子の数は同じということになります。したがって、炭素240gを燃やすと、二酸化炭素か一酸化炭素かにかかわらず、12×240/6=480(L)の気体が発生することになります。